第524話 まっしぐら

「——とこにゃん?」 


とある日。俺は――ちょっと寝ぼけつつ。海織に聞き返していた。

いや、状況整理が追い付いていないというか。うん。どうやら俺ちょっと寝ちゃっていたというか――あれ?えっと……何がどうなってこうなった?と思っていると。


俺の記憶には居なかったはずのお隣さんが急に登場して――。


「加茂先輩が寝ぼけてますね」

「——何で七菜が普通に俺の部屋に居るのか……謎が多い」

「いや、私もさっき宮町先輩に呼ばれたんですけど――来てみたら加茂先輩が寝てまして」

「……やばいな。記憶がぶちぶちだ。ってか、海織?」


とりあえずいろいろわかっていないのだが。絶対全部知っているだろう。この部屋に居るもう一人のお方の方を俺は見たのだった。


「楓君。お疲れだねー」

「その原因の一つは海織のような――」

「とりあえず晩ご飯作ったよ?」

「——そういえばいい香りがするが――ってもうそんな時間!?」


俺は海織に言いつつスマホで時間を確認すると――うん。夕方。夜だった。ヤバいな。数時間の記憶がない。でもまあ何となくお昼過ぎの記憶とは――と俺は思いだしつつ。その際に俺はふと自分のスマホを見て、今日の昼すぎに届いて斎宮さんからのメッセージを再確認したのだった。


斎宮さんからのメッセージを見つつ。やっと俺の記憶がよみがえってきた。

そうだそうだ。海織と大学から帰って来て――ちょっとしたらだっけ?斎宮さんから連絡が来たんだった。俺はそう思いつつ――あれ?何か。壮大な夢……?を見ていたような――ということが頭の隅に一瞬だけあったが――うん。全く思い出せなかったのでそのままにして。


とりあえず机の上に出ていた時刻表を片付け。って何で七菜が普通に居るのかがまだわからない……あれ?海織が呼んだんだっけ?うん。ちょっとまだ寝ぼけているから――顔でも洗ってくるか。うん。さっぱりしたら状況整理もできるかもしれないと思い。俺は一度立ち上がったのだった。


それから俺は顔を洗面所で洗って来て――ちょっと目が覚めたところで再度海織に確認をして――また斎宮さんに拉致されることになっていたことを再度確認したのだった。うん。


――——。


ちなみに斎宮さんからのメッセージ内容は……。


『楓くん楓くん。大学でも少し話したけどさ。海織ちゃんたちが名古屋にランチ行くって言っている時。私たちも名古屋行くの決定ね。あれからもう1回柊に高級ランチ!って言ったけど。絶対無理。ってまた言われてさー。連れてってくれないみたいだから。こっちはこっちで遊びに行こうよ。うん。決まり!でさ。大学でもちょっと言ったと思うけど、私とこにゃん見たいんだけど――どうかな?ちょっと楓くんのお得意分野で、行き方とか調べてくれない?任せた!』


というものだった。

うん。この話をするには――今日のお昼。いや、午前中まで戻った方がいいな。戻ろう。俺の頭の中の整理も必要みたいだからね。

……時間は数時間前にさかのぼる。

大学の構内。いつものベンチでの柊との会話からだ。


――――。


「——なるほど、ついに決行されたと」

「そうなんだよ。マジで――超いい値段……」

「ご愁傷様」

「楓ー。何とか宮町さんだけでも」


いやいや、柊よ。海織を回収してくれって、自分は高級ランチ食べたいのかよ。と俺は思いつつ軽く柊に返事をした。


「難しいですねー」

「そこを――」


俺と柊が話していると――。


♪♪~


「あっ。楓ちょっと悪い」

「どうぞどうぞ」


話していると柊のスマホが鳴り。柊が俺から少し離れて電話に出た。


そうそう、今何を話していたかというと。あれである。

俺はあまり関係なかったから――ちょっと記憶の隅に追いやられていて、はじめ柊に言われた時パットは思い出せなかったのだが。ついにあれが決行されるらしい。


海織にお礼というか――あれ?何で高級ランチとかになっていたんだっけ?あー、そうそう。柊の卒論消えた。っていうのを海織が。ってこれだっけ?うん?まあいいか。うん。俺は関係ない事なので、ここで下手に首を突っ込んでもなのでね。


とりあえずいろいろあって、しばらくは予定が――などでだと思うが。柊が海織を高級ランチに連れて行く。というのが決行されていなかったのだが。ついに予定が決まったらしい。

ちなみに先ほどから「マジで超高級ランチらしい」と柊が何回か話の中で言っていたが――うん。軽く万超えらしいです。俺は絶対関わってはいけないですね。はい。


俺がそんなことを思っていると。


「楓。ちょっと悪い。食堂の方行ってくるわ。後輩たちからお呼び出しがね」

「お忙しいことで。いってらっしゃい」


柊は後輩への勢力を拡大中というか。頼りにされているみたいで、お呼び出しがあったらしく。俺に一声かけて食堂の方へと小走りで――消えていった。

ってか。七菜とはどうなったんだろうか――うん。後輩への勢力拡大中でも――1人はどうもね――進展が無いんだよな。などと思いつつ。

そうそういつものベンチには男2人しかまだいなかったので――柊が居なくなると俺一人になっていた――と、思ったら。


「あれ?まだ楓くん1人?」


斎宮さんが飲み物を飲みつつ講義棟の方からいつものベンチへとやって来たのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る