第94話 ゲームマスター ㉓
『ぜぇ~、はぁ~、ぜぇ~、はぁ~』
予想以上に予想以下なニートボールさんは3分走っただけ後退しだし、他の2人が声援を送るも5分を過ぎた辺りで、赤いゾーンに入ってしまいました。
ステージ2では鉄球は撃ち出されません、代わりに”バシッーン!”とニートボールさんのお尻に超高速の鞭が打ちつけられる。
『痛ギャァ―!』
叫びながら飛び上がり、痛みから逃げる本能により足を速めるニートボールさん。
ふふっ、やっぱり無理矢理走らせるには鞭の方が合いますね。
カメラとマイクをつけるよう指示を出す。
「鉄球は気に入って貰えてたようだが、鞭はどうだニートボール?」
『ひぃっ~!ぜぇ~はぁ~、ふぅひぅ…、ぜぇ~…』
…私の軽口に返せないほど一杯一杯のようです。
足を痛めている為まともなフォームで走ることが出来ないニートボールさんは、1分ともたずまた赤いゾーンに入ってしまい鞭で打たれる。
『ひぃぎぃー!』
「まだ4分も残っているぞ。しっかり走れクソ豚野郎!」
ありきたりな罵り文句ですが、会場の観客はそれなりに湧いてますね。
ですがこのペースだと本当にステージ2でニートボールさんは脱落しそうです…。
お!高木刑事が動きました。
足を止めて後退し、ニートボールさんの背中に回りこんむ。
『ぜぇ~…た、高木…?』
『後ろから押す、転ばないように気を付けてくれ』
『ぜぇ、はぁ~…それだとお前が…』
ニートボールさんが言い終わるより先に、高木刑事が赤いゾーンに入ってしまい背中を鞭が叩きつけられる。
『ぐっ……』
『お、おい…』
『大丈夫…、足を動かすことに集中するんだ』
「くくくっ、身を 挺して助けるとはさすが高木刑事」
まぁ、この程度はしないとただの口先野郎ですけどね。
オミズさんは…おや、走る速度を落としました。そして持っている鉄パイプの先をニートボールさんに差し出す。
『これを両手でしっかり掴んで。引っ張るから』
『オミズ……せぇ、はぁ~』
女性であるオミズさんに負担をかけることを躊躇するニートボールさん。
『早くっ!』
でも、オミズさんに剣幕に鉄パイプを掴む。
ニートボールさんを高木刑事が後ろ押し、オミズさんが前で引っ張るというフォーメーションが出来上がりました。…効果はいかほどですかね?
その後高木刑事が2回ほど鞭で打たれましたが、10分経過のブザー音がなる。それと同時にアクリル板が左右に開く。
『磯野さん頼む!』
『はいっ!』
鉄パイプを離しダッシュするオミズさん、逆方向に床が動いてるとは思えない速度で反対側に到達しボタンを押す。
床が止まり、ニートボールさんは崩れる様にその場倒れる。高木刑事も押して走った疲労と鞭を受けた痛みで膝をつく。
『ぜぇ、はぁ、ふぅ~ぜぇ~…、はぁ~』
『はぁ~、ふぅ~、はぁ~、ふぅ~』
……このままステージ
観客は直ぐ次を見たいでしょうけど、ここは仕方ありません。
「いいチームワークだった。褒美に10分の休憩を与えてやろう」
カメラとマイクを切らせ、会場の様子を確認する。
「…モニターでは楽しそうに見えますね。早乙女に連絡して様子を聞いてみましょうか」
「そうだな、ちょっと待ってくれ」
「一旦スピーカーも切ってください」
会場でのお客さん対応は早乙女に任せています。
音重さんからスマホを受け取る。
『は~い、紅さん。ここまで順調ね』
「はい、想定内で進んでいます。会場の雰囲気はどうですか?」
『こっちもイイ感じよ。立食パーティー形式が功を奏して話が弾んでるわ』
「退屈されている方はいませんか?」
『一部「これはこれで面白いが、早く人が死ぬところを見たい」って意見はあるわね。でもニートボールが次確実に死ぬでしょ」
「ええ、10分休憩したところで間違いないでしょう」
『なら問題ないと思うわ』
「分かりました。予定通り第五ミッションが終わり次第、リングの設営をお願いします」
『了解よ』
会場の方は問題無しと。
「あと問題として考えられるのは、高木刑事が頑張り過ぎてニートボールさんと共倒れになるパターンですね」
「そうなったら、最終ミッションは紅とオミズの一騎打ちだな」
「個人的には戦ってみたいですが、ショーとしては想定通りに高木刑事が残ってくれるのが一番です」
まぁ、高木刑事がバカな真似をしようとしても、オミズさんが止めてくれるでしょう。
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