宇宙人受難之碑 4
この石碑と相対するように、たくさんの人がパイプいすに座ってます。その中にはテレストリアルガードの隊員服を着た香川隊長・橋本隊員・倉見隊員・寒川隊員の姿もあります。
実はここは、女神隊員が乗ってきた宇宙船が墜落した現場なのです。テレストリアルガードと当地の公共団体が折半して、石碑を建立。今日はその石碑の除幕式の日なのです。テレビカメラも入ってるようで、今石碑が映し出されています。
テレストリアルガードサブオペレーションルーム。今テレビがついていて、先ほどの石碑が映ってます。女神隊員が卵型のテーブルに座ってこのテレビを見ています。その横には上溝隊員の姿もあります。2人とも隊員服を着てます。女神隊員はウィッグだけで特徴的な単眼を隠してました。
女神隊員がぽつりと言いました。
「私も行きたかった・・・」
それに上溝隊員が応えました。
「ムリですよ。ヘルメットして行けばヘルメットレディだと気づかれちゃうし、帽子とウィッグだけじゃ、眼を完全に隠すことはできないし・・・ あとで一緒に行きましょ」
女神隊員はその言葉に何も反応しませんでした。何かを思い出してるようです。きっと乗ってきた宇宙船が攻撃され、地球に墜落したときの記憶だと思います。上溝隊員はなんとなくそれを察し、沈黙することにしました。
再び山中の会場、司会の人が発言してます。
「次はテレストリアルガード、香川隊長のお言葉です」
石碑の前に一時的に設けられた壇上に隊長が向かいました。隊長はまずは壇上に上がる前に壇上に一礼し、壇上に上がったら今度は観客に一礼し、演説を始めました。
まずはマイクテストのつもりか、
「あぁ・・・」
と声を発して、それから本題へ。
「テレストリアルガード隊長の香川です。
私たちは8年前と5年前、宇宙から侵略を受け、たくさんの人命が失われました。そのせいか、宇宙から来る侵略者を極端に怖がるようになりました。
今から3か月前、地球に1隻の宇宙船がやって来ました。その船は侵略を受けた惑星から逃げてきた、いわゆる難民船でしたが、宇宙人を極端に怖がってた私たちは、この船を攻撃してしまいました。難民船はこの地に墜落し、乗っていた難民5千人が一瞬にして亡くなってしまいました。
我々に彼らを殺す理由があったのでしょうか? 明らかに過剰防衛です。日本の法律では、地球人には人権がありますが、宇宙人にはありません。だから私たちは法的責任を問われることはありませんでした。しかし、5千ものむこの宇宙人を一瞬にして殺してしまったという事実は、ぬぐいきれるものではありません。
この町の尽力により、ここに宇宙人受難之碑を建立してもらいました。せめてもの償いです。この町に感謝します。
今も宇宙のどこかで侵略を受けてるむこの惑星があるのかもしれません。また難民船がやってくる可能性があるのです。みなさん、そのときはどうしますか? 私は彼らを受け入れるべきだと思います。地球人はそんなに薄情ではないはずです!
話が長くなってきたようです。このへんで終わりにします」
演説を終えると、隊長は再び頭を下げました。と同時に、パイプいすに座ってるみんなが拍手を始めました。とてつもなく大きな拍手です。中には立って拍手してる人もいます。が、倉見隊員は冷めた表情でその拍手を聞いてました。もちろん彼は拍手してません。
「ふん、バカか」
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