橋本隊員奪還作戦 7

 乗りたくもなかったストーク号に今こうして乗っている。そのうえ地球上で一番嫌いな人物、橋本元隊員を救出しに行こうとしている。嫌だ。とっても嫌だ。今すぐにでもストーク号を降りたい・・・

 いっそうのことすべてを放棄して今ここで巨大化してしまおうか・・・ いや、そんなことしたら、香川隊長まで殺してしまいます。私が生きながらえてるのは隊長のおかげ。そんなことはとてもとても・・・

 じゃ、テレポーテーションで逃げる? でも、残念ながら、今地球上に女神隊員が逃げ込める場所はありません。結局は命令に従うしかないのです。

 隊長が寒川隊員に質問しました。

「そーいや、倉見は?」

「今日も無断欠勤です」

「ふふ、そうか。あいつも辞める気だな」

 隊長の声のトーンが命令モードに変わりました。

「よし、離陸!」

 寒川隊員が力強く応えます。

「了解!」

 ストーク号が垂直離陸を始めました。

 コックピットの隊長が再び命令します。

「水平停止!」

「了解!」

 ストーク号が空中で停止。

 コックピットの隊長の命令が続きます。

「認識ステルス機能作動」

「了解!」

 寒川隊員がコンソールのボタンの1つを押しました。するとストーク号の外装に薄い光の膜が現れました。隊長は今度はオペレーションルームの上溝隊員を無線で呼びました。

「どうだ? レーダーに映ってるか?」

 オペレーションルーム、上溝隊員がモニターを見ながら、

「隊長、ストーク号の機影がレーダーから消えました!」

 再びストーク号のコックピット。隊長がさらに命令。

「よし! 出発だ!」

 今度はストーク号そのものがふっと消えてしまいました。


 別の上空です。ストーク号がふっと出現しました。テレポーテーションです。

 ストーク号の真下にはプライベートジェット機が飛んでいます。ストーク号はプライベートジェット機の倍以上の大きさがあるのですが、プライベートジェット機はストーク号の存在にまったく気づいてません。これは認識ステルス機能のせいです。認識ステルス機能を作動させると、レーダーでも肉眼でも認識できなくなってしまうのです。これもヴィーヴルのから供与された技術の1つです。

 ストーク号のコックピット。隊長は真下に見える機影を見て、

「あれに橋本が乗ってんのか?」

 それに寒川隊員が応えました。

「100%とは言えませんが、運行記録から99%乗ってることは確かなようです。どうしましょう? アームで掴まえますか?」

「いや、掴まえた瞬間自爆されると、こっちも巻き添えをくらって墜落するぞ。それに99%乗ってるてことは、1%は乗ってないてこと。万一乗ってないと、国際的な問題になるな。さーて、どうするか・・・」

 隊長はちょっと考えました。そしてそのまま横目で後方を見ました。

「女神隊員!」

 突然呼びかけられ、女神隊員はびっくりです。

「あ、はい!」

「テレポーテーションであの飛行機に乗り移ること、できるか?」

「で、できますけど、テレポーテーションすると、どうしても向こうで大きな音が出てしまいます」

「う~ん、そっか・・・」

 隊長は少し考え、

「じゃ、行ってくれないか?」

 その発言を聞いて女神隊員はびっくり。

「ええ?」

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