女神の一番長い日 12

 最後に隊長自身の紹介。

「最後はオレだな。オレは香川だ。よろしくな」

 隊長も手を差し出しました。宇宙人は無言のまま、とりあえず握手をしました。握手が終わると、隊長は再び話を始めました。

「ほんとうはもう1人海老名て隊員がいるんだが、何分まだ中学生でな。この時間まだ学校に行ってるんだ。あ、中学生てわかるかな?」

「なんとなくわかります」

「ふふ、そっか。じゃ、今度は君のことを訊こうか。まずは名前を教えてくれないか」

「私の名前は・・・ 女神です」

「ええ?」

 これにはテレストリアルガードの4人が驚きました。隊長の発言。

「こりゃあ、また、ずいぶん仰々しい名前だなあ」

「私の星では数万人に1人の割合で超常的な力を発揮する人が生まれます。その中でも特に強い力を発揮する人を神、女の人は女神と呼ばれます。私は生まれたときから強い力を顕在してたせいか、物心ついたときから女神と呼ばれてました」

 隊長はちょっと笑って、

「ふふ、なるほどね」

 上溝隊員の質問。

「なんでこの星に来たの?」

「私の星にも凶悪な宇宙人が攻めてきたんです。それで逃げてきました。

 実は予知能力がある神が、私の星が戦火に見舞われると事前に予知してたのです。いろいろと分析した結果、凶悪な宇宙人が侵略に来ると断定されました。かなり科学技術が進んだ宇宙人のようで、私たちの星は到底太刀打ちできないと判断されたのです。そこで私たちの星は、脱出用の宇宙船をたくさん造りました。でも、乗員できた避難民は、私の星の1%にも満たない人口でした。残った人は武器を取って戦うことにしました。

 そして侵略Xデーの10日前、脱出用の宇宙船はいろんな方向に向かって旅立ちました」

 隊長の発言。

「そのうちの1つが、あんたが乗ってた船ってわけか」

 今度は寒川隊員の質問です。

「実際侵略はあったんですか?」

「ええ、予言通り10日後に集中攻撃を喰らったようです。せっかく脱出できた宇宙船も、かなりの数が撃ち落とされたようです」

「君の星も大変だったんだな・・・」

 今度は隊長の発言です。

「せっかく生き残った宇宙船も、我々が撃ち落としてしまったか・・・

 これからどうする? 私は私たちの仕事を手伝って欲しいと思ってる。でも、我々はあなたの数千もの同胞を一瞬で殺してしまった。とても仲間になって欲しいとは言えない状況だ」

 宇宙人はちょっと下を向いて考えました。なんでこいつらの仲間にならないといけないの? こいつら、5000もの同胞を殺したカタキでしょ・・・

 でも、私には還る母星がない。他の惑星に行く手段もない。今はこの星で生きてくしかないんだ。この星で生きてくためには、まずは私の居場所を確保しないと・・・

 宇宙人は横目で隊長を見て思いました。この人はさっき私を助けてくれた。この人ならなんとかしてくれるはず・・・

 女神は短時間ながら深く考え、ついに結論を出しました。

「わかりました。私をこのチームに入れてください」

 それを聞いて隊長の顔がぱっと明るくなりました。

「ありがと!」

 隊長は感謝の意を込めたのか、深く頭を下げました。寒川隊員と上溝隊員も明るい顔を見せてます。でも、倉見隊員はあまりいい顔をしてません。

 それでも女神と名乗る女性宇宙人が新たにテレストリアルガードの隊員になった事実は確かなようです。

 女神の再びの発言。

「あの~ このヘルメット、脱げる場所はありませんか?」

「うん・・・ そういや医療区画に無菌室があったな」

 と言うと、隊長は上溝隊員を見ました。

「おい、連れてってやれ」

「はい」

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