女神の一番長い日 20(終了)

 彼らを見て女神は戸惑ってます。こんなにも歓迎してくれてるなんて、まったく想像してなかったからです。これを見ていた倉見隊員も戸惑ってるようです。

「お、おい、そいつはエイリアンだぞ・・・」

 女神はその倉見隊員を見つけると、縮小・等身化して、倉見隊員の前に立ちました。なお、隊員服やヘルメットはそのまま縮小してます。

 仁王立ちの女神を見て、倉見隊員は焦ります。

「な、なんだよ!」

 倉見隊員はレーザーガンを構えました。それに対し女神は、きっぱりと宣言しました。

「私の居場所は今ここにしかありません。あなたには都合が悪いのかもしれませんが、しばらくはここにいさせてもらいます!」

 倉見隊員はレーザーガンを降ろしました。女神にそれは効かないとわかってるからです。

「す、好きにしろよ・・・」

 倉見隊員は後ろを向いてしまいました。と、遠くに数人の市民が現れ、女神を指差しました。

「おおっ、いたぞーっ!」

「あ、まずい・・・」

 女神はさらに細い路地に入り込みました。

「ちょ、ちょっと待ってよーっ!」

 市民たちもあとを追って路地に入り込みました。が、なぜか女神の姿は消えてました。

「あれ、どこに行ったんだろ?」

「あの人、なんだったんだろ?」

「さあ、宇宙人か、ミュータントか・・・」

「人造人間かも・・・」


 テレストリアルガードの基地です。時刻はすでに夜で、あたりは暗くなってます。なのにテレストリアルガードの3階建ての建物は、まったく灯がついてません。当たり前です。この基地の主要な部屋・施設はすべて地下にあるのです。

 テレストリアルガードのサブオペレーションルームです。フルフェイスのヘルメットを被ったままの女神が寂しそうにテーブルのイスにぽつんと座ってます。と、彼女の目の前のテーブルに突然数枚の紙がポンと置かれました。と同時に声が、

「あんたの生体データが出たよ」

 女神が振り返ると、そこには隊長が立ってました。隊長は女神の隣りのイスにどかっと座り、

「この地球上にあんたの身体に害を及ぼすばい菌はまったくないらしい。あんたが持ってるばい菌も、この星にはすべて無害だそうだ。もうヘルメット取ってもいいぞ」

「そうですか」

 女神は首筋のボタンを押しました。そして両手で挟むようにヘルメットを掴みました。それを見て海老名隊員がドキドキわくわくしてます。上溝隊員も初見なので、かなり注目してます。でも、倉見隊員は見たくないらしく、横を向いてしまいました。

 ついに女神はヘルメットを脱ぎました。巨大な一つの眼。鼻はなく、口は巨大。海老名隊員はそれを見て思わずイスから立ち上がりました。

「すっごーい!」

 女神はちょっと苦笑してるようです。そして何かを言いました。が、地球人には理解不能な言語です。女神は慌ててヘルメットを被り直しました。それを見て海老名隊員は残念がってます。

「あれ~ なんでまたヘルメット被っちゃうの?」

 隊長がそれに応えました。

「言葉だよ」

「え?」

「ヘルメットには自動翻訳機が仕込んであるから、ヘルメットを被ってる方がいろいろと便利なんだよ」

 隊長は今度は女神を見て、

「ま、どっちにしろ外出するときは、まだヘルメットを被ってた方がいいな」

「わかりました」

 こうして女神の、いや女神隊員のあまりにも長い一日が終わりました。

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