第525話 まっしぐら2

いつものベンチ。柊が食堂へと向かった後――すぐに斎宮さんがやってきた。


「ついさっきまで柊が居たけど、食堂の方で後輩たち?に呼ばれたみたい。ちなみに海織は先生のところに……何だっけ?ちょっと何かの確認に行くって言ってたから――まあそのうち来ると思うよ」

「別に柊は居なくていいけどー。って。そうそう柊で思い出した。楓くん聞いた?」

「何を?」

「高級ランチだよー!」


斎宮さんが――大声で――というか。ちょっと悔しそう?にそんなことを言った。


「……さっき柊から聞いた。って斎宮さんにも話は言ったのね……」

「海織ちゃんに聞いたー。2人の予定がやっとあったとかで、今度行くんだってー」

「まあ同じような感じで聞きましたね。海織は――ってそういや。あまり気にしてなかったけど――やっと行ける。みたいなことを朝家で言っていたかも。うん。そうか。そういえば俺海織から先に――聞いた?かな」

「楓くんはあまり興味なしって感じ?海織ちゃん柊が連れてくんだよ?心配じゃないの?」

「まあ柊の心配はちょっとくらいするかな――海織に振り回されないように……いや、でも関わるとだから――何も気にしない方がいいかな?うん。ここに居ないけど、柊。ご愁傷様かな?」

「おお、ここの旦那。強いぜー」

「……斎宮さん?」

「ごめんごめん。何でもない。ってか。楓くん」

「はい?」

「柊たちが出かける時、私たちも――えっと?名古屋の店行くって言っていたから――私たちも名古屋方面行こうよ!そう私行きたいところあるんだよ」

「……えっ?」


――何だろう。斎宮さんに俺――巻き込まれそうというか――拉致されそうです。はい。


「——斎宮さん。行こうとはどこに?」

「名古屋の――あれ?あれは名古屋じゃないかも?」

「うん?」


斎宮さんはスマホを取り出して操作をしだした。そして操作をしながら――。


「いやね。この前テレビで特集しててさ。かわいくてさ。一度こっちに居る間に見に行きたいなー。って、ところが出来てねー。どこだったかなー。スクショしたんだけど……あった。そうそう「とこにゃん」」

「——とこにゃん?」

「そう、これ」


斎宮さんはそう言いながら俺にスマホを見せてきて――そこには招き猫の顔だけ?という画像が表示されていた。って――あー、これ俺もなんか見たというか。テレビ見たかもしれない。と俺が思っていると。


「あれれー、沙夜ちゃんが楓君を何かに誘ってるのかな?」


急に――別の声が俺たちの後ろからした。うん。ドキッ。だよ。マジで急に真後ろで声がしたのだった。


「うわっ!?誰?って……海織ちゃんかー。急に背後に来ないでよ。びっくりしたー」

「——こういうドッキリ。海織の特技みたいなものだよね。ホント」

「にひひー」


俺と斎宮さんが声の方を見ると。海織が楽しそうに笑いながら立っていた。って――ホントいつの間に背後に来たんですかね。音もなく近寄る――怖い怖い。と俺が思っていると。


「海織ちゃんには言ったじゃん。とこにゃんだよ。とこにゃん」

「あー、あれね。そういえば言ってたね。ランチの時に楓君貸してって」

「そうそう、それそれ。で、OKくれたじゃん」

「——何故に本人の居ないところでいつも決まっているのか」


また俺の知らないところで何かが勝手に決まっているということが、起きていた。うん。驚くというのはもうないが――それが普通になるのはいろいろ困るのですが?と、俺が思いつつ海織を見ると。


「楓君。沙夜ちゃんがね。私たちがランチを食べに行く日に、一緒に連れて行ってもらえなくて寂しいから。なら楓君を拉致して、とこにゃん見に行きたいだって。はい。伝えたよ?」

「……何を海織はニコニコと事後報告を――ってか。もう知ってる。うん。知ってた。斎宮さんから聞いた。順番がおかしいです。って――普通に拉致って言ってきたよ」

「海織ちゃん。寂しいとは言ってないよー」

「ふふふっ。まあまあだよ」


何故か笑顔の海織だったが――うん。言う順番がおかしいですよ?あと――うん。ホントいろいろおかしいですよ?と俺は思いつつ。


「まあまあじゃなくて――ホントまあ、ってか、斎宮さん」

「うん?何?」

「とこにゃん?って海織の実家方面だよね?」

「——そうだっけ?」


俺が聞くと斎宮さんが頭にはてなマークを浮かべつつ海織の方を見た。斎宮さんからの視線に気が付いた海織は……。


「うん。ちょっと離れてるけどね。でも近い方だよ?」

「だから――海織が居る時の方が案内とか――」


うん。知っている人。詳しい人が居る方がいいような――と俺が思っていると。


「いいじゃん楓君。本当は沙夜ちゃん白塚君に私もランチ連れてって!って、ずっと言ってたんだけど、高いから4人は無理!で、断られて――じゃあ余ってる楓君とデートしてくる!って言ったんだよね?」

「だから。何故に俺の知らないところで、俺が登場しまくっているかだよ」

「ちょっと待って、私が言ってない言葉が増えてる。海織ちゃん。言葉増えてるから。楓くん私は言ってないからね?私は柊が連れてってくれないなら、その間楓くん借りてぶらぶらしてくれる。って言っただけだからね?」

「にひひー」

「なんか――みんな巻き込まれているというか……海織るが今日も絶好調で斎宮さんも巻き込まれている――と」


俺はそうつぶやきつつ。とりあえずいろいろ順番に確認するため斎宮さんを見たのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る