橋本隊員奪還作戦 13
ここは大きな総合病院の1階です。今私服の倉見隊員が受付などがあるホールを駆け抜けました。倉見隊員はエレベーターの前に来ると▲のボタンを押しました。が、ケージは今上の階にあるようです。
「ちっ!」
早々と業を煮やした倉見隊員は、意を決して階段室に飛び込みます。倉見隊員はそのまま階段を駆け登りました。2段抜きの物凄い速さです。
「うおーっ!」
倉見隊員の荒い息と咆哮が階段室に木霊します。
倉見隊員は廊下に出ると、そのまま看護師や機材をすり抜けながら廊下を疾走。そして1つのドアの前に辿り着き、そのドアをガチャッと開けました。
病室内。今倉見隊員が飛び込んできました。
「橋本さん!」
病室のベッドには橋本さんが寝かされています。意識は十分にあるようです。その傍らには香川隊長と寒川隊員がいます。この2人はテレストリアルガードの隊員服を着てます。隊長が振り返り、倉見隊員を見ました。そして呆れたという顔を見せてました。
「おいおい、なんだ、その慌てっぷりは? ここは民間の病院だぞ」
しかし、そんな注意はなんのその。倉見隊員はベッドの傍らに来て、橋本さんの顔を覗き込みました。
「は、橋本さん、大丈夫ですか?」
橋本さんは明るい顔で応えます。
「おいおい、そんなに慌ててどうする? 隊長さんの雷が落ちるぞ。気を付けろ」
「ああ、よかった・・・」
倉見隊員は安心したのか、へたれ込んでしまいました。
橋本さんは隊長に話かけました。
「隊長、あ、あの~ あの一つ眼の女は?」
「あ~ 女神隊員のことか?」
「女神? あいつ、女神て言うんですか?」
「ああ」
「ふ、そりゃまたすごい名前ですねぇ・・・」
隊長はあたりを見回し、
「う~ん、病院までは一緒に来たんだが・・・ あいつ、どこに行っちまったんだ?」
と、隊長はここであることに気づきました。そして考え込みました。その無言を破ったのは橋本さんでした。
「隊長、あ、あの~ 許してもらえますか?」
「ん、何を?」
橋本さんは申し訳なさそうに、
「・・・テレストリアルガードに復帰させてください」
「あは、それか・・・ いや~ それがなあ、お前の書いた辞表、まだ総理大臣に提出してないんだ」
「え? じゃ、書類上はまだ辞めてない?」
「まぁ、そうだな。ただし、今月分の給料はなしだぞ」
「あは、それで済むんなら、半年は給料なしでも働きますよ」
それを聞いて隊長はちょっと笑いました。今度は倉見隊員が質問です。
「隊長、ほんとうに橋本さんを許してもらえるんですか?」
「ああ」
「よかった・・・」
「倉見、お前ももっと真面目に働いてくれよ」
隊長はふと立ち上がりました。
「じゃ、ちょっと基地に連絡してくるか」
病院の廊下です。長椅子に白い帽子、白いワンピースのスカートの女性が腰かけています。そう、これは女神隊員です。特徴的な単眼はやはりウイッグで隠されてます。女神隊員は何か沈んでるように見えます。
「どうした?」
突然の声に女神隊員はびっくり。で、その方向を見ました。その声の持ち主は隊長でした。
「隊長・・・」
隊長は女神隊員の左手側に座りました。
「今日はよくやってくれたな。ありがと」
「・・・も、もうあんなむちゃな命令はしないでください」
と、女神隊員の前髪から何かが流れ出てきました。顔の中央です。そう、これは涙です。ふつーの地球人だったら涙は2筋流れますが、単眼な女神隊員の涙は1筋だけなのです。
隊長はその涙を見て、一瞬神妙な面持ちに。次の瞬間、柔和な顔を見せました。
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