第81話 ゲームマスター ⑩


 第三ミッションはスタートさせても基本カメラ・マイクを付けたまま進行します。


「それで質問は何だ?ハチグレ」


 私も会話に加わって、誘導する必要がありますので。


『高木刑事だけ首輪をしていない。彼は時間切れになってもクリアなのか?』

「クリアではないが、先ヘは進める」

『何故だ?デスゲームの出場者は公平であるべきだろう』

「我は公平に設定したつもりだ。首輪の違いは高木刑事が主役だからと答えておこう」


 高木刑事は第一ミッションからおこなっているので主役ということは理解出来るでしょう。


『だったらオレ等は脇役かよ』

「ああ、その通りだ。名脇役になってくれることを期待しているぞ」

「クソコスプレ女の期待になんか応えるかっ!」

『おい、俺が質問してるんだ。余計な口を出すな』

『確かに無駄口を叩いてる暇はないぞ』


 裏切り者を見つけたとしてもすんなり処刑されてはくれません。水晶の処女クリスタルメイデンに押し込んむ時間を考えれば30分はとても短いです。


『ゲームマスター、主役が決まっている時点で不公平だと思うのだが』

「思いたいように思え、我がルールだ」

『だがデスゲームの掟に反するだろ』


 これは勘違いからの脅しでしょうか…?。

 

「この話題は時間の無駄でしかないな。他の者は質問しなくて良いのか?公平を期すために5人全員に質問する権利を与えてやる」


 不公平を訴たうならハチグレさんだけ質問していることも不公平ですからね。


『5人全員助かる方法は無いのか?』

「…第一第二を経験してまだそんな質問するか高木刑事。第三ミッションも全員で助かる方法はない」


 返答を聞いて憎悪の籠る目で睨んでくる高木刑事。主役は常に期待通り動いてくれますね。


『アタシも質問良いですか?』

「何かな?オミズ」

『アタシの体重50㎏なんですけど…、処刑された場合どうなりますか…?』


 ふふっ、当然そう聞きますよね。


「表記が【10㎏オーバー】と変わるだけでクリアとはならない。タイムアップになれば、他の首輪を付けた3人も首が吹き飛ぶ」

『ですよね…あの~、そういうことで、アタシ処刑してもクリアにはならないそうです』

 

 オミズの言葉を聞いてハっ!となる他4人。


「私の体重は75㎏だが皆は?」


 私からすれば第三ミッションの説明を聞いたら、体重確認は真っ先にする事だと思ますけど。


「オレは…まぁ、嘘ついても意味ねぇか、だいたい100㎏だよ」


 真っ先に答えるニートボールさん、体型的にどう見ても60未満じゃないですからね。

 他二人は少し迷っています。ですが見た感じだけでも正直に言った高木刑事とさして変わらない。嘘をつけばすぐに分かります。

 

「…俺は73㎏」

ワシは2ヶ月前の健診で76㎏だった」


 …ふむ、オミズさんの50kgも含め前情報と違いはありませんね。でも、


「我の計画では【50㎏オーバー】と表記されるはずだった」


 10㎏差で明らかな除外なんてつまらない事するつもりはなかったんですよ。1人情報が古かったようです。


「だがニートボールが部屋に入った際110kgと表記されていた。……お肉10%増量キャンペーン中だったとはな」

『お惣菜扱いしてんじゃねぇよ!』

『あ、ありがとうございますミートボールさん!』

『ニートボールだ…いや、岡本だよっ!感謝するならちゃんと名前で呼べや!』


 意外と良いツッコミをしてくれますねニートボールさん。


『とりあえず候補は4人に絞られたな』

『彼女が嘘ついてる可能性も…』

『嘘なんかついてません!』

『確かめようがねぇよな、処刑は一回しか出来ないんだから』


 オミズさんはスレンダーな体つきなので一か八かでも試そうとは思わないでしょう。


『待ってくれ……本当に1人を処刑するつもりなのか?』


 …皆にそんなことを聞くなんて、本当にバカですね高木刑事。


『処刑しなきゃ死ぬだろうがよっ』

『高木刑事は首輪つけてないから余裕なんだろうな』

『処刑したいわけじゃないが、今は仕方ないだろう?』

『だが…しかし…』

『だったらあんたが入れよ。それで俺達4人は生き残れる』

『それは……出来ない、犠牲になった氷川の為にも悪を捕まえなければならない』

『けっ、自分の命が惜しいだけだろが』

わし等と何も違わないな』

『警察は所詮ただの公務員だ。正義などではない』

『……そ、そんな…こと…』


 ほら、ボロクソ言われてる。心折れないでくださいよ、それは最終ミッションでの私の役目なんですから。


『高木刑事、裏切り者がいるなら悪です。まずは裏切り者を見つけましょう』

『……それしか、ないか』


 オミズさんは良い立ち回りしてくれますね、誘ってよかったです。


る気になったようで何よりだ高木刑事」

『…絶対にお前を捕まえてやる』


 ふふふっ、その意気で最終ミッションまで来てください高木刑事。


「そういえば、パチンカスだけまだ質問を聞いていなかった。何かあるか?」

『質問……』

『ないならないで良いだろ、時間が無駄になる』

『あ、さっき田中君が言っていた掟とやらはなんなのだ?』

「裏業界には色々と掟がある、その事だろう」

『なんで田中がそんなこと知ってんだよ?』

「それは本人に聞け」


 4人の怪しむ視線がハチグレさんに集まります。裏の掟を知っているという事は、裏切り者の可能性が高そうに思えますからね。


『俺が掛け子をしていたのは話しただろ、あれも一応裏の業界だ。当時デスゲームの噂も聞いた事がある』


 とはいえ、ハチグレさんはそこそこ頭の回る人のようですので、


『掟として「デスゲームは出場者が公平でなければならない」とも聞いていた。だから不公平を理由にゲームを中断させれないかを試したんだ』

 

 この程度は想定済みで今まで会話していたのでしょう。


「そんな掟はない。だから我は無駄と言ったのだ」


 本当に「デスゲームは公平でなければならい」という掟はありません。

 不公平が過ぎるとヤラセに思われて叩かれるということはありますが、今回のはデスゲーム型残酷拷問ショーなので関係ありません。

 それに、


「公平に設定したしたつもりとも言っただろう。不公平と考えるのはお前達が嘘をついているからだ」



 この話題は私が意図してのモノではないんですよね。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る