女神の一番長い日 13

 上溝隊員と女神が廊下に出ました。上溝隊員が女神に話しかけます。

「よかった。あなたが入隊してくれて。実はテレストリアルガードには元々40人以上の隊員がいたんだけど、次々と辞めちゃってね、今は6人しかいないんだ」

「え?」

「橋本さんも辞めちゃったみたいだけど、あなたが入ってきたから、また6人かな?」

「何があったんですか?」

「隊長が次々と死んじゃってね。今の香川さんで4人目なんだ」

「戦死ですか?」

 上溝隊員は首を横に振りました。

「病死。正確に言えば、3人とも心臓麻痺よ」

「心臓麻痺? 3人も?」

「しかも3人ともなんの前触れもなく突然錯乱状態に陥って、そのまま死んじゃったんだ。そのせいでテレストリアルガードは呪われたチームというレッテルを貼られちゃってね、たくさんの人が辞めちゃったんだ。でも、今の隊長になって不幸は止まったみたい」

 女神は何か話を続けようと思いましたが、特にセリフが思い浮かばないようです。

 上溝隊員が立ち止まりました。

「ここよ」

 そこは1つのドアの前です。上溝隊員はラミネートされた紙を女神に渡しました。それにはイラストがたくさん描かれてました。

「これが無菌室とエアシャワー室の使い方よ。あ、日本語だから、わからないかな?」

「大丈夫ですよ。イラストをみれば、だいたいわかりますよ。それじゃ」

 女神はエアシャワー室に入りました。上溝隊員は彼女を微笑んで見送りました。


 強い紫外線を浴び、上下左右からの強烈なエアシャワーを浴び、女神が無菌室に入ってきました。この部屋には医療用のベッドしかありません。それも1つだけ。

 壁ですが、1つの面全体に大きなガラスがはめ込んであり、向こうの部屋からこっちの部屋が観察できるようになってます。現在向こうの部屋は無人のようで、真っ暗です。

 ガラスの反対側の壁には、観音開きのドアがあります。ドアの向こうにはたくさんの機材があるようです。1面には今女神が入ってきたドアがあり、残り1面はただの壁です。

 女神はドカッとベッドに腰かけました。そして首筋のボタンを押し、両手で挟むようにヘルメットに手を掛けました。そのままヘルメットを上げると、彼女の顔があらわになりました。巨大な一つの眼、鼻はなく、大きな口。地球人からみたら不気味で気持ちが悪い顔です。でも、首から下は標準的な地球人の女性でした。

 髪はかなり長かったのですが、ヘロン号に散切りにされてしまったせいか、今はショートボブになってます。身長は175cmと、日本人の標準的な女性と比べたらかなり高いようです。身体はかなりスレンダーですが、胸は意外と膨れています。

 女神は下を向いてため息をつきました。5000もの同胞を殺され、自分も殺される寸前まで追い込まれたというのに、今はそいつらに恭順してる・・・

 でも、もしあのときテレストリアルガード入隊を拒否してたら、どんなひどい目に遭ってたことか・・・ 巨大化して反抗したところで、あのストーク号とヘロン号には勝てる見込みはないし・・・

 隊長は私を警察から守ってくれた。今は彼を信じるてみるしかないのか? で、でも、あの橋本て男がテレストリアルガードを辞めてなかったら、きっと別の手段を選んでたと思う。あの男は明らかに私に敵意があった。いや、まだ倉見て男がいたなあ。あの男は隙を見て攻撃してくるかも。ここも安住の地じゃないのか?・・・

 女神は再びため息をつきました。

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