私が愛した男《ひと》 11
「その石、オレでも使えるのか?」
香川さんの質問に傭兵は軽く笑いました。
「ま、ムリだろうな。オレたちでも使えるのは数百万人に1人だ。記念品だと思ってとっておいてくれ」
香川さんはその小石を大事そうに両掌で受け取りました。そのとき上空から異音が。香川さんがはっとして見上げると、小さな宇宙船らしき物体が飛んでました。どうやら着陸用の小型宇宙船のようです。傭兵はそれを見て、
「ふ、今更援軍かよ」
傭兵は20cmくらいの細い筒を取り出しました。次の瞬間その一方の端がまばゆく点灯。真っ昼間でも遠くから認識できるほどの明るさです。傭兵さんは香川さんを見て、
「悪いが、これ、振ってくれないか?」
「ああ」
香川さんはその筒を受け取りました。そして上空に向かって大きく振りました。すると着陸用宇宙船は2人の側に降りてきました。
現在の香川隊長です。呪い石ですが、今は隊長の右掌の上にあります。隊長の発言が続きます。
「無事に生還したオレはそのあと、テレストリアルガードの隊員募集に応じた。が、最初に隊長になったやつがどうも鼻持ちならないやつだった。そこでオレはこの呪い石を試してみたんだ。そしたらそいつは発狂して死んじまった。オレでも呪い石が使えたんだ。
その後何度か使ってみたが、なんの問題もなく人を呪い殺すことができた。でも、ついに赤い女の子が出てきちまった。まだ50人も殺してないというのに・・・
使う人によって許容範囲が違うのかもしれないな。または石そのものに許容範囲があるのか・・・」
ここで海老名隊員が質問。
「石そのものに許容範囲?」
「ああ、例えばこの石には200人まで呪殺できるキャパシティーがある。初代持ち主が150人以上殺した。だからオレが50人弱殺したところで赤い女の子が出てきた」
今度は女神隊員の発言。
「だとすると、もうその呪い石は使えませんね」
「ああ・・・ でも、まだ使えるような気がするんだ」
隊長は海老名隊員に向かって呪い石を持った右手を差し出しました。
「この先地球で何が起きるのか、お前、知ってんだろ。そんときこいつが必要になるはず。そんとき使うのは、ふ、お前だ」
海老名隊員はきょとんとした顔でその小石を受け取りました。
「私?」
ここで女神隊員が口を挟みました。
「隊長、海老名さんはまだ幼少ですよ」
「今テレストリアルガードのメンバーでもっとも霊的能力を持ってんのはえびちゃんだろ」
隊長は海老名隊員の顔を見て、
「こいつはお前が持ってんのが一番いいだろ。お前だってテレストリアルガードの隊員だろ。覚悟はできてんだろ?」
海老名隊員はうなずきました。
「わかりました」
「気分が最悪なときに長い話を聞かせて悪かったな。さあ、もうお休み」
「はい」
海老名隊員は引き分けの自動ドアを開け、出て行きました。隊長は今度は女神隊員を見て、
「オレもなんかひざがきつくなってきたな。ちょっと休んでくるよ」
「わかりました」
隊長は杖を突きながら引き分けの自動ドアに向かいました。開く自動ドア。隊長は1歩廊下に出たところで横目で女神隊員を見ました。
「女神隊員」
「はい?」
「少しはデリカシーに気を付けてくれよ」
「あはは、わかりました」
自動ドアが閉まりました。
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