第89話 ゲームマスター ⑱ 三人称
第四ミッションがスタートし、
「
タイマーが【00:59】と進むのを見て”ガチャっ”と撃鉄を起こすニートボール。
自分の頭に銃口を向けなければならないならこの時点で手が震えているだろうが、
「さっきも言ったけど、撃たせてもらうぞおっさん」
パチンカスが身代わりになるならそこまでの重圧はない。
銃口をパチンカスに向けるニートボール、一番手で確率が六分の一というのも動作が軽い理由一つだろう。
「構わない。
銃口を向けられているのに、何処か嬉しそうにも見えるパチンカス。
「……撃つぜ」
少し怪しく思うもニートボールは引き金を引く。
”カチっ”
『不発だ、銃をオミズに回せ』
「ふぅ~、…良かったぜ」
弾が出なかったことに安堵するニートボール。
自分が死ぬぐらいならパチンカスを殺すと考えれても、自分で人を殺したいとは思っていない。
「…まだ五分の一だから、次も不発だろ。…多分」
拳銃がオミズに渡る。同時にタイマーが【01:00】にリセットされ進み出す。
「う…うん…」
「……本当に、良いんですね?古田さん」
震える手で撃鉄を起こすオミズ。
「ああ、君のような若い女性はこんなところで死ぬべきじゃない」
パチンカスのちょっとカッコつけた台詞を聞いても、オミズには怪しいとしか思えない。
だから考えるべきのは不自然なルールと
普通ロシアンルーレットで他人の身代わりに立候補する者などいない。にも拘わらず
これはつまりこの状況は
そしてオミズにもその者が予想出来ている。
この推測の結論は、
(パチンカスに何か思惑があるにしても、アタシがここで死ぬことはないかな)
「…磯野さん」
拳銃を握ったまま20秒ほど動かないオミズに、心配そうに声をかける高木刑事。
「大丈夫です」
オミズは短く答え、パチンカスに銃口を向けて引き金を引く。
”カチっ”
『不発だな、次の高木刑事に銃を回せ』
「四分の一ですね」
「…ああ」
高木刑事は銃を受け取りながらも視線を
「想定内といった表情だな。お前は何回目で弾が出るか知っているわけか」
ロシアンルーレットでは弾の位置が誰にも分からないように、開始時にシリンダーを回転させるのだが今回は省かれていた。そして高木刑事の指摘通り
『くくくっ、想定内は今更だな。ここまで全て我の手の平の上だ』
「……なら私がこうするのも想定内なのか?」
高木刑事は撃鉄を起こし、銃口を自分の頭に向ける。
「高木刑事!?ま待ってくれ、
それを見て慌てだすパチンカス。
「
「古田さん、あなたの思惑は私には分からない」
「お、思惑なんてない、ただ今は
「思惑がないなら尚の事、警察官である私に一般人を撃つという選択肢はない」
「っ!?…」
パチンカスが裏切り者で思惑があるなら、言う通りに銃口の引き金を引くべきではない。
逆に、パチンカスに思惑などなく善意で身代わりを名乗り出た一般人なら、銃口を向けて引き金を引くわけにはいかない。
「そういうことじゃないんだ高木刑事!銃を
パチンカスの脅迫のような提案を、高木刑事は最後まで聞かず、
「いや、私が三回引き金を引く。それで二人に危険はない」
自分がリスクを負う事で拒否する。
「ちち違うんだ!そうじゃない!頼むから
「もう時間がない」
高木刑事が指に力を入れ…、
「
パチンカスの言葉に動きを止める。
「それはどういう意味…」
高木刑事が問うのを遮り、部屋にブザー音が鳴り響く。
『ルールを破ったな、パチンカス』
「ひっ…ちち違…」
『ニートボール、オミズ、高木刑事は第四ミッション
何がどうなっているのか分からない三人にクリアを言い渡す
『そしてパチンカス…』
「お、おおお願いだ殺さないでくれ!
パチンカスは第二ミッションでも同じ様な事を言って、情を引こうとしていた。
当然そんなもので
なにより、
『お前は息子を殺したことで、疾うの昔に妻娘から縁を切られてるだろ』
「こ、こ殺しては…」
『パチンコを打つ為、夏に幼い息子を車内放置して熱中症で死なせた。重過失致死罪でも殺した事に違いはない』
『パチンコに夢中で息子を死なせてしまったにもかかわらず、パチンコを打ち続けている。だから我はお前をパチンカスと呼んでいた』
誰が聞いても納得のパチンコを打つカスだからだ。
「でで、でも……」
『パチンカスにこれ以上時間を使う気は無い。さっさと死ね』
氷の様に冷たい表情で
『ミッション
指を鳴らし、パチンカスの首輪が爆発させた。
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