第8話 ロストボーイ part1
ところ変わって、舞台は夜のニューヨーク。
マンハッタン中心部に林立する巨大な高層ビルの中でもひときわ目を引く、刃物のような鋭角的なデザインが印象的なビルの最上階に、ワンフロアをぶち抜いて作られた会議室があった。
照明は最小限の間接照明だけに留められているため広々とした室内は薄暗く、四方を取り囲む巨大な窓からは世界一といっても差し支えのない、きらめくようなマンハッタンの夜景が一望にできる。
だが、室内にはそれを楽しむ人影はまったくない。
代わりにあるのは広い室内の中心部分に据え置かれた巨大なテーブルと、その周りに配置された十二台の縦型のモニターのようなものだけであった。
そのうちの一台のモニターの上部に小さな赤いランプが燈ともり、性別も年齢も不明な加工された声が響いた。
「まだ見つからないのか」
それをきっかけに次々とモニターの灯りがつき、同じように無機質な声が響きあう。
「トウキョウに入国した時点まではわかっているが、ナリタ空港を最後に行方が全く掴めていない」
「空港内にとどまっている可能性はないのか」
「それはありえない。空港内の監視カメラの映像もすべてこちらでチェック済みだ」
「空港からのすべての公共交通機関の監視カメラに侵入して最新の画像認証システムを同調リンクさせているが、彼らしき姿は認識できていない」
「空港に入っている複数のレンタカーのホストコンピューターにも利用記録が見つからない」
「それでは一体どこに消えたというのか」
「既に48時間以上経過している。どうして発見できないのだ」
「このまま彼を野放しにしておくわけにはいかない」
「このままでは、先代アーサー公の意思が実行されることになるのだぞ」
「そんな事になってみろ、我ら十二家の被る損失は計り知れないものとなる」
「どう責任を取るつもりだ、イスカリオテ」
激しい怒りを感じさせる叱責の言葉と同時に、室内に新しくモニターが出現した。
ブゥンという小さな音とともに、他のモニターとは違う青いランプが灯った。
「流れ出でた聖なる者と預言者たちの血の重さに誓い、新当主ジョシュア・ウォルズリーの身柄は我々が確保する。いかなる手段を用いても」
イスカリオテと呼ばれた十三番目のモニターはそれだけを告げると、静かにその姿を消した。
やがて一つ、また一つとモニターのランプが消えていき、室内には再び静寂が戻った。
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