第632話 傘3

「謎ですね」

「謎でしょ」


現在は雨に濡れた日の翌日午後。場所は俺の部屋で、俺は七菜と話しているところである。何について話しているかって?まあ――ぶっ倒れた姫に関してですよ。姫というのは――かもだが。うん。まあいいや。


「ってか。加茂先輩のところで普通に寝ている宮町先輩というのも――ですが。昨日私が帰ってからずっと寝てるんですか?」


俺の部屋の寝床の方を見つつ七菜が聞いてくる。


「海織が――俺の部屋に居るのは、もういつもの事と思ってくれればOKかな。かなり前から住みつかれてるし。ってか、昨日に関しては、帰らさなくて良かったかな。と思ってるけど……ちなみに横にはなってるけど――無駄に元気だからね。今日も朝からちゃんと起きちゃうし。熱下がってないのに」

「さらに謎――ってか。とりあえず言えることは――先輩方もう一緒に住んだらいいのに」

「あはは……」


俺と七菜がそんな話をしていると、1人仲間外れ状態の海織の声が俺の部屋の寝床からしてきた。


「楓君。七菜ちゃん。私も会話に混ざりたいよー。元気なのに」

「海織は大人しく寝なさい。熱下がってないでしょ。悪化されてもだから」

「むー」


ベッド。梯子の上から、おでこに激冷えみたいな名前の多分通常の物より冷たいであろうシートを貼っている海織が、つまらなさそうにこちらを見ながら話しかけてきた。顔はまだ少し赤いな。ちなみにこの後すぐ海織が再度熱を測っているみたいだったが――いや、七菜と話していたら体温計の音が聞こえていたのでね。でも――「うー、なんでー」という声が聞こえてきていたので……下がりきっていないらしい。まあ見た感じは元気そうなんですがね。高熱というより多分今も微熱?かな。うん。少し高いくらいなんだと思うが――ホント無理させて悪化されてもなのでね。という感じで――まあ海織は熱が下がるまで大人しくというやつだ。

そうそう、激冷えバージョンみたいなのを海織に貼ったのは――まあいろいろな意味を込めてである。昨日の夜に海織が急に発熱発覚。それから俺が薬局へとちょっと出かけまして――「あっ、なんか冷たそうなある。これ貼れば――ちょっと変なことを考えないようになるかも」って願いでね。冷たそうなのを貼ってやった。さすがに貼った際に――「冷たい!?なにこれ!?」と海織がなっていたので……少しは効果があったかもしれない。


「あっ、加茂先輩。飲み物帰りに買ってきましたよ」

「あっ、そうだそうだ、ごめん。俺が行けばいいのに頼んじゃって」

「いえいえ、どうせ私は外に出ていたので」


俺が昨日の事を思い出していると、七菜が袋をこちらに渡してきた。中には飲み物が入っている。いや、俺のところにあったのが切れましてね。その時たまたま七菜から連絡ありまして――その話をしたら七菜が買ってきてくれるということになり。ちょっと七菜におつかいを頼んであったのだった。俺は飲み物を受け取り。そのまま海織の方へと行く。


「海織」

「うん?何?もう起きていい?」


俺が話しかけると目をキラキラさせていたが――うん。違います。


「熱まだ下がってなかったでしょ?」

「——ちょっとだけだよ。もう大丈夫」

「そのまま今日はゆっくりどうぞ」

「——はーい。にしてもなんで私が風邪ひくかなー濡れてないのに」

「日頃の行いですね」

「むー」

「宮町先輩。大丈夫ですか?」


俺と海織が話していると、七菜も近寄って来た。


「元気なのに楓君が過保護なんだよー。どう思う?七菜ちゃん」

「でも宮町先輩ちょっとまだ顔赤いですよ?」

「それは楓君が優しくて嬉しいからだよ」

「……」


この子――何を突然さらっというのかな?


「加茂先輩?これはいつものイチャイチャのやり取りですか?」

「ノーコメント。ってか。そろそろ海織に貼っているシート取り帰るか。そしたらまた頭冷えるでしょ。ぬるくなってきたんだろうね」

「楓君。これめっちゃ冷たいよ?頭割れちゃうくらいに」

「だから良いんです」

「そんなに冷たいんですか?」


海織のおでこに貼ってあるシートを見つつ七菜が聞いてきたので――。


「七菜。1箱買ったから1セットあげるよ。2枚入ってると思うから」

「えっ?良いんですか?」

「これから暑くなる時に貼っても良しみたいだったから使ってみたらいい。冷凍庫に入れてから使うとさらに良いらしいよ。なんか凍らないみたいで」

「マジですか。それキンキンじゃないですか。でも――気になったので、ならもらってそのうち試してみます」


俺は海織に再度渡すために持ってきたシートの一部を七菜にも渡した。ってか。激冷えみたいなことが書いてあるので――俺もどんなのか気にはなっているんだがね。でも今は必要ないので――とか思っていると。


「——えい」

「冷たっ!?」


海織が今まで貼っていたシートを俺の腕に貼って来た――ってもう何時間も付けていたはずなのに――冷たい。効果すごいな。と思いつつ。


「海織。いきなり何するの」

「楓君が取り替えてくれるみたいだったから。ぬるくなってきたのを楓君にパスした」

「——この冷たさをぬるいということは――海織。熱あるね。はい。貼って横になりなさい」

「七菜ちゃん。楓君が超過保護―」

「なんか見ているこっちがもやもやと言いますか――ラブラブを見せられている気がしてきました――なのでそろそろ私は帰りましょうかね」

「七菜ちゃんが風邪ひいたら24時間体制で看病するからね」

「——加茂先輩。宮町先輩高熱なんじゃないですか?」

「七菜を可愛がっているのはいつもの事かと――」

「風邪ひいたら私大変じゃないですか――健康第一にします」

「ははは、まあ健康が一番だね」

「ってことで、宮町先輩お大事にです」

「あっ、うん。わざわざありがとね」


七菜が帰る際海織と話していたが――うん。海織、見た感じは普通に元気なんだよな。と俺が思いつつ2人のやり取りを聞いていると七菜は荷物を持ちお隣。自分の部屋へと帰って行ったのだった。


ちなみに、翌日の朝には海織。いつも通りになりましたとさ。全快でした。まあ熱が下がったから――ぶっ飛んでいる感じはなくなった――かな?いや、変わってない?うーん。まあいいか。うん熱が下がったから良しにしましょう。


「楓君楓君。私も過保護になろうか?」

「——」


まだ熱あるのか?おかしいかな?ってことでちょっと体温計で熱を測ってもらったら――全く問題ありませんでしたと。これが海織です――って一緒?うーん。まあでも顔は赤くないし――うん。わからんがまあいいか。元気が一番です。はい。

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