女神の一番長い日 16
で、女神ですが、フルフェイスのヘルメットが邪魔で、どんな表情でこの会話を聞いてるのか、てんでわかりませんでした。
今度は後ろを走る4WDの車内です。運転手は寒川隊員、助手席には倉見隊員が座ってます。倉見隊員は寒川隊員に質問しました。
「お前、あの女、どう思う?」
「あの女って・・・ 女神さんのことですか? まあ、巨大化するし、光線技も使えるし、すごいじゃないですか」
「オレは嫌だな。あいつなら、橋本さんの方が1万番マシだ。
考えてもみろよ、あいつはエイリアンだぜ。エイリアンは侵略者だ。そんなやつ、テレストリアルガードに入れていいのかよ?」
「彼女は母星を侵略されて、仕方なくこの星に逃げてきたんですよ。侵略者する意志なんてあるはずがないですよ」
「ふん、それがどうした! エイリアンはエイリアンだろ!」
倉見隊員は突然激昂しました。その大声に寒川隊員はびっくりして肩を縮めました。倉見隊員は寒川隊員より年齢が上です。ここは逆らわない方が得策だと判断し、ただ黙ってハンドルを握ることにしました。
上空を見ると、陽はかなり傾いてきました。ここはちょっと古い住宅街です。はるか向こうに高架橋の線路が見えてて、そこまで家がびっしりと建ち並んでいます。ちょっと背の高いビルディングも点々と見えます。
そんな街の中にあるマンションの工事現場。仮囲いに沿ってテレストリアルガードのセダンと4WD、それに数台のパトカーが駐まってます。仮囲いのゲートが開いていて、工事現場の監督がテレストリアルガードの隊員と警官隊に囲まれ、職質を受けてます。
「いや~ 問題の作業員はちょっと前までここにいたんですがね・・・」
隊長はそれを聞いて悔しそうな顔をするかと思いきや、別に顔の表情は変わってないようです。
「ふっ、そうか」
警官隊の中の1人が隊長に話しかけました。
「すみません。最初に駆けつけた警官がここでガードマンに職質したんですが、どうやら本人に聞かれてしまったようなんです・・・」
寒川隊員が現場監督に質問しました。
「なにか写真はありませんか?」
「ええ、そう言われると思って、用意しておきました」
現場監督は2枚の写真を取り出しました。それには男が1人ずつ写ってます。履歴書に使うような写真です。
「この男とこの男です。この2人、今まで一度もしゃべったことがなかったんですよ。病気でもあるのかなあと思ってたら、まさかエイリアンだったとは・・・」
「仕方がないなあ・・・ 全員で捜索するか。相手は重火器を持ってる可能性もあるから、みんな、十分気を付けてくれ!」
この隊長の言葉にテレストリアルガードの隊員と警官隊の全員が応えました。
「はい!」
テレストリアルガードの隊員たちと警官隊が散って行きました。隊長も海老名隊員を連れて捜索に出ようとしましたが、先ほどの警官に呼び止まられました。
「あの~」
「ん?」
警官は警官隊とともに駆けて行く女神を見て、
「あの人はなんでヘルメットを被ってるんですか?」
「ああ、彼女は5年前の戦争で顔を潰されてねぇ・・・」
「ああ、なるほど。かわいそうに・・・」
海老名隊員はそれを聞いて、うまいこと言うなあと、関心したようです。
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