第527話 まっしぐら4

「ホントにですよ。甘いベタベタをかけられました。最悪ですよ。加茂先輩も聞いてくださいよ。朝から液体かけられたんですよ!最悪です」

「うわっ!?」


先ほどは海織だったが。今回は七菜が俺の後ろからやってきたのだった。って――なんなの?人を驚かすのがここでは流行ってるの?というか……こっそり近づくのが流行ってるの?と、俺は思いつつ声の方を振り返ると――ほほを膨らませている七菜が立っていたのだった。


「あっ。七菜ちゃん。朝から災難だったねー。あと、馬鹿な柊がごめんね。私もあとで蹴飛ばしとくから」

「たくさん蹴飛ばしておいてください。ボコボコにしちゃってください。手加減なんていりません。はい。上着がパーですよ」


そう言いながら七菜は手に持っていた袋を俺たちの前でぶらぶらさせた。

多分あの中には――飲み物が飛んで被害を受けた服が入っている居るんだろうなー。ってか――柊よ。さっきここに居る時は全くそんなこと言ってなかったのに……これ。マジで……かなり七菜怒ってない?うん。今までに見たことないくらい変なオーラが見える気がするんですが……と俺が思いつつ七菜の話を聞いていると。七菜のクレームはまだ続いたのだった。


「本当はズボンにも少しかかっちゃったから着替えたいんですが――今日は出席が厳しい講義が連続であるので、帰ることもできないですから我慢してるんですよ。ホント最悪です――もう」


七菜がそう言いながら履いていたズボンの太ももあたりをこちらに見せてきた。うん。確かにちょっと何かの汚れ。シミががありますね。と俺が思っていると。


「白塚先輩を破産させます。ランチの後は服も弁償してもらいます。超高いの買ってもらいます」


七菜がはっきり俺たちの前で宣言をして――斎宮さんの横に座ったのだった。ってかこの場に柊が居たら――バトルだったか。柊。食堂にある意味いいタイミングで呼ばれたんだな。と俺が思っていると、斎宮さんが隣に座った七菜の頭をなでつつ。


「よしよし。七菜ちゃんの見ているところで、柊をボコボコに蹴飛ばしたいけど、残念ながら柊食堂に行っちゃったみたいだから、今居ないんだよねー」


そんなことを七菜に言うと……。


「あっ。私が友達に頼んで白塚先輩を食堂に呼ぶように言っておいたんです。だからお昼休み中は帰ってこないと思います」

「七菜の行動力もすごいというか……うん。ホント災難でしたね」

「ホントですよ。とりあえずこのことを加茂先輩にも伝えるために白塚先輩には退場してもらいました」

「ははは……」


俺と七菜が少し話していると――。


「まあ、そういうことで、ランチに行くのは私と七菜ちゃんになって――沙夜ちゃんも――だったけど。そこは本当に払えない。絶対無理。4人は無理。って白塚君が言ってね。だから楓君は京都の時のように沙夜ちゃんのお相手お願い。なんだよ」


海織が俺の方を見つつ言った。


「そういえば――京都もこのペアでしたね。あっ、七菜は居なかったけど」

「白塚先輩を破産させるためには。斎宮先輩の分も——なんですけどね。って――うん?加茂先輩と斎宮先輩は2人でどこか行くんですか?」


七菜がカバンからおにぎりを出しながら、俺たちに聞いて来た。

七菜の質問に答えたのは斎宮さんだった。


「海織ちゃんと七菜ちゃんが柊とランチの時にね。どうせなら私と楓くんも名古屋まで行って――3人が高級ランチ中に、とこにゃん。見に行こう。って言ってたんだよ」

「……とこにゃん?なんですか?それ」


それから斎宮さんが七菜にとこにゃんについて語る――という時間が少しあり。斎宮さんと話していると――まあ七菜のお怒りは少し収まっていったのかな?うん。そう思いたいですね。


ということがありまして、結局俺が何か言う前に――はい。いろいろあってというのか。いや、俺の知らないところでいろいろあって。そして、いろいろ決まっていたから――うん、いつものように流れに身を任せるというのか。俺の予定は組まれていったのだった。


それから俺たちは4人でランチとなり。雑談をしつつ過ごしていると――。


「あっ。私そろそろ午後の講義あるので行きますね」


七菜がそう言いながら荷物をまとめだした。

するとそれを聞いた斎宮さんがスマホで時間を確認して――。


「あっ。私も午後あるんだった」


七菜と同じように片づけを開始したのだった。

ちなみに残りの2人。俺と海織は、午前中だけだったので後は帰るだけなので、全く急いでない。

でも、2人が移動と言いだしたので――多分こっちも帰ることになるかな。と、俺が思っていると。


「楓君楓君」

「うん?なに?」

「私たちも帰ろうか?楓君はあれでしょ?帰って沙夜ちゃんとのデートのコース考えないと」

「……そんなミッションいつの間に――」

「加茂先輩。大変ですね。って、デート!?」

「七菜。海織の言葉は気にしなくていいから」

「気になりますよー」

「楓くん。デートプラン任せた!楽しみにしてるから。ちなみに私どうやってらとこにゃんにたどり着けるのか。全くわかってないから!」

「斎宮さんもちょっとくらい調べてくださいよ。って何で斎宮さんも海織の話に乗っかっているのか。さっきは訂正求めてたのに……」

「にひひー、じゃ、楓くん。海織ちゃんまたねー。七菜ちゃん行こう?どっち?大講義室がある方?」

「あっ、そうです。えっと、じゃ、加茂先輩、宮町先輩。私も行ってきます」

「2人ともいってらっしゃい」


その後俺と海織は2人が居なくなってから、のんびりと片付けをして――いつものベンチを離れたのだった。

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