第588話 お寝惚け電車4

大晦日の夜。俺と海夜はちょっと除夜の鐘でも聞きに――ではなく。

電車の音を聞きに向かっているとでも言うのか。現在伊勢川島駅へと向かっているところである。


乗る予定の電車は伊勢川島駅22時54分発の近鉄四日市行きの普通電車。これは終夜運転ではなく。通常の土日ダイヤの電車である。


「やっぱり大晦日だと、この時間でもまだどの家も明るいってか。ちょっといつもよりざわざわ感あるね」

「だね。すれ違う人も居るし。まあ今日は晴れているからね。神社とかみんな向かってるんじゃない?」

「そんな中で電車乗ることがメインの私たちだねー」

「まあ、そうなりますね。って、海織はそれでよかったの?」

「うん。楓君とぶらぶらしているのは楽しいからね――今日は2人だし」

「うん?2人――まあ2人か。そういえばみんな今日は静かだね」


ふと俺は今日に関して言うと、柊も斎宮さんも、七菜も連絡を取ってないな。と、今更だが思い出した。

まあ大晦日それぞれいろいろな過ごし方があると思うのでね。うん。


「たまにはちゃんと楓君を独り占めしないとねー」

「いや、基本海織いつもいる気がする。むしろ。他の人とかと出かけたりが少ないのが気になるレベルで――」

「それを言ったら楓君は――あー、そうかそうか。最近の楓君は女の子に囲まれているからね。問題ないのかーなるほどなるほどー」

「何を勝手に納得しているのか。ってか。海織がいろいろ種をまいている気がしますが――」

「えー、でも楓君もいろいろな人に振り回された方が楽しいでしょ?」

「振り回されるというのはなんかおかしい気がするんですが――」


海織とそんな会話をしていると伊勢川島駅へと到着した。

そして改札を抜けて、ホームで少し待っていると――普段はこの時間の電車に乗ることがないのであまり乗車率とか言うのはわからないのだが。

俺と海織が乗った電車は満員ではないが。席が半分弱くらい埋まる乗車率だった。初詣とかで人がやはり動いているみたいだった。


それから車内でも海織といつも通り雑談をして――。


23時03分近鉄四日市駅に到着した。


「えっと。ここから名古屋でしたっけ?」

「ですです。乗り換えだね。行こう」

「元気だな」


俺と海織はもちろん四日市からでも乗れる特急なのだが――始発駅まで向かうと決めていたため。近鉄四日市駅で一度名古屋方面の電車に乗り換えた。


近鉄四日市駅23時09分発の名古屋行き急行に俺と海織は乗ると――30分ほど電車に揺られて――近鉄名古屋駅に23時42分に到着した。


「本当に来たよ。名古屋」

「おお、そこそこ人居るね」

「居ますね。まあまだ最終電車もあるけどね」


それから俺と海織は00時00分発の電車に乗る予定だったので、特急券を買いに行きまして――ちなみに普通に買えました。

その後はまだ少し時間があったため。水分などをちょっと購入して――近鉄名古屋駅の特急乗り場へと移動した。


特急乗り場ではちらほらとカメラを持っている人の姿や。子供の姿もあった。


そして、近鉄名古屋駅00時00分発の宇治山田行き特急がホームへとやって来ると、珍しいからか写真を撮る人がいて――ちなみに俺も撮ってました。海織も電光掲示板とかいろいろ撮ってましたね。

って。そうか。電光掲示板。うん、近鉄名古屋駅00時00分発宇治山田行き特急この文字は見れることなかなかないからね。撮っておかないとである。

発車までの数分ちょっとバタバタしつつも。それから車内へと俺と海織は乗り込んだのだった。


ちなみに、発車と同時に新年である。座席に座り少しすると――発車ベルが鳴り。近鉄名古屋駅00時00分発の宇治山田行き特急が定刻通り発車したのだった。


「あっ、放送がお正月バージョン?」

「あー、だね。しまった。せっかくだからちょっと録音とかすれば――って無理か」


車内放送も少し違ったため。海織とともに聞きながらそんな話していると――。


「楓君も楽しんでる楽しんでる」

「いや、珍しいとね」

「そういえばこういう時の放送って――カンペ?って言うのかな?そういうのあるのかな?お正月バージョンの案内みたいなの」

「あー、どうなんだろうね」


うん。どうなんでしょうか?俺はちょっとわからないのだが――でも車掌さんがその場で言っている――のか。ちゃんと作ってあるのか……うーん。

俺がそんなことを考えていると。海織が思い出したかのように話しだした。


「あっ。楓君。あけましておめでとう」

「あっ。そっか。名古屋駅出たもんね。なんか忘れてた。あけましておめでとう」

「いつもならカウントダウンだけど。今日は全く違うからね。なんか変な感じだけどこれはこれでいいね」

「普通ならテレビの前とかだからね」

「これだと新年からちゃんと動いてます!って感じだね」

「そのうち寝そうだけど」

「まあね。電車の揺れは気持ちいいからね。おやすみなさい」

「いきなり寝るの?」


俺の方へと海織がもたれて来て――うん。ニヤニヤしているので演技ですね。このお方全く眠くないみたいです。


はい。今年の新年は電車の中。いやー。急な事だったが。終夜運転に乗れるとはですね。はい。いい年になりそうです。

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