第446話 後輩の初講義

――パシン!


乾いたいい音が響く。


「痛いなー」

「柊が勝手に七菜ちゃんに迷惑かけるからでしょうがー」


いい音の後は……なんか揉めている声が聞こえてきた。うん。まあここはいつもの事という感じでいいかな?と俺が思いつつ見ていると――。


「いやいや俺は先輩として助けをだな」

「聞いたからねー?1年生の女の子たちの連絡先交換したって言う情報も」

「それは今後のためでな。サークル勧誘やら俺も手伝ってやろうと思ってな」

「単位落とした人が余裕なことでね。ってことで楓くん。柊がヘルプしてきても無視でいいからねー」


おっと、突然こっちにも話が来ましたよ。って俺がそんな早く反応できるわけはなく……。


「—―はい?」

「OK?」

「……はい」


うん。とりあえず曖昧な感じとなりました。

ちなみに今は湯の山温泉駅から大学の建物までの途中で。

俺は急に前から斎宮さんに声をかけられたため――ちょっと何の話してた?と思いつつ……とりあえず返事をしておいたところである。


ちなみに現在は四年生になっての初の大学講義へ。というところである。

位置関係を説明しておくと、俺の前を柊と斎宮さんが歩いている。ちなみに俺は一人で歩いている。


いや、海織がね。午前中には講義が無いということで……今はこの場に居ないんだよ。珍しい事というか。今までならなんやかんやで同じ講義。というのがよくあったのだが……。って待てよ。よくよく考えると……俺――斎宮さんとの方が同じ講義になっている。取っている確率が高いような……気のせいか?とかちょっと余計な事を考えつつ。

そうそうちなみにだが。七菜は朝一から講義があるからと、かなり早くに家を出て行った。というか……まあ初めてだからいろいろと心配だったのだろう。多分……予定していた――二本?くらいかな?早い電車で行ったと思うからね。

……えっ?なんで俺がそこまで知っているかって?

いやね。まあ何で俺が七菜の出発時間を知っているかというと……。


たまたま今日ごみの日でね。

俺が朝起きて――ちょっと寝ぼけつつもごみを捨てに行ったら……ちょうどそこで大学に行く七菜に会った。そして少し話をした。ただそれだけである。うん。ちょっと挨拶程度に話したら……七菜は電車の時間があるからと去っていきましたよ。


そして俺は二限の講義を選んでいたので、七菜より一時間……二時間は――遅くないな。うん。まあ七菜の乗った電車の数本後の電車に乗りまして……。うん。都市部ならもっと電車があるだろうが……このあたりは平和というか。ちょっとは本数が増えるが。そんな数分に一本電車が来るところではないのでね。って、改めて言う事でもないか。ダイヤ改正とかがあってもそこまで大きくダイヤに変更がない路線なのでね。

ってそういえばこの春もダイヤ改正なかったな――と俺は余計なことを考えつつ。


まあとりあえず大学へと俺が一人で向かっていたら、途中の菰野駅で柊と斎宮さんが乗って来て、三人で講義棟。建物へと歩いているというのが今の現状である。


ちなみに俺が二人の隣。柊。斎宮さんどちらかの隣ではなく。二人の後ろになったのは……下がったから。いや、なんか会話的にね――。

俺は巻き込まれたくないなー。という感じで……そっと柊と斎宮さんがいろいろと言い合っている時に後ろへと下がっていたのだった。


まあそしたら斎宮さんから声をかけられた……である。


とか俺が思っていると俺達三人は講義棟などがある建物の前へと到着した。既に多くの学生が居る。というか。あれか。まだ前の講義をしているからみんな待機中という感じだな。


そういえばだか。斎宮さんは確か同じ講義とか電車の中で聞いた気がするが……柊は……何の講義だっけ――?再履修ではなくて……普通に単位を確保するために取った科目とか言っていたような……あれ?再履修だっけ――と、俺が思っていると。


「あっ、俺ここの建物じゃないわ。外国語はあっちか」


柊がそんなことを言い。くるりと向きを変えた。


「あっ。そうじゃん。柊は別の講義だからこっちじゃないじゃん。何してるんだか。だから単位落とすんだよ」

「場所間違ったから単位落とす。っておかしいからな?」


斎宮さんの問いかけに柊は再度くるりと周り答えていた。って……この二人。朝から元気である。うん。

俺がそんなことを思いつつ二人を見ているとさらに会話は続いており……。


「まあまあ柊。とっとと行っておいで。出席取ってる科目だと泣くことになるよ。にひひー」

「それは沙夜だろが。昔楓に泣きついていたの」

「ちょ、何を!一回蹴る。うん!余計な過去思い出すなー。って楓くん荷物パス」

「はい!?」

「ちょ、来るな!」

「余計な事思い出した頭を飛ばす!」

「それ死ぬから!」

「……」


と。俺が斎宮さんの方を見ると……既にカバン。トートバッグを押し付けていたというか……うん。飛んでいた。俺の方に投げたよ。である。

まあ何とか俺は斎宮さんの荷物を掴んだのだが……ってそのまま斎宮さんは……まあご想像通りです。


柊のところへと走っていきまして……足がすぐに出ていました。はい。

ホント元気である。うん、俺は斎宮さんのカバンを持ちながら思っていたのだった。


ちなみに周りの学生も……うん。柊と斎宮さんを見ていた。って目立つからな。うん。そこそこの人が居る中でそんなことしていたら……目立つよ。である。うん。


まあ斎宮さんが走り出して……数十秒後……数分かな?

とりあえず柊を気持ちよく蹴とばしてきた斎宮さんは俺のところへと戻って来手……カバンを受け取りましたとさ。

なお。俺は特に何も言わなかった。うん、変に言ってもなのでね。

揉め事回避は大切なんですよ。はい。

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