第85話 ゲームマスター ⑭
体中に杭を刺されハチグレさんが息絶えました。
おぉー、クリスタルの輝きと鮮血の彩りと惨苦の表情が合わさって、ある種の芸術作品のようです。
会場でも、うっとりした感嘆の声が上がっています。お高い料金支払った甲斐がありました。
部屋の四人はこの芸術が分からないようで、
ニートボールさんとパチンカスさんは早々に顔を背け、オミズさんは両手で顔を覆っています……でも隙間から見てるかな…。
高木刑事は視線を向けてますが、震えながら茫然自失といった表情です。
「凶悪犯にはお似合いの最後だな、そう思わないか高木刑事」
『……』
おや、反応がない…?これはいけませんね、早く次へ行きましょう。
「再計量する。その場を動くなよ」
部屋の重量測定はボタンの切り換えで任意に行えます。常時測定だと
再計量が済むと、扉の上にある電子掲示板が【OPEN】【許容範囲内】と表記が代わりました。
「次の部屋へと進むがいい。また15分の休憩をやる、有意義に使えよ」
ここでまた、一旦カメラ・マイクを切る指示を出します。
切れたのを確認して、音重さんが次のセッティングをしてくれます。
「ふぅ~…、ハチグレさんが脱落。ふふっ、順調に企画通り進んでくれてますね」
「途中主役が処刑されるんじゃないかとヒヤヒヤしたがな、オミズが居て助かった」
「想定内ですよ」
高木刑事とハチグレさん、以降のミッションをクリアするのにどちらが利用し易いかを考えれば、オミズさんの選択はハチグレさん処刑一択です。
「俺個人としては、ハチグレが生き残って最終ミッションで警察官と凶悪犯が協力してゲームマスターと戦う熱い展開も見てみたかったがな」
私が考えた企画では第三ミッションでハチグレさんが死ぬのがベスト。
ですが、ヤラセ感を無くす為にはメイン以外のパターンも綿密に考えておく必要がありました。
その複数あるパターンの内一つに、警察官であるか高木刑事と凶悪犯であるハチグレさんが力を合わせてラスボスの私と戦うというラストもありました。
ですが、
「力を合わせたところで私が勝つ結末は変わりませんから、熱い展開も直ぐ冷めますよ」
「それもそうだな」
どのパターンであろうと最終ミッションはゲームマスターである私との直接対決。そして私に勝利するパターンは想定していません。
第二ミッションで高木刑事が氷川刑事を助けて、鉄パイプを持って最終ミッションまでくれば、勝利出来る可能性も数%ありましたが、残りのメンバーでは限りなく零です。
『おいコスプレ女、この水飲んで良いのか?』
ミートボールさんが映っていないモニターに話しかけてきました。
まだ音重さんがセッティング中なので、私はマイクだけ入れるように指示を出し、
「構わないぞ、毒など入っていないから安心して飲むと良い」
答えてからまたすぐに切らせる。
「それにハチグレさんが第三ミッションを生き残っても、裏ミッションでのクリアを目指すと思うので、熱い展開になる可能性は低かったと思います」
それが高木刑事との首輪爆弾有る無しの差を公平とするもう一つの設定です。
ニートボールさんには裏ミッションを授けていません、理由は売却契約だからです。「親に500万で売られた」と言えば聞こえは悪いですが、「クリア出来ずとも遺族に500万を残せる」と言い換えれば他の3人より優遇されてますから。
「ハチグレの裏ミッションは【仲間外れを殺せ】だったな」
裏ミッションの内容はそれぞれ違い、他の出場者にバラすのはルール違反。
ハチグレさんには、こちらが指定した1人の見た目仲間外れの出場者をルールに準じて殺せと伝えています。
「はい。高木刑事を強引に殺そうとしたのは、クリアの可能性があると考えたからでしょう」
見た目仲間外れと言われたら、候補と考えれるのは、
最有力が唯一女性のオミズさん、次点で首輪爆弾をつけていない高木刑事。
ですがオミズさんは体重的に除外されてしまった為、ハチグレさんは強引な推測で高木刑事を処刑しようとしたのです。
「紅は裏ミッションを思考誘導の為と言っていたが、正直俺はややこしくなるだけじゃないかと思っていた。しかし結果は企画通り、俺のようなおっさんは驚き疲かれてきたぞ」
「ふふふっ、頑張ってください。まだ第三ミッションですよ」
裏ミッションは別にして、今回のデスゲーム型残虐拷問ショーは全6ミッション。まだ折り返し地点、これからが本番です。
『いえ、噂が真実だったんじゃなくて、噂は罠だったんじゃないかってアタシは思うんです』
おっ!こちらの話とは別にあちらも中々重要な話をしているようですね。
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