私が愛した男《ひと》 7

 女神隊員と海老名隊員は、隊長と相対して卵型のテーブルに座りました。

「オレは明日朝病院に行く。ひざの具合を見てもらうためだ。となると、明日この基地にいるのは女神隊員だけになるな」

 隊長は海老名隊員を見て、

「明日お前は?」

「あは、ちょっと腰がきついです。学校はたぶん休むと思います」

「そっか。でもなあ・・・」

 隊長は今度は女神隊員を見て、

「実質あんた1人じゃ、心許(こころもと)ないな」

「す、すみません」

「う~ん・・・」

 隊長は少し考えると、ぽつり。

「ま、しょうがないか。今回はあんたに任せることにするか。

 このさいだ、あの話をしておくか・・・」

 隊長は海老名隊員を見て、

「お前、まだあの石、持ってるか?」

「もちろん」

 海老名隊員はどこからか巾着のような布製の小袋を取り出しました。その小袋を片手で逆さまにすると、小さな石が落ちてきました。海老名隊員はもう片方の手でその小石をキャッチ。それを隊長に見せました。

「はい」

 そうです。この小石は宇宙難民の慰霊碑を破壊しようとしたあのよからぬ者たちを殺し、J1(テレストリアルガード宇宙基地)のよからぬ隊員を殺したあの呪いの石です。それ以外にもたくさんの人がこの小石で呪い殺されたようです。

 隊長。

「その石がなんなのか、説明してやろう」

 海老名隊員も女神隊員も緊張しました。実は海老名隊員も女神隊員も折に触れあの石がなんなのか隊長に質問してましたが、一度も明確な回答はなかったのです。やっと説明してもらえるようです。

「あれは5年前のことだ」

 これは隊長の記憶です。隊長はその時代は警官でした。今パトカーの助手席に座ってます。運転してる人は別の警官です。2人ともヘルメットをしています。今パトカーは高速道路を走ってます。ここは郊外のようで、高速道路の両側は雑木林が広がってます。

「あのときオレは警官だった。自動車警ら隊てところにいたんだ」


 ここは当時のパトカーの中。無線が鳴りっぱなしです。

「ユミル星人のものと思われる飛翔体は現在地球に向け進行中。自衛隊及び各国の軍隊が飛翔体を迎撃しているが、撃ち漏らす可能性あり。各警ら隊は市民を避難所に誘導してください! 繰り返します・・・」

 運転してる警官の発言。

「香川さん、ついにやつら、きましたねぇ」

 それに香川さんが応えました。

「ああ・・・ しかし、こう高速を走ってちゃあ、オレたちゃ、何もできやしないな・・・」

「まあ、いくらなんでもこの地方都市にミサイルは墜ちてこないんじゃないですか?」

「ふ、地球上には1発もミサイルは墜ちてこないよ。なんのために血税を湯水のように使って大量の迎撃ミサイルを配備したと思ってんだ?」

「あは、そうですよね」

 ここで現在の香川隊長。

「その考えは甘かったな・・・」


 再び隊長の記憶の中。相変わらずパトカーは高速道路を快調に走ってます。と、突然パトカーの右後ろで何かが眩く光りました。その光はパトカーの中を眩く照らしました。びっくりする2人の警官。

「な、なんだ?」

 次の瞬間パトカーは激しく吹き飛ばされ、木の葉のように宙を舞いました。

「うわーっ!」

 2人の警官はただただ悲鳴をあげるしかありませんでした。ここで現在の香川隊長が発言しました。

「それはユミル星人の水素核融合弾だった」

 女神隊員の質問。

「地方都市なのに水素核融合弾が落ちてきたんですか?」

「ああ」

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