第608話 彼女は待っていた
現在の俺達3人は海織の実家最寄り駅へと向かうために、人混みに飲まれながら――名鉄名古屋駅からちょうど駅へと入って来た急行電車に乗り――海織の実家最寄り駅へと向かっているところである。
名鉄名古屋駅ではかなりの人が居て、飛び乗った急行電車の車内もなかなかの人だったのだが。途中の停車駅。金山駅。神宮前駅などに電車が止まって行くと。少しずつ周りに余裕が出来ていた。
そうそうちなみにホント来た電車に方向だけ確認して乗ったが。乗った電車で海織のところの最寄り駅まで行けることが判明したため俺達3人は特に乗り換えとか気にすることな電車に揺られているところである。
「加茂先輩。あとどれくらいですか?」
しばらく電車に揺られていると。七菜が聞いて来た。
「あー、15分くらいかと」
「了解です。って、にしても途中までは朝のラッシュ時みたいな人でしたね」
「名古屋駅はいつものような気がする――空いている時間というのを見たことないような――」
ちょっと考えながら俺はつぶやくが――うん。ない。空いている。ガラガラのあの駅を俺は見たことない気がする。
「深夜帯とかは――まあ逆に居ますかね?」
「どうだろうね?乗る機会がないからね。ちょっとわからないけど」
「そういう場合楓くんなら調査してくるんじゃない?」
突然俺と七菜の会話に入っている斎宮さん。確かスマホをいじっていたと思ったのだが――何か楽しそうな会話をしていると察知したらしい。
「何で斎宮さんは夜中に俺を外出させようとしているのか」
「そういう事好きそうな気がして?楓くん好きそうじゃん」
「ははは……」
「あー、でも確かに加茂先輩なら――ですね。時間があれば調べてそうです」
「俺はどういう見方をされているのだろうか――」
そうそう急行電車の車内では、はじめのうちは3人ともドア付近に立ち席だったのだが途中から車内の人が空いて来て――俺たちはロングシートの座席に座り話しながら移動となっているのだが――うん。ちょうど話し出したから確認しておこうか。
「あのさ」
「どうしたの楓くん?」
「なんですか?」
「何で俺2人に挟まれてるの?」
はい。現状説明。俺の左側七菜。右側斎宮さんです。はい。説明終わりです。
「ハーレム楓くん作り?」
「斎宮さん――何それ」
「いや、斎宮先輩の横だとすぐにもたれてくるので、ちょっと加茂先輩を間にと」
「——だそうですよ?斎宮さん」
「えっ。枕七菜ちゃんじゃなかったの?」
「枕じゃないです。って何ですか。それ」
七菜も大変だ。と思っていると何故か俺にもたれてくる斎宮さんだった。
「じゃあ楓くんにもたれていこうっと。あっ。楓君大丈夫。海織ちゃんには伝えるから。報告怠らないからね」
「——あれ?普通秘密とかになるんじゃないですかね?伝えるって――パターンあるの?あれ?」
なんか斎宮さんおかしなこと言ってません?普通——こういう事って隠したがらない?違うの?まあここの3人仲良しですから――そして俺を物のように扱いますから――って、何をしているのか。などと俺が思っていると……。
「あっ、楓くんは隠したい子か。でもそれなら逆に広げないと。じゃ、七菜ちゃんが楓くんに甘えていたことを海織ちゃんに言いふらして――」
「甘えてませんよ!?ってなんでいきなり私が出てくるんですか」
「お2人とも車内ではお静かにです」
「いやー、この後が楽しそうだね。楓くん」
ポンポンと俺の肩を叩きながらそんなことを言ってくる笑顔のお方――うん。ホント今の状況が楽しいようです。
って個人的には――柊を捕まえておいた方が良かったか――と思ったりしているところです。はい。柊今どこにいるのかな?ってそういえば、昨日は柊用事。山登り?と言っていた気がするが――今日は空いていたのでは?あれ?今日も出かけているのだろうか?うーん。聞いてないからわからない……俺はそんないろいろなことを思いつつ。
「この先不安しかないですね」
そんなことをつぶやくと。似たような雰囲気。感じで七菜もぼそりと――。
「——今日こそは普通に寝たいです」
呟いていたのだった。ってか、今の七菜のセリフから考えられることは。
「七菜。昨日は寝れなかったのか」
「あっ。楓くん昨日の事聞きたい?」
俺が七菜の方を見つつ聞くと。何故か斎宮さんが俺にもたれるようにそんなことを言ってきたのだが――まあ七菜がOKするわけもない雰囲気の話だったので。
「斎宮先輩。お静かにです」
「楓くん盾があるからね」
「人を盾にしないでください。って、再度ですが車内ではお静かにです」
「まあ海織ちゃんにも話したいからね。もうすぐ着くだろうから着いたらにしようか」
「話さなくていいですから。って、特に何もなかったじゃないですか」
「一緒にお――」
「勝手に変な過去を作らないでください」
「即止められた。楓くん七菜ちゃんが厳しい」
「——何をしているのか。って、斎宮さん。のしかからないで」
はい。ちょっと俺の両サイドが騒がしくてすみません。はい。2人とも友人宅へと泊まりに行くのが楽しみみたいで――はい。よし。言い訳準備良し。
えっ?それより黙らせた方が早いと?まあそうだが――いろいろなパターンを予想しておかないとね。って、なんやかんやと話していたら俺達の乗っていた急行電車は海織の実家がある最寄り駅へと到着したのだった。
ドアが開くと俺達はホームへ。
「着いた。お腹空いた」
降りてすぐの事。斎宮さんはそんなことを言いながら背伸びをして歩いている。
「斎宮さんもうすぐ到着すると思うのでもうしばらく我慢を」
「加茂先輩。次はどこへ行けば宮町先輩居るんですか?」
「えっと――一応名古屋駅を出てすぐに海織には乗った電車を伝えてあるから――多分お迎えが――」
3人で話しつつ改札を抜けて駅前へと抜けると――。
「あっ。2人とも。2人とも。海織ちゃん発見!」
一番先に海織を見つけたのは斎宮さんだった。
「あっ。来た来た。おーい。みんなこっちこっち」
斎宮さんが小走りで向かって行く先には――かわいい軽自動車の横に立ってこちらに手を振っている海織だった。
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