女神の一番長い日 19

 巨大化した男は、眼の前にある木造建ての倉庫を蹴飛ばしました。倉庫は吹き飛び、空中でバラバラになり、その破片が3人の頭に降ってきました。

「うわっ!

 くそーっ、ストーク号でくれば・・・」

 その隊長の発言を聞いて、女神にテレストリアルガードの隊員としての使命感が沸き上がりました。ここは私の出番!

「隊長、私が行きます!」

「巨大化するのか?」

「はい!」

「巨大化したら、宇宙人だってことがばれるぞ」

「ふっ、いつかはバレます。構いません」

「ふふ、そうか、じゃ頼む!」

「はい!」

 女神は巨大な男に向かって駆け始めました。その後ろ姿を見て海老名隊員が、

「あの~ 隊長。あの人、巨大化したら素っ裸になっちゃうんじゃないですか?」

「ああ、そう言えば・・・」

 でも、海老名隊員はとっても期待してます。巨大化すれば間違いなくヘルメットが砕け散ります。そうなれば女神の巨大な単眼を見ることができるからです。


 寒川隊員が巨大化した男に追いつきました。

「くっそーっ!」

 寒川隊員がレーザーガンの銃床のセレクターをマックスにしました。このレーザーガンをマックスで撃つと、25mm徹甲弾とほぼ同じ威力になります。

「喰らえーっ!」

 寒川隊員はレーザーガンを構え、発射。男の背中に数発光弾がヒット。血が流れ出ますが、致命傷にはなってないようです。

 男が振り返りました。その殺気だった眼にビビッて、寒川隊員はまたもや後ずさり。

「うわーっ!」

 その男の背後に巨大化した女神が現れました。女神は隊員服もヘルメットもそのまま巨大化してます。それを見て海老名隊員は残念がってます。

「ええ、ウソ? 服もヘルメットもそのまま巨大化してるじゃん!」

 男ははっとして振り返りました。女神は思いっきりジャンプしてその男のあごにドロップキック。

「うぐぁっ!」

 男は2・3歩よろめき、転倒。そのとき、3階建てのコンクリート造の建物に後頭部を強打。かなり痛かったらしく、両手で後頭部を押さえ、のたうち回ります。

「うぐあ~!」

 男がのたうちまわるせいで、そこにあった木造家屋が破壊されていきます。隊長はこれはまずいと思ったのか、女神に大声で呼びかけました。

「おい、女神、一気にたたみかけろ!」

「はい!」

 どうやらフルフェイスのヘルメットに内蔵された自動翻訳機もそのまま巨大化したようです。

 女神は先ほどの手錠の電気ショックで悶絶した男を思い出しました。そしてその直後の隊長のセリフも思い出しました。

「逮捕後のエイリアンがどこに行くのか、見た者は1人もいないんだ」

「この男は私が葬ってあげないと!」

 女神はぽつりとそう言うと、両腕をL字に曲げ、両ひじを腋に付けました。その手にそれぞれ違う色の光が集まってきます。女神は光に満たされた両手を頭上に真っ直ぐ挙げ、そして一気に振り下ろしました。両腕が水平になったところで両掌を合すとビームが発生。その光線がのたうち回ってる男の身体を直撃。とてつもない火花がさく裂。もうもうとした煙が収まると、そこには男の巨大な死体が転がってました。

 しかし、たくさんの木造家屋が壊されてしまいました。女神はそれを見て、こいつは自分が恨まれるなあと覚悟しました。けど・・・

「やったーっ!」

「すごいぞーっ!」

 これを見ていた人々が、こぞって歓声を挙げているのです。

「ニューヒーロー誕生だ!」

 それを言った男子に、その隣にいた女子が、

「バカねぇ、ヒロインでしょ」

「あは、そうか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る