橋本隊員奪還作戦 14(終了)
隊長は女神隊員の帽子をおもむろに取りました。そして女神隊員の右側頭部に右掌を当て、彼女の頭部を自分の胸に優しく抱き寄せました。
女神隊員の涙は止まりません。逆に増えてきました。そしてついに声を出して泣き始めてしまいました。廊下を歩く人々はこの2人を見てびっくり。でも、隊長はそのまま泣かせました。
女神隊員は生まれたときから特殊能力をくさん有してました。母星では期待の星だったのです。そのせいか、幼いときからたくさんの試練を与えられ、それを次々とクリアしてきました。
けど、今日ほどむちゃなミッションはなかったのです。ほんとうに、ほんとうに怖かったのです。ここまで我慢してきたものが、一気にあふれ出てしまったのです。
隊長は女神隊員の頭を撫でながらこう言いました。
「今日はすまなかった。ほんとうにすまなかった。こんなむちゃな命令はもう二度としないよ。誓うよ。誓う」
隊長は女神隊員の頭を抱く腕をほどきました。女神隊員は隊長の顔を見ました。ウィッグの透き間から単眼が丸見えです。
「ほら、眼が見えてるぞ」
隊長は女神隊員の頭に白い帽子を被せました。
「さあ、行こっか」
「はい」
2人は立って歩き始めました。
ここはテレストリアルガード基地サブオペレーションルーム。今海老名隊員がモニターで深夜に放送してるアニメ番組の録画を見ています。突然引分けの自動ドアが開き、隊長が
「ただいま」
と言って入ってきました。けど、海老名隊員の興味はあくまでもアニメ。隊長には振り返りもせずに、ぶっきら棒に、
「おかえりなさい」
と応えました。隊長はテレビ画面のアニメに気づき、
「おい、一緒に見るって約束だったろ」
海老名隊員はまたもやぶっきら棒に応えました。
「だって、隊長、なかなか帰ってこないんだもん」
隊長は呆れてます。
「もう・・・」
ずーっとアニメに夢中な海老名隊員ですが、アニメを見ている状態で隊長に話しかけました。
「女神さん、すごいですねぇ。上空1万メートルから飛び降りたのに、傷が1つもつかなかったなんて」
隊長は席に着いて、アニメを見ながら応えました。
「でもなあ、さっきあいつに泣きつかれたんだ。怖かったんだってさ・・・
あいつ、身体的にはオレたちの想像をはるかに超えていたのに、精神的にはまるっきり子どもだった・・・」
「でも、与えられたミッションはクリアしたんでしょ?」
「ああ」
「じゃ、安心ですよ。
私もあんなすごいミッションをクリアしたいなあ・・・
隊長、そろそろ私の身体を元の身体に戻してくださいよ」
けど、隊長は何も応えません。海老名隊員は応答を促すように、
「隊長!」
と今度は大声で呼びかけました。今度は強い口調です。
「わかってんよ」
隊長は2度目は応えてくれました。さらに言葉を続けます。
「オレからしてみりゃ、お前、今のままでも十分役に立ってるんじゃないか? 今日だって橋本のピンチをいち早く察知して連絡してくれたろ」
「それじゃ応えになってませんよ。隊長、私だってメガヒューマノイドに変身すれば、あんなミッション、簡単にクリアできますよ」
「ふっ、何回も言ってんだろ。18になるまで待ってろって」
「またそれですか? そろそろ次の宇宙人が侵略に来ますよ」
「おいおい、お前の予言じゃ、次の宇宙人襲来は5年後だろ」
「あれ? 私、そんなこと言いましたっけ?」
「言った」
海老名隊員は今度は応えません。彼女の興味は、またアニメに戻ったようです。隊長もいつの間にかアニメに夢中になってました。
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