第6章 私が愛した男《ひと》

私が愛した男《ひと》 1

 ここは漆黒の宇宙。1隻の宇宙船が飛んでます。UFO型の宇宙船です。宇宙船の向かう先には碧い地球が見えます。宇宙船の外装は薄い光の膜に覆われてます。どうやら認識ステルス機能をオンにしてるようです。

 ここはその船内、コックピット。4章に出てきた未確認飛行物体と同じような円卓型の操縦席。4章では4人で操縦してましたが、今回はさらに1~2人ほど多いようです。

 全員怪しげなマスクを被っていて顔が見えませんが、どうやら船長格は小柄な女性のようです。ま、地球人から見たら全員小柄なのですが。

 その女性に別の男性乗員が話しかけました。

「予測した通り、四次元レーダーは南極までカバーされてません!」

「ふふ、じゃ南極からあの星に入るよ!」


 宇宙空間。宇宙船が南極に向かいます。そのまま大気圏内に突入。さらに南極大陸の縁に降りてきて、海面近くになったところで機体を水平に。海面ギリギリを飛行します。

 コックピットの女性。

「そうそう、そのまま海面ギリギリを飛んで。ふふ、この高さなら四次元レーダーに探知されないはず!

 なんとしてもあの人の恨みを晴らす! テレストリアルガードを根絶ねだやしにしてやるわ! あはははは!」


 大怪獣と決戦した日から数日後、まだ橋本隊員も倉見隊員も上溝隊員も寒川隊員も入院したまま、病院から帰ってきてません。今サブオペレーションルームにいるテレストリアルガードの隊員は香川隊長と女神隊員だけ。

 香川隊長はいつものように深夜に録画しておいたアニメを見てました。心臓の病気で入院したとき溜まったアニメはすでに消化済みですが、今回の骨折の入院でまたアニメが溜まってしまったようです。

 隊長の手元を見るとロフストランドクラッチがあります。ひざの骨折の完治はまだまだなようです。

 女神隊員はオペレーションルームのコンソールの前に座ってます。上溝隊員がいつもやってるようにファッション雑誌を読んでるのかと思いきや、なんとバイクの教則本を読んでました。女神隊員は先日バイクに乗ったことでバイクに興味を持ってしまったようです。

 しかし、女神隊員は宇宙人。はたして宇宙人がバイクの免許を取れるのでしょうか?

 なお、女神隊員は今、バイクの教則本を読むために自動翻訳機がついているフルフェイスのヘルメットをかぶってます。

 ちなみに、オペレーションルームとサブオペレーションルームの間の自動ドアは常時開けっ放しになってるので、実質1つの部屋です。

 今コンソールについている固定電話が鳴り、女神隊員がその受話器を取りました。

「はい、もしもし、テレストリアルガードです。事件ですか? 事故ですか?」

 て、そのセリフ、なんかおかしいような。どこで覚えたんでしょうか? それに対する電話からの声。20代男性の声です。

「あ~ もしもし、テレストリアルガードさん?」

「はい」

「あ、あの~ 隣の人が怪しいんです」

「はい?」

「今私、アパートに住んでるんですけど、隣りの部屋に住んでる人がどうも怪しいんですよ。1ケ月前に引っ越してきたんだけど、1度も口を聞いたことがないんですよ。もしかしたら宇宙人かも?」

「はぁ、それだけの理由で宇宙人と決めつけちゃうんですか?」

「ほら、5年前攻めてきた宇宙人の8割はコイダ星人だったんですよね。コイダ星人は外見上は地球人と瓜二つだけど、声帯は未発達だから口がきけないて話じゃないですか。あれは絶対宇宙人、コイダ星人ですよ!」

「いや~ それだけの理由じゃ・・・」

「何度も何度も壁に耳をつけて隣の人の話し声を聞いたんですよ。けど、一度も声を発してないんですよ!」

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