第574話 混ぜるな危険9

「あとは、柊が帰って来るのを待つだけか」


俺は簡単にだがおにぎりを準備して、部屋へと向かうと――女の子3人が座り。うん。斎宮さんをなだめていた。マジで斎宮さんはローストビーフを食べたかったらしい。


「がっくりだよー……」

「沙夜ちゃん。白塚君が何か別の物見つけてくるよ」

「——すみません。ホント何をしに行ってきたのか……」

「七菜ちゃんは悪くない。うん。柊が悪い。100%ストーカーが悪い」

「いや――まあ確かに付きまとわれましたから――はい」

「……」


何をしても柊が悪いになるこのすごさ――って、柊もどれだけ七菜を付け回していたのか気になるが――などと思いつつ俺が3人の近くに座ると――。


「そういえば七菜ちゃん」

「なんですか?宮町先輩」

「どんな事があって散歩して帰って来たの?」

「えっ――いや……まあ簡単に言いますと」


そこから俺の家を出てからのお話が始まったのだった。うん。次はあれだ。

先ほどは帰って来るまでの暇つぶしで予想ゲームをしていたが――今度は七菜の語りらしい。俺は口を挟むことなく。七菜の話をそのまま聞くことになった。


―——―。


「えっと――この家を出まして……駅に行くまでずっと白塚先輩に話しかけられまして――」


うんうん。なんとなくその光景はわかるな。大学の時とかと同じような感じで、柊が七菜に話しかけていて――でも七菜はスルー。うん。理解した。想像できる光景だ。ってか。ホントNGワードダメなのね。許してもらうことは出来ないのだろうか?もう何か月?かな。うん。続いているような……。


「そのあとも駅でずっと話しかけられまして――あっ、でも電車内は、たまたま同級生の子が何人か乗っていて、白塚先輩と話してくれたから。ちょっとマシでした。まあ、何で一緒に居るのかやらやらたくさん聞かれたのでなかなか苦痛な時間でしたが……まあでも2人よりマシでした。でも――四日市に着いたら、同級生とは別れまして――そしたらまたずっと話しかけられまして。とにかく早く買って帰ろうと。この時は思っていたので、私はお店の方へと急いだのですが――私がお店でローストビーフを探しているとすぐに白塚先輩が「これもおいしそうだな」「あっ、これ買ってもいいんじゃないか?」とかとかいろいろ各店で声をかけてきまして――ちゃんと探す前に次。次。って感じになっていたら――歩き疲れて来て、気が付いたら何でここに私は居るのか?みたいなことになりまして……いや、完全に忘れたわけではなかったのですが」


とにかくずっと七菜は柊に話しかけられていたと。うん、電車内でも同級生の子が居なかったら――下手したら電車から降りずそのまま帰ってきてたのではないだろうか――などと俺が考えている間も七菜の話は続いた……って、七菜の話が止まらなくなってきたというか。うん。愚痴になりつつあるね。海織も斎宮さんも呆れ顔というか。苦笑いというか。話を聞きながら「おつかれ七菜ちゃん」みたいなことを何度か言っている。


「ホント静かに見るということが白塚先輩にはなくてですね。次第に「七菜ちゃん七菜ちゃん。お菓子どうよ。なんか他もせっかくだから見ていこうよ」「あっ、ケーキもあるじゃん。買うよ?ケーキどう?」「おっ、和菓子もある。和菓子の方が良かったら和菓子も売ってるみたいだから――」まあ売り場がどんどん変わっていった……いや、私がすたすた歩きまわっていたからそうなったのだと思いますが。手当たり次第にと言いますか。見つけたら声をかけてくるで……大変でした」

「柊……私の時はそんなこと言ってこないのにー。きぃー。私がショーケースの中とか見てると太るぞしか最近言ってこないんだけど!」

「まあまあ沙夜ちゃん沙夜ちゃん。それは仲良しの証拠だから」

「むー。あれは馬鹿にされているだけのような――うん。なんかムカついたから。今度出かけたら何か買ってもらおう」


本人いないところで話がどんどん進んで行く。これ――録音とかしておいて柊にも聞かせた方がいいのだろうか?後日いきなり悲鳴よりマシのような――などと俺が考えつつも。うん。下手なことは出来ないのでね。大人しくそのまま話を聞いていた。


「ホント白塚先輩もノンストップで話し続けてましたから。おまけに気が付いたらお店の人と話してまして、かわいい妹さんと――みたいな話があって大変不愉快でした」

「あはは――まあ私も1回か2回あったなー。売店の人だったかな?おばちゃんにお兄ちゃんとお買い物?みたいなこと言われた」

「白塚先輩の背が無駄に高いから問題ですよね」


どんどん話がヒートアップ……はしてないと思うが――いやしてる?

うん。七菜が力強くなっていっている気がするな。柊。ヤバいぞ。ストレス?というのか。うん。七菜のお怒りが溜まってるぞ。

さらにそれに斎宮さんが乗っかって――後日柊の悲鳴の確立がどんどん上昇している気がする。ってか、この女の子3人による話し合いは柊が帰って来るまで続きそうな雰囲気である。うん。俺この場に居るのに――全く口を挟めてないです。はい。下手に入れなくてね。

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