第573話 混ぜるな危険8
買い物へと行っていた柊と七菜が俺の家へと帰って来た。というのが現状であるのだが――。
「————えー!?何で!?」
突然斎宮さんの悲鳴?に近い声が玄関から聞こえてきたのだった。うん。もう見なくてもわかるというか――なんかとっても嫌な予感がする。などと俺は思いつつ。玄関の方をちょっと覗いてみると――。
「——すみません」
七菜がちょうど頭を下げていた。
「いやー。気が付いたら帰りの電車でよ。もう駅だったしとりあえずそのまま帰って来た」
「馬鹿柊じゃん!」
「俺だけかよ」
「——沙夜ちゃんあたりだね」
「こんなの当たらなくていいー。マイローストビーフ……」
「……」
明らかにトラブルが起こったようだった。って――海織の斎宮さんが当たりって――まさかね。うん。まさか――そんなことないでしょ。などと俺は少し前に3人で話していたことをちょっと思い出しつつ。俺も玄関へと移動してみて声をかけた。
「——どうしたの?」
「楓くーん。ローストビーフが不在」
俺が声をかけるとテンション駄々下がりの斎宮さんが返事をした。
「不在?えっと……売り切れ?なかったってこと?」
あっ。なるほど。その可能性もあったか。お店でローストビーフを取り扱っていても、今日の分が売り切れていたら――そりゃ買えないか。時間的にも――まあ夕食に。って。そもそもローストビーフって、たくさん売っている物だっけ?などと俺が思っていると――。
「加茂先輩もすみません。ストーカーが居まして――逃げていたら。ここに帰ってきていました」
「……はい?ストーカー?って、えっ?大丈夫だったの?」
いきなり物騒というか。付け回されたの?などと俺は一瞬だけ七菜の心配をしたのだった。
一瞬だけ。
ここ重要。一瞬だけ思った俺だった。
何故に一瞬だけかって?だってさ。七菜は2人で買い物に行っていたのでね。それも男と。うん。それなのにストーカー付きまとわれたということは……考えにくいというか。そりゃ全くないとは言えないが――ね。この今玄関に立っている2人の最近の関係を知っていると――すぐにいろいろ繋がった俺だった。
ちなみにだが。海織は既に状況を把握しているらしく。苦笑いしつつも――まあうん。いつも通り楽しそうな雰囲気を出している。まあわかるとね。何してるのというか。呆れるというか。ここまで来るとすごいというか――うん。面白いでもいいかもしれない。
多分だが――七菜と柊。2人で追いかけっこ状態だったんだろうからね。そして何も買わずに帰って来る?かな。うん。 コントというか――お笑いでもしたかったのか。まあ確かに海織を楽しませたみたいだが――斎宮さんは完全に魂が抜けた状態。
これは――おにぎり準備必須かな?などと俺が思っていると海織が話しかけてきた。
「楓君楓君」
「うん?」
「とりあえず――お腹空いてきたし。おにぎりだけでも作ろうか。おかずに関しては白塚君にコンビニまでダッシュしてもらおうよ」
「それがいいか」
「あのー。楓に宮町さん?俺――ダッシュするの?」
「「するの」」
「——仲の良さを見せつける完ぺきな一致で返事してきたよ」
「まあ、柊いってらっしゃいかと。斎宮さんが干からびたようになっちゃったし」
「沙夜はそれくらいの方が楽——ぐはっ……」
「……ご愁傷様」
柊のお腹付近にアッパー?というのかな?玄関にしゃがみ込んでいた斎宮さんが立ち上がる勢いでそのままパンチを繰り出していた。なかなかの攻撃力だったらしく。柊は――悶絶中?かな。息は――出来ている様子。うん。大丈夫だろう。
「……海織ちゃーん」
「はいはい。沙夜ちゃんとりあえず中行こうね。七菜ちゃんも」
「あっ。はい……すみません」
「大丈夫大丈夫。楓君が今から晩ご飯作ってくれるよ。この何もない状況でも」
「海織。何もないってわかってるのに無理難題やめて」
「にひひー。はいはい。楓君は中だよー。あっ、白塚君行ってらっしゃい」
「……」
「柊はまだ返事が出来ないと」
「——じぬ……」
「生きていて安心したよ」
それから柊は雨の中再度コンビニ目指して歩いて行ったのだった。うん。まだちょっと攻撃されたところは痛そうだったが――うん。一応コンビニの方角目指して歩いて行った。
俺はというと――その後おにぎり作りとなった。うん。アツアツだよ。熱いよである。
ってか、ホント単なる塩むずびなんだが――と、思いつつ作っていると。
「あの――加茂先輩」
「うん?どうしたの七菜?」
先ほどからしょんぼりしていた七菜が手に何かを持って俺のところへとやって来た。
ちなみに七菜は柊が出かけてすぐ後に、一度自分の部屋に戻っていた。
「えっと、海苔なんですけど使いますか?たまたま焼きのり買ってあって――」
「おお、おにぎりらしくなった。ありがとう七菜」
「いえ、1人の時はご飯だけより海苔があると――で、最近買っていたので」
「1人だと楽したいからね」
「はい。ご飯のお供があると楽ですから。ちなみにキムチとかならありますが――要りますかね?」
「あっ、それはあるといいかも。マジで俺の家――物がないから」
「じゃあ、ちょっとある物持ってきます」
「助かる」
「いえいえ、私がやらかしたので――何してるんだろう」
「まあまあ」
それからすぐ七菜が自宅にあったキムチやふりかけを持って来てくれたため。塩むすびオンリーの夕食からは回避されたのだった。
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