私が愛した男《ひと》 5

 今まで語られることがなかった女神隊員の秘密を知ってしまい、隊長はアニメ視聴どころじゃなくなってしまいました。

 女神隊員はその雰囲気を察したようで、思わず立ち上がりました。

「すみません」

 女神隊員は自動ドアを開け、出て行きました。


 こんな話をした直後です。廊下に出た女神隊員は、思わず自分の子ども2人を思い出してしまいました。けど、一度は吹っ切った思い。しんみりとはしましたが、泣きはしませんでした。さっきはアニメで号泣したくせに、意外とドライなんですね。

 女神隊員は自分の部屋に行くことにしました。が、その瞬間、さっきの海老名隊員の青ざめた顔を思いだしました。

「そうだ。お見舞いに行こう、海老名さんのところに!」

 女神隊員は海老名隊員の私室に向かいました。


 ここは海老名隊員の私室。海老名隊員が制服のブレザーを脱いだまま、ベッドに横たわってました。かなり息苦しいようです。

 ここでピンポーン! チャイムが鳴りました。海老名隊員は横たわったまま、

「はい」

 と応えました。そして小さなリモコンをドアに向けました。すると自動ドアが開きました。そこには女神隊員が立ってました。それを見て海老名隊員は、微笑みとも苦笑ともとれる笑みを浮かべました。

「あは、女神さん」

 女神隊員が室内に入ってきました。

「海老名さん、大丈夫ですか?」

 海老名隊員は、

「あはは、よいっしょ!」

 と言って、起き上がりました。そして女神隊員を見て、先ほどの返事。

「大丈夫ですよ。でも、こんなにひどくなったの初めて。私、どーしちゃったんだろ? なんか悪い病気になっちゃったのかなあ?・・・」

「病院に行きます?」

「いいえ。もう少し様子を見てからにします」

 女神隊員はベッドの傍らのイスに座りました。

「この星の女性は、どれくらいの間隔で生理があるんですか?」

「25日くらいかなあ。でも、今回はおかしいんですよ。前の生理から20日しか経ってない・・・」

「私の星ではね、3年に1回しか来ないんだ、生理が」

 海老名隊員はこの発言には興味を持ったようです。

「へ~」

「でも、生理痛なんか来る前に、ほとんどの人が妊娠しちゃうけどね」

「えぇ? てことは、女神さんは子どもがいるんですか?」

「うん、いたわよ。2人」

「へ~ どんな顔してるんだろ。見てみたいな」

「うん。私もできることなら母星に帰って、また逢ってみたいなぁ」

 女神隊員はここで1つウソをつきました。隊長との会話では2人の子どもは死んだことになってるのに、海老名隊員との会話ではまだ生きてることになってます。正解は前者。また気まずくなるといけないと思って、今回はウソをつくことにしたのです。

 海老名隊員の質問。

「最後の生理はいつなんですか?」

「う~ん、5か月前かな?」

「え、それじゃ、宇宙船ふねの中?」

「うん。あんときは大変だったなあ。もうしたくなっちゃってしたくなっちゃって。冷凍睡眠してる男を1人叩き起こして、馬乗りになろうかと本気で考えちゃった」

 おいおい、女神隊員、あなたが今話してる相手はJCですよ。女神隊員の発言は続きます。

「でも、なんとか我慢した。そうしたら今度はひどい生理痛がきちゃってね。私たちの排卵は3年に1回しかないから、生理痛も大変なんだ」

「へ~ 女神さんも大変なんだ」

「毎月毎月生理痛が来るこの星の人よりうーんとマシかも」

 2人は同時に笑いました。

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