橋本隊員奪還作戦 8

 寒川隊員もこの命令にびっくりしてます。すぐに否定的な意見を発しました。

「隊長、そんなことしたら女神さんは、瞬く間にハチの巣になってしまいますよ!」

「ふっ、テレストリアルガードの隊員服は完全防弾服だ。突撃銃(アサルトライフル)を何発喰らっても十分防げるはずだ。それに女神隊員はバリアを張れるだろ」

 隊長さん、確かに女神隊員はバリアを張れますが、それは一方向だけ。同時に多方向に張ることはできませんよ。あなたは女神隊員と初遭遇したとき、それを見てますよね。

 敵のど真ん中に入っていくってことは、どこから銃弾が飛んでくるのかわからないってこと。テレポーテーションした瞬間、女神隊員はハチの巣になってしまう可能性があるのです。突撃銃(アサルトライフル)の銃弾を数十発も喰らったら、隊員服は無事でも、その中の人が無事であるはずがありません。

 女神隊員は著しい嫌悪感を感じました。この命令はほんとうに嫌です。死んでこいと言ってるようなものです。しかもこの作戦の目的は、女神隊員がもっとも毛嫌いしている橋本元隊員の身柄の奪還。

 なんでこんな作戦に私は命をかけないといけないの? 女神隊員は隊長を全面的に信頼してました。なのに、こんなひどい仕打ちを・・・

 けど、女神隊員は命令を拒否できません。今は行くしかないのです。

 ここで寒川隊員が口を挟みました。

「隊長、ちょっと待ってください!」

 寒川隊員はレーザーガンを取り出し、

「これくらいはいいでしょ」

 寒川隊員はそのレーザーガンの銃口を持ち、グリップを女神隊員の目の前にかざしました。

「女神さん、これを持って行って」

 が、隊長はその手を掴みました。

「いや、それはよくないな」

 寒川隊員はついに隊長に反抗しました。

「隊長、これくらいはいいじゃないですか!」

 コックピットはちょっと険悪な雰囲気になりました。が、

「いや、いりません!」

 それは女神隊員の発言でした。寒川隊員はそれを聞いてびっくり。

「ええ?・・・」

 隊長はあらためて女神隊員に命令しました。

「じゃ、行ってくれ」

 女神隊員は5点式シートベルトを外し、立ち上がりました。次の瞬間、女神隊員の姿はふっと消えました。女神隊員が消えると、寒川隊員が隊長に喰ってかかりました。

「隊長、いくらなんでもひどいですよ! あれじゃ女神さんに死んでこいと言ってるようなものです!」

「お前なあ、ジェット機の中で銃撃てると思ってんのか?」

「え?」

「まあ、はねっ返りが2・3人いて拳銃を撃つかもしれないが、その程度ならなんとかなるだろ。

 あいつならなんとかしてくれるはずだ。オレが雇ったくらいだからな。もし失敗したら、オレ、この仕事、辞めてもいいぞ」

 隊長の大胆な発言に寒川隊員は言葉を失ってしまいました。


 ここはプライベートジェット機のキャビンです。電気イスのようなものものしいイスがあり、今そこに橋本さんが縛りつけられています。橋本さんは上半身裸です。かなり息が荒いようです。全身汗でびっしょりです。橋本さんの前には初老の男がいます。昨日中華料理屋で橋本さんに話しかけてきた男です。パチンコ屋で遭遇した巨大な男もいます。その他数人の男がいます。みんな、それらしい服装です。

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