第3話 脱出ゲーム②


 何故私が【鬼】をしているかと言うと、このデスゲームを運営している企業に雇われているからです。

 歳は18で正真正銘JK、セーラー服は企業が用意してくれたものですけど。スカートが短いんですよね。

 何故雇われるようになったかはまた後日として。今は目の前のチンピラさんに集中しましょう、この状況もライブ配信されてますから。


 チンピラさんの参加理由はギャンブルで出来た借金の返済。倍率は7番目で丁度真ん中ですね。


「へ、へへ…、いきなり現れて驚いたが、お前を倒せば1000万なんだ。むしろラッキーだぜ」


 現れたのはチンピラさんの方ですけどね。私は屋上が開始までの待機場所でしたから。

 しかし…、参加者が居たのは二階の教室。用務員が襲撃してまだ数分、一目散に屋上に駆け上がって来たことになります。何か考えがあるのでしょうか?


「テメェを倒してクリアすれば、え~と…、4000万だ!借金返しても一生遊んで暮らせるぜ!」


 ……4000万で一生暮らすは無理でしょう。

 チンピラさんは見た感じ30歳前後。

 昨今一人暮らしの生活費は平均で16万ぐらい掛かるそうです。

 平均的普通な暮らしでも4000万では20年。借金を返せばもっと短い。遊んで暮らせば10年ももちません。


 チンピラさんが屋上に来たのは「バカと煙は高いところが好き」というやつですか。


「死ねやコラァ!」


 殴りかかってくるチンピラさん。ナイフを持っててもJKなんかに負けない自信があるのでしょうか…。

 私は拳をかわしつつ、腰に提げたナイフを抜きチンピラさんの腕を斬りつける。


「痛ぃでぇ~!!?ナ、ナイフだと!?そういやモニターでも持って…」


 バカだから忘れてただけですか。バカにこれ以上尺を取るのはよくありませんね。

 私はチンピラさんの顔面を蹴り飛ばす。


「ぶへゃっ!」


 ライブ配信なのに短いスカートでハイキックなんてパンツが写っちゃう!

 と、思いましたか?

 安心してください履いてますよ、スパッツを。


 不様に倒れたチンピラさんに馬乗りになり、ナイフを振り上げ、

 

「生まれ変わったらバカが治ってるといいですね」

「や、止め…、うぃぎゃぁーっ!」


 容赦なく胸に突き刺す。


「痛ぃいいぃ!、だ、もぉ…、うげぇぁっ!」


 引き抜きまた刺す。


「ぃ死、死にひゃく…あぎゃぁっ!」


「ぉお、う、ぅぁ…、げぁぅっ!」


「ぅ、あぁ…ぃぅ…、うぅっ…」


       ・

       ・

       ・

 

 ふう~、刺している最中退屈なのでプロローグを語ってしまいましたが、まず一人目。

 JKがチンピラを滅多刺し。バカでしたが中々の撮れ高になったでしょう。

 鬼は参加者を殺すのが役割。

 ですがこれは仕事なので、

 

 

「さて、次の撮れ高を作りに…」


 ポケットのスマホが震える。取り出して画面を見ると上司の名前。…変ですね、ライブ配信中に。

 

「もしもし、何ですか?渡辺わたなべさん」

『お忙しいところすみませんくれないさん』


 紅は私の偽名です。この業界では、偽名で呼び合うのが慣例となっています。音重も渡辺も偽名。


『大変申しにくいのですが…、スパッツを脱いでください』

「…渡辺さん、セクハラです」

『い、いえっ、違うんです。チャット欄が「スパッツを脱げ!」の嵐になってまして』

「そんなの書かしとけばいいじゃないですか」

『他にも「詐欺だ!」「金返せ!」などの書き込みも』

「詐欺なんて何一つしていませんよ。エロがメインの動画ではないのですから」

『上からも指示がきてるんです、スパッツ脱いでくれないと僕の首が飛ぶかもしれないんですよ~』

「たかがスパッツで何故そんなことに!?」

「お願いしますよ~、報酬に色を付けれるように交渉してみますから」

「……はぁ~、わかりました」

「本当ですか!ありがとうございます!出来ればいいカメラアングルの所で…」“ブツっ!”


 ろくでもない指示を最後まで言わせず通話を切る。

 この仕事、公然とハラスメントがあるんですよね。私は18の乙女なのでエロNGだと何度も言っているのに!

 仕方なくスパッツを脱ぎ捨て、私は参加者を探しに三階へと降ります。

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