第4話 脱出ゲーム③


 私が三階に降りると早速近くの教室から物音が聞こえてきました。

 チンピラさんはバカだから上の階に来ましたが、普通は襲撃された恐怖からロックされてると分かっていても一階に下りる人が大半です。

 でも今三階の教室で鍵を探しているなら、状況を把握出来てる冷静な参加者が脱出口から遠い場所に鍵があると推測して上がってきたのでしょう。

 教室の窓は全て磨りガラスの為、中の様子はよく見えませんが、動く影から複数人いそうです。

 どうやって襲撃しましょう……、戸を壊すのは二番煎じですし、……ホラー映画みたいにガラスをナイフで引っ掻く…、いや、私はあの音苦手なので無しですね。

 などと考えていたら、ゆっくりの戸が開き男性が頭を覗かせる。

 目が合う。


「うあぁっ!?」


 また、驚かれました。今のは鬼がいるかもしれないと警戒していたでしょうに。


「な、何!?どうしたの?」


 中には女性もいるようです。


「鬼だ!さがれ!」


 おやおや、戸を開けてくれた上、自ら袋のネズミになってくれるのですか。

 教室の中に入ると男女二人、…他にはいないようですね。

 男性はNo.3『濃口醤油』、女性はNo.16『キャバ嬢』。参加者のあだ名は見た感じだったり職業に因んでることが多いです。濃口醤油は濃い目の醤油顔だから、キャバ嬢さんは職業そのままですね。


「堂本さん逃げないの?」

「…ああ、ここで倒す。鬼を1体減らせば動きやすくなる。木崎さんは端にさがっててくれ」

 

 誘い込んだつもりでしたか。


「ナイフならバットでも十分勝てる」


 廃校内には学校に因んだアイテムが複数置いてあります。

 バットはその中でも武器として使い易い良アイテム。

 バカのチンピラさんと違い勝算あっての言動をしてる濃口醤油さんの参加理由は、会社倒産で出来た借金の返済、30半ぐらいに見えますが社長だったのでしょうか…。


「JK相手ってのがやり辛いがな」


 デスゲームの参加者の中ではまともで優秀な人っぽいですね。

 ですが、統計的にデスゲームではまともで優秀な人のクリア率はかなり低いんです。

 理由はこれから見せましょう。

 私はナイフを抜くも普通に歩くように近づく。

 

「セーラー服着てるからってこんなところにJKなんてあり得ないわ堂本さん。男の可能性だってあるし、女だったとしてもマスクとったら絶対ブスよ」


 …キャバ嬢さんは後でボッコ確定です。

 キャバ嬢さんの言葉に納得したのか濃口醬油さんはバットを横殴りに振って来る。

 私はのけ反って紙一重でかわす。


1ワンストラーイク」

「なっ……ふざけんなよっ!」


 挑発ととったようで次は頭に向かて斜め上からバットを振り下ろす濃口醬油さん。

 私は屈んでまた紙一重でかわす。


2ツーストラーイク」


 これは挑発と言うより演出。宣告は必要でしょう。


「このぉっ!」


 濃口醬油さんはさらに大きく踏み込んで上段からバットを振り下ろす。それを半身になってかわしつつターンするようにして、


3スリーストラーイク。バッターアウト!」


 ナイフを延髄に突き刺す。


「ぐべぁっ!???……」


 バッターは三回空振りするとアウトですからね。

 ナイフを引き抜くと膝から崩れ落ちる濃口醬油さん、ピクピク痙攣してましたが直ぐにそれも止まる。


「まともで優秀な人って勝てる可能性がある状況だと勝負しようとするんですよね、それも正々堂々と」


 ナイフを持ったJKにバットを思った中年男性が勝つ可能性はあります。ですがそれは普通に考えての話です。


「あなたの言葉はあながち間違ってはいません。こんなところに普通のJKがいるなんてあり得ないですよねぇ」


 話かけているのにキャバ嬢さんは無視して逃げ出そうと戸に向かって走る。

 私はナイフを投げ飛ばす。


「きゃっ!」


 ナイフが脹ら脛を斬り裂き倒れるギャバ嬢さん。

 

「無視は酷いですね~」


 私は濃口醤油さんが持ってたバットを拾う、良いボッコアイテムが手に入りました。鬼が使ってはいけないというルールもありませんしね。


「ま、待って!交渉しましょう。5000万!私を逃がしてくれたら5000万払うわ」


 キャバ嬢さんは逃げられないと判断したようで交渉を持ちかけてきました。

 プロフィールを思い返してみると、キャバ嬢さんは強制参加者。今回のデスゲームは金目当てでの自主参加者がほとんどてすが、キャバ嬢さんだけは違うようです。

 強制参加させられる理由はいくつかありますが、今回は怨みからのようですね。


「悪事を働いたことを存分に後悔してください」

「ち、違う!私は悪いことなんてしてない!」

「デデ~ンっ、木崎アウト~!」


 笑ってはいませんが、嘘をついたのでバットでぶん殴る。

 

「ぃ痛ギャぁっ!……」

 

 腕が“ボキっ”といきましたね。

 キャバ嬢さんこと、木崎明美さんは確かに犯罪歴はありません。ですがそれは有罪にできなかっただけです。


 私はナイフも拾い、今度はキャバ嬢さんの耳を削ぐ。


「ひギィーっ!!」


 この方25歳という若さで二回結婚しており、その二回とも一年経たずで旦那さんが亡くなられているんです。それにより、多額の遺産金と保険金を得ています。明らか怪しいのに無罪。どうやらキャバ嬢さんは裏の業界と繋がりがあるようで、協力してもらって捜査の編み目を通る無罪殺人を成功させたようです。


「な、何でも、しますから、許して…」


 許しをこうキャバ嬢さんにバットでアッパースイング。


「ぐへぇっ!」


 ですが遺族の怨みを甘くみていたようですね。裏との繋がり突き止められ、逆にデスゲームという裏のやり方で報復されているのですから。

 私は死なない程度にバットで殴りナイフで削ぐ。苦しみ無惨な死に方を遺族の方も望まれているでしょう。ブスと言われたからではないですよ。

 

 ほどよくズタボロになったので、


「そろそら終わりにしましょう」


 キャバ嬢さんの髪を掴み、強引に頭を上げさせ首にナイフをあてる。


「最後に言い残すことはありますか?」

「……ひぁ、…ふぃ……」

 

 う~ん…、何を言っているのか分かりませんね、やり過ぎてしまいましたか。撮れ高的に一言欲しかったですが、諦めましょう。

 キャバ嬢さんの首を深く斬り裂く。血が飛び散る様子を少し見てから掴んでた髪をポイっと捨てるように放す。

 バッター濃口醤油の瞬殺と悪のキャバ嬢虐殺でそれなり撮れ高になったでしょう。


 さて、次の獲物を捜しに行きましょうか。

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