私が愛した男《ひと》 6

 海老名隊員の更なる質問です。

「ところで、2年7ケ月後にやってくる排卵のときは、どうする気なんですか?」

「う~ん、隊長に跨っちゃおっかな」

 女神隊員はお気軽に発言しました。しかし、この発言は海老名隊員を強く刺激しました。そうです。海老名隊員は香川隊長が好きで好きでたまらないのです。今すぐ自分の処女を捧げたいと思ってるくらい大好きなのです。そんな大事な人にお気軽に「跨る」なんて・・・

 海老名隊員の顔色は急に険しくなりました。女神隊員はすぐにそれに気づきました。

「ありゃ~ 怒らせちゃった?・・・」

 女神隊員は慌てて謝罪。

「ご、ごめんなさい」

 海老名隊員からは何も返事がありません。完全に不機嫌になってしまったようです。女神隊員は、

「そ、それじゃ、また」

 と言って立ち上がりました。そして自動ドアを開け、逃げるように部屋を出て行きました。


 サブオペレーションルームの引き分けの自動ドアが開き、女神隊員が帰ってきました。で、いきなり謝罪しました。

「すみません・・・」

 隊長はまだアニメを見てましたが、その女神隊員の謝罪に反応しました。

「ん、どうした?」

「海老名さんを怒らせてしまいました」

「はぁ?・・・ あんた、ほんとデリカシーがないなぁ。さっきの電話の受け応えだって、最低だったぞ」

 女神隊員は「今更かよ」と思いました。

「しょうがねぇなあ・・・」

 というと、隊長は立ち上がりました。そしてロフストランドクラッチを突きながら自動ドアに向かいました。女神隊員はその後ろ姿を見て、

「どちらへ?」

 隊長は女神隊員を一べつして、

「えびちゃんのとこ」


 海老名隊員の私室です。海老名隊員は再びベッドに横になってます。チャイムが鳴りました。自動ドアに向かって応える海老名隊員。

「はい」

 ドアの向こうから、

「香川だ」

 その声を聞いて海老名隊員の顔はぱっと明るくなりました。

「あ、隊長!」

 海老名隊員は自動ドアに向かって小さなリモコンを押しました。すると自動ドアが開き、隊長が杖を突きながら入ってきました。海老名隊員はそんな隊長を見て、顔をぽっと赤らめました。隊長は海老名隊員に話しかけました。隊長はそんな海老名隊員に話しかけました。

「どうした? かなり苦しそうじゃないか」

「あはは、こんなにひどい生理痛は初めて・・・」

「実はな、今日サブオペレーションルームのモニターにカラオケの回線を引いたんだ」

「ええ?」

「また尾崎○香の歌を歌おうか?」

「うん!」

 というと、海老名隊員はがばっと飛び起きました。で、サブオペレーションルームでドッタンバッタン大騒ぎ。女神隊員は苦笑するしかありませんでした。

 しかし、地球を守るテレストリアルガード基地サブオペレーションルームにカラオケの回線なんて引いてもいいものなんでしょうか? でも、不機嫌だった海老名隊員の顔はいつもの笑顔に回復したようです。

 このあとも隊長と海老名隊員のアニソンのデュエットは続きましたが、やはり海老名隊員の生理痛はかなりひどいようで、歌唱は3曲で終わってしまいました。

 海老名隊員は申し訳なさそうに、

「すみません」

 隊長は優しい顔をして、

「構わないさ」

「それじゃ、私はこれで」

 海老名隊員はサブオペレーションルームを出て行こうと自動ドアに向かいました。が、隊長の、

「ちょっと待ってくれないか」

 の一言で、はっとして歩を止めました。隊長は今度は女神隊員を見ました。

「あんたもオレの話を聞いてくれないか」

「あ、はい・・・」

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