第569話 混ぜるな危険4
「誰が」
「どこで」
「何を買ってくるか」
そんな海織の字が書かれている紙が貼られている箱が机の上に置かれた――ってちょっと待てよ……。
「海織。海織」
「うん?どうしたの楓君」
「これさ『どこで』は、いらなくない?誰が何を買ってくるかで、良くないかな?」
「まあまあ、面白いじゃん。買ってくる場所も指定ってのも。これでとんでもない事書いてたら――どうなるのかなー。って。にひっ」
「……そんな恐ろしいゲームだったのか」
うん。海織がいけない顔をしていた。これ――もし誰かが……どこだろう。山?とか書いてあったら――どうなるんだろうか「山で魚を買ってくる」とか言う意味の分からないことになったら――どうするのだろうか。そもそもこのゲーム……大丈夫なのだろうか?NGワードが一切ないので――みんなできること書いてるよね?などと俺が思っていると――。
「よしよし。書けた書けた」
柊がそう言いながら海織が準備した箱に自分の書いた紙を順番に入れたので――それに続くような形で、他の人も箱にいろいろと書いた紙を入れたのだった――って、マジで嫌な予感しかしないんだが――俺も一応書いた紙を入れた。
にしても、柊と斎宮さんが言い合っていて――いろいろ書いてそうだった。うん。巻き込まれたくないが――できれば2人の中だけで揉めつつ――書いていてほしいのだが。どうなることか。
「で、誰が引く?」
全員が箱の中に紙を入れた後。海織が箱を振って混ぜつつ聞いてきた。
俺はそんな海織の話を聞いていて――そうか。これ紙を引く人も結構重要だよな。変な言葉を引いたら――いや、そもそもそれを書いた人がなんだけど――選んだのは引いた人と言うか。うん。引く人は引く人でなんかね。
とにかく――このゲーム嫌な予感がずっとしている俺だった。晩ご飯にたどり着けるのかということと――まあいろいろとね。そもそもちゃんとまとまるのかなどと……ね。
マジで嫌な予感しか今のところしてなかったのだった。
「で、誰が引く?」
俺がいろいろ思っていると、海織が再度そんなことを言い――直後に斎宮さんが提案を出した。
「うーん。こういう時は。七菜ちゃんかな?」
「えっ?何で私なんですか?斎宮先輩」
「なんか七菜ちゃんが一番何も考えずに引いてくれそう」
「「あー、なるほど」」
斎宮さんの意見に納得したのは俺と海織。いや、うん。確かに七菜ならポイポイポイ。と何も考えずに引いてくれそうだし。結果どうなっても――うん。特に揉めないか。とね。
「ちょ、加茂先輩。宮町先輩そんなことでハモらなくていいですから」
「いや、でもね。確かに七菜なら細工しないかも――海織だとね――マジック。手品くらいはこの中でやりそう……」
俺は楽しそうにしている海織。うん、悪い顔を続けているのでね。いろいろ考えられることは全て考えつつ。そんなことを言ってみると――。
「楓君。なんかひどい事考えてない?私マジックとかできないよ?」
「海織は何かしそうだからね」
「えー。まあそりゃ。ちょちょい。ってことは出来るけど――」
「できるんかい」
「おお、楓君良い反応」
「——何をしてるんだか」
「加茂先輩が突っ込んだんですよ」
「……黙ります」
「斎宮先輩。イチャイチャが始まりそうですから私がパパっと引いていいですかね?」
「良し。七菜ちゃんとっとと引いちゃおう」
はい。そんな感じで七菜が引くことになったのだった。そうそう柊が静かだったのは――「俺が書いたの選ばれろー。選ばれろー」などと既に祈っていたからである。うん。柊よ。周りを見てくれ。まだ引くことが決まったばかりなんだが――って。いつから祈ってた?もしかして紙入れてすぐ?って――祈るほどか……いやいや何を書いた?だった。
まあそれぞれの思惑が何かあるのかもしれないが。引いたのは七菜。本当に何も考えずに適当に1枚ずつ紙をそれぞれの箱からポイポイポイと取り出していた。その結果は――。
「誰が――じゃんけんで負けた2人」
「どこで――一番近くの店」
「何を買ってくるか――ローストビーフ」
そんな言葉が机の上に並べられたのだった。うん。まあ無難というか。普通というか……マシな答えになった方だと思う。
「……なんというか――ローストビーフ?」
出来上がった言葉を見つつ俺がつぶやくと。
「いやー。昨日テレビで美味しそうなローストビーフ丼食べててー。食べたくなったあら」
「——これを書いたのは斎宮先輩ですか」
はい。食材は斎宮さんの物が選ばれたらしいです。すると海織が出た結果を見つつ。
「ローストビーフか。スーパーにもあるかもだけど――近い店。絶対なのは――四日市まで出た方がいいかな?お店も多いし探しやすいだろうから」
「雨の中行くことになるけどね」
俺が言いながら外を見ると――まだ普通に雨は降っている。
「まあまあ決まったことだし。じゃあじゃんけんしよう!」
「海織。楽しそうだね。って――これ誰が書いたかわからないけど――何で負けた2人なのか――1人じゃないんだよね」
「あっ。それは傘の数だね。この部屋にある傘の数が2本だったから。一応2人にしたんだ」
「——海織が書いたものだったか。ってそこまで考えていたか。俺何も考えてなかった……」
話していると――少しずつ誰が何を書いたのかが明るみになる中――俺達はとりあえずじゃんけんをすることになったのだった。じゃんけんをして勝負を付けないと先には進まない。晩ご飯にたどり着けないのでね。
ちなみに――ローストビーフは……食べたい俺だった。うん。
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