私が愛した男《ひと》 2

 女神隊員は呆れたという顔を見せました。

「あの~ですねぇ、宇宙人と通報してくれるのはとてもありがたいんですが・・・ それだけの証拠じゃ、宇宙人とは・・・」

「ええ~? あなた、隣りの部屋に宇宙人が棲んでてもいいんですか?」

「いいじゃないですか。実は私も宇宙人なんですよ」

 その不用意な女神隊員の言葉に、電話の向こうの声色が変わりました。

「え、ええ~っ? あ、あなた、もしかしてヘルメットレディさん?」

 この瞬間女神隊員はしまったと思いました。しかし、時すでに遅し。

「いや~ うれしいなあ。ヘルメットレディさんとお話ができるなんて~!」

 おいおい、さっきまで「隣りに宇宙人が棲んでてもいいんですか?」と訴えていた人が言うセリフですか、これは?

 男性の話は続きます。

「あの~ 今度うちのイベントに出てくれませんか?」

「ええ?・・・」

「いや~ 実は私、イベントをやってる会社に勤めてるんですよ。今度うちのイベントに出て欲しいんですが~」

 女神隊員は黙ってしまいました。男性の話はさらに続きます。

「あ、ギャラは出しますよ。たくさん出しますから! だからうちのイベントに・・・」

 女神隊員はここで電話を切ってしまいました。と、女神隊員は隊長をそーっと見ました。隊長は何事もなかったようにアニメを見てます。女神隊員は今の電話の受け応えが悪いと怒られるんじゃないかと心配しましたが、特に注文はないようです。女神隊員はふーっと息を抜きました。

 ちなみに、テレストリアルガードには交換台があります。外部からの電話はすべてここで受け、重要と思われる電話のみ、オペレーションルームにつなげるシステムになってます。さきほどの男性はこのあと何度も何度もテレストリアルガードに電話をかけましたが、2度と女神隊員につながることはありませんでした。


 隊長が見てるアニメですが、たった今1つのアニメが終わり、次のアニメが始まりました。魔女の女王クィーンとニートの勇者ヒーローの最終回。これは女神隊員もぜひ見たいアニメ。女神隊員はそーっと隊長の後ろにパイプイスを持って行き座りました。隊長はその行為にまったく興味がないようです。なんともぐうたらな組織です。


 アニメが始まりました。幼き女王は致命傷を負い、反逆した国民たちに方位されてしまいました。絶対絶命。が、ここで爆死したはずの準一が現れ、反逆者たちは青白い炎に包まれました。

 準一を見て喜ぶ幼き姫。けど、準一は幽霊のような存在でした。準一はあらかじよみがえりの魔法円を身体に刻んでいて、爆死すると同時にその魔法円が効果を発揮、魂だけこの世に残りました。でも、幼き女王を治癒するために使った魔法のせいで準一の存在する力がなくなってしまい、準一はこの世から完全消滅しました。

 幼き女王は図書館に行き、禁忌の魔法書を読みました。それは自らの肉体を爆弾に換えるというもの。魔法の力が強ければ強いほど爆発の威力は増すと書いてありました。けど、とんでもない爆発になる代わりに、自分の身体も木端微塵に吹き飛んでしまうという悪魔の魔法でした。しかし、すべてを失くしてしまった幼き女王は決意します。

 箒に跨り、空中要塞に向かう幼き女王。が、その前に空飛ぶマシンに乗った敵魔女が立ちはだかります。敵魔女は遠い未来で入手してきたビームライフルを発射。幼き女王はそれを防御魔法で防ぎますが、ビームライフルの威力はあまりにも強く、光弾は幼き女王の防御魔法を突破。そのまま幼き女王の眉間から入り、後頭部を貫通。幼き女王の脳みそが空に散ります。

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