第566話 混ぜるな危険
突然戦いは始まる。いや、もちろんだが剣で切り合うとかの戦いではないがね。でも――ホント唐突にとある戦いが始まったのだった。
敗者にはそこそこ大変なミッションが待ち受けているため。とある戦いの開始前はちょっとだけ場が静かになった。
そして――。
「「「「「じゃんけん――ポン」」」」」
……さすがに5人居るからか。1発。1回戦目では決まらなかった。みんなバラバラだった。グー、チョキ、パー。全てが出ていた。そして再度間があってから――。
「「「「「——あいこで――しょ」」」」」
2回戦目。今度は3対2となり。2の方が勝者となった。
「よっしゃ!」
「あっ、勝った」
まず2人が輪から抜ける。すると1人悔しがっているお方が居た。1回戦目と2回戦目の微妙な間の間にぶつぶつ何かを念じていたが――どうやらそれは効果がなかったらしい。
ちなみに俺は何も考えずに1回戦目と同じ手を出しただけだったりする。
「くそー。何でパーを出さなかったか――俺の馬鹿ー」
「よしよし。雨の中出なくてよくなったー。海織ちゃん七菜ちゃんファイトファイト」
「——あの斎宮さん。雨がやまなかったらどっちにしろ帰りには外に出ることになるかと思うんですが――ね」
俺は斎宮さんにそんなことを言いながら窓の外を見る。
窓の外はそこそこ強い雨が降っている。お昼過ぎまでは何とか曇りを維持していたのだが。夕方にポツポツと雨が降り出したらしく。その後はザーっと音を立てつつ降っている。
あと、少し風も出てきたのか。窓ガラスも少し濡れだしていた。
ちなみにスマホでお天気情報を見ると――この後はまだ90%の確率で雨らしい。日付が変われば30%になるみたいなのだが――とりあえずしばらくは雨らしい。
「大丈夫大丈夫。雨が止まなかったら明日は休みだし。七菜ちゃんところに泊まるから」
「えっ?」
突然自分の名前が出たからだろう。次の戦いに向けて何かを考えていた感じの七菜が斎宮さんの方を見た。
「ってことで、七菜ちゃん雨が止まなかったらよろしくー」
「ちょ、えっ?」
七菜は斎宮さんに突然そんなことを言われオロオロ。誰かに助けを――というところで……。
「七菜ちゃんところならお隣だから移動しても濡れないからね。いいところに」
「あっ、それに私も参加しようかなー」
1人会話に混ざったのだった。
「ちょ、宮町先輩も私の部屋そんなに広くないですよー。ってまた夜が寝れない――」
「いいじゃんいいじゃん」
同じく3回戦目へと向かうことになっている海織が七菜に声をかける。うん。この際七菜の心の悲鳴が俺には聞こえた気がした。これはこっちにいつもの流れなら飛んで来そうな雰囲気だったので、俺は一応準備だけしていると――。
「いや――加茂先輩」
「——聞こえませんね」
本当に飛んできたのですぐに俺は反応することが出来た。
「拒否されたー」
「楓君も来ればいいじゃん」
「いやいや海織。意味わからないことを言わないように」
「じゃ、俺は楓の部屋か」
「柊は泊まるといろいろ物を忘れていくのでお帰りください」
「なっ!?楓が厳しい」
こっちは全く準備をしていなくてもスラスラ出てきたのだった。うん。この前掃除したばかりですからね。
「いやいや、楓くんは優しいよ」
「ですね。加茂先輩は優しすぎますね」
「楓君。評価高ーい」
「沙夜と、七菜ちゃんの俺の評価は低すぎる!」
「ここはホント何をしてるんだろうか――」
俺が呆れつつつぶやくと、既に勝者となり余裕の斎宮さんが話しだした。
「あっ、早く買い物行く人決めないとでしょ。お腹空いちゃう」
うん、斎宮さん。お腹空いているみたいですね。お腹空いてますアピールをしつつだった。
「沙夜はいつも腹ペコだろうが」
「はい!?柊負けろ柊負けろ」
「そんな祈りするな」
「はいはい。七菜ちゃん。白塚君早く決めよう。電車の時間あるからね。楓君調べておいてー」
「あっ、はい」
海織に言われ俺は棚の方へと移動して時刻表をチェックする。すると後ろでは海織がまとめたからか。すぐに3回戦が始まり――。
「「「じゃんけん――ポン」」」
「やった!」
勝者海織の声が聞こえてきたのだった。
「なー、マジか!」
「負けましたー……」
3回戦目で勝負はついたらしく。ってか。海織が勝ったということは今聞こえた後ろの声2人が負けたという事なので――なかなかの組み合わせになってしまったみたいだが――大丈夫だろうか?
俺はそんなことを思いつつも時刻表をパラパラめくり――。
「あった。えっと――今からだと、四日市方面は16時56分かな?」
俺が現在時刻を確認し言いながら振り返ると――楽しそうな顔をしているのが3人と――1人超嫌そうな顔をしているお方が居たのだった。うん。
ちなみに嫌そうな顔をしているのは七菜である。本当は柊も負けたので嫌そうな顔をしていてもおかしくないのだが――。
「まあ七菜ちゃんとならよしか。沙夜だと別の物買わされそうだからな。腹ペコだと何でも買いそうだし」
「あー、ホントこのバカは。七菜ちゃん。無駄にいっぱい買ってもいいから」
「極力会話なく行ってきます」
「やっぱりめっちゃ七菜ちゃんが冷たい!?」
「——嫌な予感しかしない組み合わせ……」
俺がつぶやくと――。
「まあまあ大丈夫だよ。楓君。って、2人ともあと電車の発車時間まで10分ちょっとみたいだよ」
俺の隣に居た海織が言うと。七菜は超嫌そうにしつつもまあルールなので、とつぶやきつつ。移動を開始。柊も動き出したのだった。
――えっ?何が起こっているんだって?それは――1時間くらい前にさかのぼる。そうだな。ちゃんとそこから説明が必要だよな。いきなりじゃんけんをしている5人じゃわからないわな。
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