第641話 甘えたい時もある4

「で、楓君その後の2人は――」


俺の予想通り。海織はまだ何かペラペラと話す気満々だったらしい。でも――俺は良そうで来ていたのですぐに口を挟んだ。


「はいはい。海織、本人らが居ないところでいろいろ話さないように」

「ちなみに沙夜ちゃんには口止めされてるんだよねー。恥ずかしいからって」

「何故に海織がそのことを知ったのか――というのも気になるが……って、口止めの意味を理解してないと見た。うん」


皆さん。お気をつけてください。このお方に口止めって言葉はありませんよ?はい。本当は斎宮さんに注意――とか言ってあげたいんですけど。俺がいきなりその話をすると――まあいろいろ感じ取られる可能性があるので。その場合――海織に斎宮さんが何かする。というより――俺に被害が来る可能性があるのでね。はい。今回はここでアナウンス。絶対誰も気が付かない。伝わらないがね。


「これで楓君も知っちゃったからー、私が拗ねたらそれがバレるかもねー」

「どんな脅しだよ。ってか、聞いてもないのに勝手に聞かされたのですが……」

「えっ?楓君が何があったか知りたいってしつこく聞いて来て、私が襲われかけて、仕方なく知ってること白状した。でしょ?」


超笑顔で俺の記憶にはないことをペラペラ話す海織……うん。この子ダメだ。暴走中だ。今日の海織は何か大変ご機嫌らしく――俺は知りたいとは一言も言ってないし。そもそも、今日の昼間に、何か柊が言いかけて、斎宮さんに飛ばされていたなー。とか追いかけっこしていたなー。って、時はまあ何があったかちょっとは気になっていたが。その後は、今は海織に言われるまで俺はそのことを綺麗に忘れていたからね。うん。あと、海織を襲った証拠もありませんね。って――証拠はないって。どちらの証拠もないから俺――不利?えっ……いや、マジで何もないですよ?今はなんか……えっと、そういえば、海織にくっつかれてますが。それまではいつも通り普通に過ごしてましたからね?うん。誰か信じて。お願い。


――まあもちろん俺の願いなどは、誰にも届くことはなく。ってか――なんでだろう。海織が全く俺から離れないんですが。ずっと先ほどから窓際で海織をおんぶする形で話している俺だった。うん。ってか。相変わらず軽すぎませんかね?食べているはずなのだが――今日の様子を見るとね。うん、ってか普段もか。海織の身体は謎だ。でも、軽いのにちゃんと成長してい――ってこのことは触れなくていいな。絶対海織わざと。しがみついている感じだし。うん。触れたら負けだ。


「あの。嘘。オンパレードの海織さん?」

「何?嘘オンパレードの楓君?」

「……なんという返し」

「にひっ、ちょっと明るい時間から襲われちゃいましたー」

「こらこら、誰も聞いてないとは思うが。変なことをさらに言わない。ってか。ってのはおかしい。うん。なんか毎日暴れている――いや、なんといえばいいのか……」

「おお、楓君が言い訳を頑張って考えてます。はい。皆さん。聞いてあげてね」

「——めっちゃ遊ばれてる」


そろそろ一度現状。現在を確認しておこうか。ここは海織の家。うん。室内には――2人しか居ない。うん。誰かが隠れている様子ももちろんない。うん。海織はまだ適当なことを言っているだけだ。よし。大丈夫。などと俺が思いつつ周りを確認した時だった。


ピンポーン。


「あっ。誰か聞いていたのかな?にひっ。私にお助けが来たのかな?」

「えー」


突然なるインターホン。いやいやタイミング良すぎて怖いんですが――って、この時間に誰でしょうか?20時を過ぎたところ――と、俺が海織の部屋の時計を見つつ思っていると。


「はーい」


海織が俺の背中から降りて、玄関の方へとトコトコと向かったのだった。


ちなみに俺もすぐに一応海織の後を付いていく。いや、こんな時間という時間でも普通の人からするとないのかもしれないがね。なんか一応――海織女の子。うん。本来なら一人暮らしで夜の時間に訪問者ですからね。などと俺は思いつつ追いかけると――いつの間にか海織の手にはハンコが握られていて――あれ?もしかして――お荷物ですか?と俺が思っていると――ビンゴだった。


「ありがとうございましたぁー」


元気なお兄ちゃん。海織に荷物を渡すと軽い足取りで去っていったのだった。


「来た来た。指定時刻通り。いい時に来たねー」

「——」


海織は玄関にて荷物を受け取り――って、そこそこ大きな段ボール箱だが。海織は軽々持っているので――中身は軽いものみたいだ。って、なんかすごく嫌な予感しかしないんですが……。


荷物を受け取った海織はそのまま室内へ戻って来る。後ろに居た俺は押し戻されるようにリビングへと戻った。

リビングへと戻って来ると海織は今届いた段ボール箱を床に置く。そして俺の方を見て――。


「さあ楓君。この中身は何でしょうか?」

「はい?」


いきなりそんなことを言い出したのだった。ちなみに箱には宛名が貼ってあるので、そこに中身のヒントはあるだろうな――と思いつつチラッと見ようとすると――。


――ビリッ。


……宛名剥がされた。うん。バレたか。って、海織の行動が早い。いや、俺の行動が読まれすぎているのか。とりあえず宛名が剥がされてしまったので、箱に残ったのは、時間指定のシール。19時21時ってそんな時間設定もあるんですね。


「楓君カンニングは減点だよー。にひひー」

「——そんなことをする予定は無かったって――宛名にはヒントしか書いてないでしょ」

「ダメダメー。はい。答えは?」

「いや、ヒントなしでは、わからないでしょ」


今俺がわかっていることと言えば――そこそこの大きさの段ボール箱だが。海織が軽々1人で持てる物。という事しかわかってない。このクイズ――当たる人居るのかね……俺はいないと思う。

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