第570話 混ぜるな危険5

「——じゃ、行ってきます」

「ちょ、七菜ちゃん。俺まだ準備が」

「行ってきます」

「あっ。七菜ちゃん傘使っていいからねー。玄関に私のあるから」

「あっえっと――自分の部屋にあるんですが――まあ、じゃあお借りします」

「うん。どうぞどうぞー。気を付けてねー」


はい。現在の事。俺の部屋から七菜がまず外へと出て行った。ちなみにその際に海織の傘を借りていった。うん。ホント何でも俺の部屋に置いてあるよ。

ちなみにもう一人の敗者。柊は今財布やらを持ってやっと玄関へと移動――と、思いつつ見ていたら柊の声が聞こえてきた。


「楓!傘借りる。七菜ちゃん!待ってー」


ガチャ。


「どうぞ――って、壊さないように――今その傘しかないから――って聞いてないか」


小走りで出て行った柊に声をかけたが――無事に傘は帰ってくるだろうか?って、うん。なんか雨の中悪いことしているような……というか――何故にこんなことになったのだろうかね?と俺が再度思っていると――。


「そういえば他は何が書いてあったんだろ?」


晩ご飯の買い物。ローストビーフを買いに行った2人を見送った後。斎宮さんが机の上に残されていた箱をひっくり返し。中に残っていた紙を確認しだした。


「そうだね。何が書いてあったんだろう?」


斎宮さんが箱をひっくり返すと海織も斎宮さんのお隣へと移動していったので、俺は――お米かな。うん。唯一と言っていい俺の部屋にあったお米を準備しておくことにした。

いや、先ほどチラッと話になったのだがね。ローストビーフ丼になるみたいなので、お米は必要そうな感じだったので。俺が準備します。確か話している時は――海織が「確かお米はあったからとりあえず炊いておくね」みたいなことを言っていたのだが……今は斎宮さんの方へと行ったので――って。ふと俺が海織の方を見ると。海織がこちらを見ていて、ウインクをしていた。うん。任せた。ってことかな。はい。通じました。ということで、俺が頷いておいてからお米の準備をしていると――。


「うわー……よかったね。これにならなくて」

「これ、絶対柊でしょ。何か居てるの。ホント。子供じゃあるまいし。あっ。ガキか」

「あっ、こっちは七菜ちゃんだね。筆跡でわかるね」

「だね。で、これは――」


楽しそうな2人の声が聞こえてきたので、俺はお米の準備を終えて2人の方を見に行ってみると――机の上に紙が並べられていた。もちろんだが俺が書いたものもそこには並べられている。


『誰が』——柊。沙夜。白塚先輩。みんな。

『どこで』——スーパー、コンビニ。大学。大阪。

『何を買ってくるか』——オードブル。お寿司。お好み焼き。お弁当。


5人居て、七菜は各お題から1枚ずつ紙を選んだので、残り4枚が並べられていたのだが――うん。選ばれなくてよかった。という物が1枚とっても目立っていた。


「——大阪?」

「これ絶対柊だよ。私の名前と大阪。お好み焼きが同じ字だもん」

「まあ――ですね」


俺がつぶやくと斎宮さんが3枚の紙を持ちながら言ってきたが――うん。確かにこうやって見てみると筆跡が全て違うので――誰が何を書いたかはよくわかる。今斎宮さんが持っているのは全て同じ筆跡なので――柊でいいのだろ。多分ね。

俺がそんなことを思いつつ斎宮さんが持っている紙を見ていると――別の紙を持った海織が話しかけてきた。


「ちなみにー。一番近くの店と、お寿司。みんなを書いたのは楓君だよね?」

「さらっとバレる俺だったか……」


うん、海織にすぐ書いたものをバレた俺だった。


「あー、確かに、海織ちゃんの言うとおりだ。楓くんって普段からきれいな字書いてるから――ちょっとどうなのか?って思ってたけど。うんうん。ちゃんと見てみると――だね。うんうん。楓くんが書きそうなことだね」

「はっはっはっ……ってこれ、白塚先輩って書いてある時点で七菜――うん?七菜?だよね?」


俺は1枚の紙とその他のところの紙を見比べる。筆跡的には――スーパーと……オードブルと白塚先輩という紙が同じに見えた。うん。すごいな。筆跡ってホントわかるもんだな。などと俺が思いつつ見ていると。


「七菜ちゃん。白塚君の事好きだよねー」


海織が楽しそうに俺の持っていた紙を見つつ言ってきたが――。


「いやー、敵視しているようにしか見えないんだけど……」

「できることならパスしたいね。うんうん。柊の相手はホント大変なんだよ」

「斎宮さんも本人が居ないから言いたい放題か」

「いつもだね。ホント七菜ちゃんもらってくれないかなー」

「いつもなんか……って、おかしな会話をしている気がする」


うん。これは柊くしゃみ連発か。などと思っていると。斎宮さんがまだ置かれていた紙に手を伸ばして――。


「あっ、そうそう。ちなみに柊って書いたのは私!」

「それはわかってます。って消去法で残ったのは斎宮さん。というか――ローストビーフの文字と一致してますね」

「えー、なんかあっさりバレてる」

「って、その流れで行くと、大学の文字は斎宮さんか」

「正解!」

「こんな時間に大学で――って、そもそも買えないでしょ」

「それがゲームの面白いところだよ。楓君。書かれていたら何とかして買ってくる的な?」


斎宮さんと話している海織が会話に入ってきた。


「雨も降ってるのに海織の考えることは怖い」

「にひひー」

「でもさ。楓くんこういうのたまには面白いよねー。まあ私は食べたかったのが選んでもらえたから満足満足だし」

「ローストビーフ届くといいね」

「うん!来なかったら柊だけ潰す」

「——ははは……あるのかな?」


はい。こんなゲームが行われたことにより。柊と七菜が買い物へと行っているのだが――さてさてどうなるかですね。って、ホント雨の中わざわざ外出をさせているのだった。うん。海織さんの考えることは――なんですよ。はい。どんどん被害者。巻き込まれる人が増えてますね。

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