第3章 宇宙人受難之碑
宇宙人受難之碑 1
遥かに伸びる国道。その中を1台のクーペタイプのクルマが走ってます。東の空には今昇ったばかりの太陽があります。今クルマはその太陽を背に走っています。
車内です。運転してるのは香川隊長。コンビニで買ってきたのか、隊長はいなり寿司をかじってます。助手席には海老名隊員がいます。彼女は眠りこんでいます。中途半端に開いた口からよだれが垂れてます。テレストリアルガードの隊員とは思えない姿です。隊長も海老名隊員もいつもの隊員服ではなく、シャツにジーンズと、かなりラフな格好です。
後部座席には女神隊員が座ってます。女神隊員の服装はジーンズ生地のサロペット。上溝隊員の見立てなんだとか。いつも被ってる白い帽子は、今は座席の上にあります。ウィッグだけで特徴的な単眼を隠してました。ウィッグの隙間から自動翻訳機のヘッドセットも見えてます。
女神隊員は窓の外を見てます。田んぼ、畑、川、たまーに過ぎる樹々・・・ それらを楽しそうに眺めてます。実は女神隊員がこうやって外出するのは、地球に来て今回が初めてなのです。だからすべてが新鮮な光景なのです。女神隊員は今、とってもわくわくドキドキしてました。
ちなみに、3人が乗ってるクルマですが、隊長の私物です。テレストリアルガードのカラーリングは施されてません。
クルマの進行方向には巨大な富士山があります。上半分は白い雪の富士山。早朝のせいか、それより下はとっても青く見えます。
3人が乗ったクルマが立派な家屋の敷地の中に入っていきました。どうやら農家のようですが、とてつもなく広大な敷地です。その敷地に3人が乗ったクルマが駐車しました。
クルマから3人が降りてきました。女神隊員は慌ててウィッグを直し、さらに白い帽子をかぶりました。それをドアミラーで確認してます。海老名隊員はまだ眠り足りないのか、眼は半分寝たままです。
隊長が家屋のドアホンを押しました。すると、
「はーい!」
という声が。ドアが開き、40代くらいの女性が出てきました。
「うわ~ よく来たねぇ、お兄ちゃん」
と言っても、この女性は隊長の実の妹さんではありません。隊長の母の妹の娘なのです。つまり従妹。幼少のころ諸般の事情で10年ばかし一緒に暮らしたので、彼女は今でも隊長をお兄ちゃんと呼んでます。
ちなみに、隊長には兄弟姉妹はいません。両親と妻と娘が1人いましたが、5年前の戦争でみんな死んでしまったようです。
隊長は妹を名乗る従妹に質問しました。
「ダンナは?」
「畑。でも、軽トラは置いてったよ」
「あは、そっか。じゃ、借りてくぞ」
従妹はクルマの鍵をどこからか取り出し、それを隊長に渡す体勢になりました。
「はい、鍵」
隊長はその鍵を受け取ろうとしました。が、従妹はその寸前で鍵を握った手をさっと横に。拒否の意志表示です。隊長はびっくり。
「お、おい?」
従妹は何か悪だくみを考えてるような眼差し。女神隊員を見ました。
「その人、今をときめくヘルメットレディでしょ?」
また面倒なことを訊いてきたなあ、と隊長は思いました。とりあえず、
「違うよ」
と応えました。でも、従妹は信じてません。
「うそ。
ヘルメットレディは顔に何か事情があってヘルメットを被ってるんでしょ? 帽子をそんなに目深にかぶってるてことは、やっぱその人の顔にも何か秘密があるんでしょ? ねぇ、お兄ちゃん、どんな顔してるのか、見せてよ」
隊長は応えに窮しました。従妹はさらに追い打ちをかけるように、
「見せないと、軽トラ貸さないよ」
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