第90話 ゲームマスター ⑲ 


 うっかり暴露からのあっさり爆破パターンになりましたか。

 会場は…ややウケてるっぽいのでまぁOKでしょう。


『おい!どうなってんだコスプレ女!』

「言った通りお前達三人はミッションクリアだ、おめでとう」

『いや、そこじゃなくて、何でおっさんの首輪を爆破したんだよ?』

「ルールを破ったからだ、裏ミッションのな」

『裏ミッション…?』

『もしかして、身代わりになることが、ですか?』


 有って無いような首を傾げるニートボールさんに代わって、オミズさんが確信をつきます。


「その通りだ」


 パチンカスさんに授けた裏ミッションは【全員の身代わりとなって引き金を引させろ】。

 第四ミッションではパチンカスさんがターゲットでした。

 本来ロシアンルーレットは運勝負ですが、弾の位置と順番を任意に決めれるなら違ってきます。

 弾の位置は六発目、一番最後です。

 そして開始時に一番手の席は決めていたと言いましたが、あれはパチンカスさんの隣の席の事です。一巡目の最後をパチカスさんにすることが重要だったので。

 

「パチンカスが言っていた様に、高木刑事も銃口を向けて引き金を引いていれば、あの男はゲームクリアだった。だが裏ミッションの内容を話すことはルール違反、一発アウトというわけだ」


 パチンカスさんにもその辺しっかり説明してたんですけどね…、脳の髄までカスッカスだったんでしょう。


『私も古田さんに向けて引き金を引いていたら、残り三人でロシアンルーレットを続けることになったのか?』

「いいや。第四ミッションはそこで終了だ」

『それは…、私達三人が殺されていたということか?』

「いいや。お前達三人は次のミッションに進める」

『…それでは…まさかっ!?』


 高木刑事もお気づきになったようですね。


「くくくっ。あぁ、残念だなー。折角全員が生きてクリア出来るミッションを用意してやったなのに、熱望していた高木刑事が無駄にしてしまうとはなぁー」


 残念と言いつつ当たり前のように想定内です。

 私が第四ミッションでやりたかったのは、


「お前が「」などと、くだらない事に拘らなければパチンカスも生きてミッションをクリア出来たんだよ」


 これを言いたかっただけです。


 ロシアンルーレットで身代わりになって引き金を引かせるのは難しい事ではありません。誰だって自分の頭か他人の頭かを選べるなら、他人の頭に銃口を向けます。 

 さらに弾の位置は六発目だと伝えているので恐れる必要もない。

 説得が下手すぎてパチンカスさんは滅茶苦茶怪しまれていましたが、それでもニートボールさんやオミズさんと同じ様に大半の人は身代わりに銃口を向けるでしょう。

 ですが、その大半に含まれないのが高木刑事。

 正義感の強い警察に一般人を撃つよう説得するのは難易度が跳ね上がります。しかも裏切り者が居ると聞いた上ならゲキムズです。

 

『ちょっと待てよコスプレ女、必ず1人は死ぬつってたじゃねぇか』

「我は「必ず1人いなくなる」と言ったんだ。パチンカスが裏ミッションを成功させていれば、このデスゲームから生きていなくなっていたということだ」

『チっ、屁理屈コネやがって。最後のおっさんが息子を殺した云々ってのは本当なのかよ?』


 …ニートボールさんは本当に思った事を反射で口に出す人ですね、ついでのように聞く質問ではないでしょう。


「本当だ。二十年以上前の話で、科された刑期を終えているがな」


 嘘の開示で話さなかったのは、刑罰を受けて罪を償ったと法的には判断されているからです。

 私的には償ったとは思ってませんけどね。

  

「真夏の車内は50℃を超える。そんな中に幼い息子を放置し、パチンコに夢中になってて殺した。我からしてもおぞましい行為だ」


 これは私の本心です。

 取れ高を作る為に残酷な殺しを平然と出来る私も、子供を殺すことには抵抗があるんですよ。

 私自身の思考を分析するに、15歳まではスパルタな英才教育を受けながらも、デスゲームとは関わりのない幸せな生活だったと思っているからでしょうね。


「それでいて出所後も借金を作ってまでパチンコを打っている。法でパチンカスが死刑になることは無いだろうが、我からすれば「さっさと死ね」以外無いな」


 あくまで私の意見です。

 ですけど、


「高木刑事もそう思わないか?幼い頃父親から虐待されていたお前は、熱い部屋に長時間閉じ込められた経験があるんだろ」

『な!?何故知っているっ?』

「今さら過ぎる質問だな。出場者の情報を入手していることは、今までのやり取りから分かっているだろ」

『……だが、そんなことまで知っているのは極僅かしか…」

「極僅かでもいるなら情報は入手出来るさ」


 主役なので他より入念に調べてますからね。なんでも、親からの虐待が高木刑事が警察官を目指すきっかけを作ったそうです。


「我がパチンカスと呼ぶ真意を知れば、銃口を向けて引き金を引けたんじゃないか高木刑事」


 これがあだ名について話し合うようアドバイスした理由です。

 パチンカスが生き残るには、逆に生きる価値のないカスだと高木刑事にも思って貰うことだったんです。まぁ、「一番年配者だから」とか善人ぶってる時点で無理だと確信してましたけどね。


『そんなことは……』


 、と続きが口から出ないご様子。それほど高木刑事にとって幼少の頃の虐待はトラウマなのでしょう。


「死んだカスの話は終わりだ。次の部屋へと進むがいい」


 指を鳴らし次の部屋へと続く扉が開く。


「また先に教えておいてやろう、第五ミッションも全員生き残れる可能性があるぞ。精々頑張る事だな」


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