女神の一番長い日 17

 狭い路地が続く街並み。パトカーがサイレンを鳴らしながら行き交ってます。さらに狭い道では、警官隊があたりを見回しながら小走りで移動してます。その最後尾に女神がいます。

「おい!」

 その声に女神は歩みを止めました。女神が振り返ると、そこには倉見隊員が立ってました。その手にはレーザーガンが握られています。

「お前、何様のつもりだ!」

 これを見て女神はこう思いました。

「ああ、もう来たか」

「お前、テレストリアルガード辞めろ! お前なんかより橋本さんの方がずーっと使えるんだよ! テレストリアルガードは橋本さんが必要なんだよ!」

「私は・・・ 私はここを辞めません」

「なんだと?」

「私の居場所は今ここにしかないからです」

 これを聞いて倉見隊員は笑ってしまいました。

「がははぁ、お笑いだぜ、エイリアンのくせして!

 なあ、知ってるか? 日本の法律てーのは、地球人を保護するためにあるんだぜ。お前みたいなエイリアンには適用されないんだ。今ここでお前を殺したって、オレは完全無罪なんだよ!

 死ねーっ!」

 倉見隊員はレーザーガンの銃爪を引きました。発射された光弾が女神に向かって行きます。が、女神の身体に光弾が当たる寸前、女神の前に青白いハニカム構造の光のガードが現れ、その光弾を弾きました。倉見隊員は悔しそうです。

「ちっ、バリアか? そういや、こいつ、バリアを使えたんだった・・・ くっそーっ!」

 次の瞬間、女神の姿はふっと消えました。倉見隊員はそれを見て唖然としてしまいました。

「テ、テレポーテーション? あいつ、テレポーテーションも使えるのか?・・・」


「くそーっ、どこに行ったんだ?」

 そう言いながら複数の警官が路地を小走りに通り過ぎて行きます。警官隊が通り過ぎると、建物の影から1人の男が現れました。その顔は写真に写ってた顔の1つです。

 男は警官隊が行った方向を見ています。その背後で空間に歪みが発生してます。それに合わせて、空間を引き裂くような不気味な音が。男はその音に気付き、ゆっくりと顔だけ振り返りました。そこにはヘルメットを被った女性が立ってました。女神です。男は慌てました。

「うわぁっ・・・」

 男は女神に拳を振り上げました。

「うぐぁーっ!」

 が、女神は顔面に飛んできたその拳を避け、逆に男の足首を蹴飛ばしました。

「うわぁっ!」

 男の身体はうつぶせで思いっきりアスファルトに叩きつけられました。女神は左ひざでその男の背中を押さえつけ、両手で男の右手を思いっきり捻り上げました。激しい痛みで男はけたたましい悲鳴を上げました。そこに香川隊長と海老名隊員が駆け付けました。

「おお、ナイス!」

「すごーい!」

 さらに警官隊が駆け付けました。

「よーし、確保ーっ!」

 男の手に手錠がかけられました。手首のサポーターに鎖が付いた手錠です。

「ほら、立て!」

 警官隊が男を無理やり立たされました。香川隊長は警官隊のリーダー格の警官を見て、

「じゃ、あとはお願いします」

「はい。

 ほら、歩け!」

 警官は男の腰に結わえたひもを思いっきり引っ張りました。そのせいで男の身体はよろけました。このとき男の眼が鈍く光りました。反抗的な眼です。次の瞬間男は全力で警官にタックルしました。警官の身体は無残に吹き飛ばされました。

「うぐぁっ!」

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