第87話 ゲームマスター ⑯


「…くくくっ。高木刑事のやる気も回復したところで、第四ミッションの説明といこうか」


 もう一口ステーキを食べ、赤ワインっぽい葡萄ジュースを呷る。

 言っておきますが私に、グロい死体を見た後にステーキを食べたくなる嗜好などありませんよ。

 私が食事をしているは観客向けのパフォーマンスです。

 これまでも何度かと言葉にしてましたが、実は今回のデスゲーム型殺戮拷問ショーは客を招いての観戦形でもあるのです。

 第一~第五までのミッションは会場の巨大モニターで観戦。最終ミッションは辿り着いた出場者と私の対決を会場で直に観戦。

 ですが、獅子頭部長と早乙女さんとのミーティング時から「会場に来てモニター観戦では客が最終ミッションまでにダレてしまう」と予想出来ました、

 その対処法として第三ミッション終了から会場は立食パーティータイムとすることにしました。

 観客はデスゲーム愛好or殺戮拷問ショー愛好の人達。残酷な処刑でのグロ死体なんて絶品スパイスとでも言わんばかりに皆さん食が進んみ会話も盛り上がっています。特にステーキを食べている人が多く見られます。私が食べてるのを見て自分も食べたくなったのでしょう。


『もう次を始めるのか!?』

『まだ15分経ってねぇだろ!』


 おっと、観客の様子だけに意識を向けててはいけませんね。

 出場者の行動とゲームマスターの演技と集中しつつ、観客を機微を感じ取ってゲームを進行しなければなりません。

 ……これ、若手が思い付きでやる企画じゃないですね。

 

「休憩が終わってからでも構わないが、説明を聞いてからの考える時間は減るぞ」


 私の言葉に、


『それなら今説明をお願いします』


 オミズさんが直ぐに説明の要求をしてきました。

 第四ミッションがどのような内容であろうと、考える時間は多いに越した事ないですからね。

 だからと言って有利になるかは別ですが。

  

 私は指を鳴らして、第四ミッションの用意の指示をだす。

 それにより4人が座る椅子からベルトが飛び出し、腹部を締め付け拘束する。


『なっ!?なんだこれは!』

「離席を禁止する為拘束させてもらった」


 4人の拘束と同時に、テーブル中央の天板が開き回転式拳銃が姿を現す。


『それは6発装弾できる回転式拳銃で弾は1発だけ入っている』


 この説明だけでも何をさせたいのかは容易に想像できるでしょう。


『第四ミッションはロシアンルーレットだ』


 回転式拳銃に1発だけ弾を装填し、何度目に弾が発射されるか分からない状態で順番に自分の頭に向け引き金を引く。

 世界で一番ポピュラーと言って過言ではないデスゲームです。


『先に言っておいてやろう、このミッションでも必ず1人いなくなるぞ』


 私の言葉に怒りで歯を食いしばる高木刑事、でも反論してこないのは無駄だと学習したようですね。

 バカなりに。


「ルールを説明する」


・自分の順番での制限時間は各一分。

・一分以内に拳銃を頭に向けて引き金を引く。

・引き金を引いて不発だった場合は次の者に拳銃を渡す。


 この辺りまでは普通のロシアンルーレットと変わりません。

 違うのはここから、


・合意の上でなら身代わりとなる者を1人だけ設定できる。

・身代わりに引き金を引けるのは1人一回。

・一度の順番で自分になら引き金を三回引ける。


「質問はあるかな?」


 疑問形ですけど無かったら驚きです。


『あの、身代わりって、つまり他人の頭に向けて引き金を引いて良いってことですか?』

「合意の上でならな。勝手に他人または全然違う場所を撃った場合は、その者がルール違反によりあの世行きだ」

『合意の上って…「自分を撃って良いよ」なんて言うヤツいるわけねぇだろ!』

「それはどうだろうな」


 ここでも裏ミッションが効いてきますから。


 会場の様子は……、モニターよりも食事と会話に意識が向いてますね。


「ゆっくり相談するといい、時間は少しおまけしてやる」

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