第80話 ゲームマスター ⑨ 三人称
『自己紹介して打ち解けてきたようだな』
モニターが付き紅が五人に話しかける。
『しかし嘆かわしいことだ。こうも嘘つきが多いとは』
その言葉にギョッとなる五人。
『嘘をついていないと言えるのは…、ニートボールだけだな』
ニートボールが誰だか分からずお互いを見回す。だが紅の視線は明らか岡本 匠に向けられていた。
「あん、オレのことか?」
『そう、我がつけたあだ名だ。丸い肥満体型と茶色いスエットでミートボールみたいなのとニートであることをカケてニートボールと呼ぶことにした。良いネーミングだろ』
「只の悪口じゃねぇか!」
『他の三人にもあるぞ。眼鏡の男はハチグレ、白髪混じりの男はパチンカス、若い女がオミズだ』
「ハチグレ……どういう意味だ?」
「パチンカスはあだ名と言えないのでは…?」
「オミズってまんまだし…」
酷いネーミングセンスに茫然となる三人。
『我はそう呼ぶ。お前等も遠慮なく使っていいぞ』
「使うかボケ!」
「反感を買う発言はよせ、爆破される」
今のところ一番冷静に見えるのがハチグレだ。
「おい!嘘とは何のことだ?私は嘘をついていない」
『名前、職業、経緯、罪。この中の一つ、または複数偽っているということさ』
高木刑事は本当に分からなかった。自分は正直に話している、嘘はついていない…つもりなのだ。
『さて休憩時間も2分を切ったな』
紅が指を鳴らすとモニターと反対側の壁の扉が開く。
『次の部屋へ進みたまえ』
扉が開いても暗くて中の様子が見えないのが、恐怖を駆り立てせ五人に二の足を無ませた。
『何をしている、時間内に次の部屋に行かなければ首輪が爆発するぞ』
「そんな事言ってなかっただろうがっ!」
『隣の部屋に行くぐらい10秒もかからんだろ。あぁ、そのまん丸な体だともっと時間掛かるのか』
「クソコスプレ女がぁ!」
怒鳴りながらニートボールが扉に向かって走り出す。他男3人も続くが、オミズだけは反対側に向かう。
「磯野さんっ!?何を…?」
「これ、使えるかもしれないから」
オミズが拾ったのは、高木刑事が怒りのままモニターに投げつけた鉄パイプだ。
「速く磯野さんっ」
「大丈夫、間に合います」
キャミドレス姿ながらも意外と足の速いオミズ、余裕を持って次の部屋に入る。
五人が入った瞬間部屋の扉が閉まり明かりがつく。
部屋の広さは350cm×260cm、だいたい六畳間と同じた。大人五人だと少し手狭に感じる広さなのだが、もう一人分スペースを第三ミッションで重要なアイテムが占めていた。
「これって…」
「実物は見たことないけど…」
「この形状は…」
「拷問などで使う…」
「
入って来た扉から見て右サイドに置かれているのは、実物を見たことなくても名前を知っているぐらい有名な拷問処刑アイテム、
『違うな』
左サイドにあるモニターに
『彼女は
一つは鉄製ではなくクリスタル製で中身が透けていること。
もう一つは針はついておらず、代わりに幾つもの小さい穴が開いていること。
『では第三ミッションの説明に入ろう。お前達が入って来たのと反対側にも扉があるだろう、次の部屋への入口だ』
確かに扉はあるがその上に電子掲示板で【CLOSE】【60㎏オーバー】と表記されていた。
『その部屋は巨大な体重計となっており、扉を開けるには表記通り60㎏以上減らす必要がある。減らす方法はモノを
ここで全員に嫌な予感が走る。
部屋には
つまりモノとは者、
『第三ミッションは1人を
確実に1人は犠牲となって死ぬということだ。
「そんなこと出来るわけ無いだろ!!」
即座に反対の意思を叫ぶ高木刑事。
高木刑事からすれば鯨町も氷川も殺されたという認識だ。しかし、今回は誰かを選んで殺さなくてはいけない。
『五人の中に裏切り者がいるとしてもか』
「裏切り者だと……」
『そう、裏切り者を見つけ出すことこそが本題と言える』
「…だがお前は仲間などいないと言ったいただろ」
『それは謎を解き明かす為のヒントだ』
紅の言葉には至る所に布石を敷かれている。但しそれがヒントだけとは限らない。
『タイムリミットは30分。60㎏以上減らせずタイムアップの場合、全員の首輪を爆発させる』
首輪をしてる4人からすれば、殺されない為には殺さなくてはならない。唯これだけだった。
『処刑は一度しか出来ない、ボタンを押した後に止めることは不可能だ。それと
『では早速…』
「待ってくれゲームマスター、質問がある」
ハチグレが開始を少しでも遅らしたい為に質問しようとするが、
『始めてから聞いてやる』
30分の時間をとっているので許されなかった。
『第三ミッションスタート!』
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