第254話 クリスマス4 ~伊勢川島駅17時54分発~

「楓君ってさー」

「うん?」

「女装したいの?」

「—―はい!?」

「え!?」

「楓—―お前そんな趣味が……」


斎宮さんと柊がなんか……うん。変な目でこちらを……って。


「ないからな?ないない。って海織は急に何言い出すんだよ」

「これ」

「—―あー」 


すると海織の手には、先ほど大学で難波先輩から預かった巫女のお手伝い募集のチラシが……あれか。カバンに入れてあったのを見つけたか。って海織さん何故に俺のカバンのチェックをしているのでしょうか?


「楓君のカバンからなんか出ていたから。ちらっと見たら。巫女さんのバイトだよね?これ」

「まあ、そうだね。でも俺じゃないからな?これ難波先輩からだから」

「えー、難波先輩が女装?それは……ちょっと面白いかもしれないけど……」

「だ・か・ら。海織話を聞く」

「はいはーい。で、なにこれ?」


海織に自由に話させるとまあ大変なことになりそうだったので、俺は先ほど大学でのことを海織と斎宮さんに話した。

あと柊にも餅つき大会の事について話した。


「なるほどね」

「そういう事かー。楓くんが壊れたのかと思ったよー」

「斎宮さん」

「嘘嘘ー。でも巫女さんかー。私はちょっと興味あるかも」

「えー、沙夜が巫女?似合……ぐはっ」

「……なんか言った?柊」

「—―言って……ません」


……怖い。

斎宮さんのパンチが柊を黙らせた。うん。すごく……強烈というか。しっかりとらえていた気がする。柊撃沈してるし。


「でも楓君これすごく急だね?もう数日後だよ?」

「まあそれはね……」

「でも巫女さんか……」

「で、海織どう?」

「楓君は巫女さん姿見たいの?」

「えっ?」

「私の」

「—―まあ」


うん。ちょっと見てみたいとか思いました。はい。


「ふーん。ニヤニヤ」

「何……その顔」

「仕方ないなー。こういう経験もしてみたいし。私はしようかなー」


と、ちょっと笑顔の海織だった。


「なら私も年末年始帰るのやめて海織ちゃんと一緒にお手伝いしようっと」


はい。ということで女の子2人確保しました。


それから難波先輩がなるべく早く……と言っていたのを思い出した俺は2人にそのことを言うと。海織がチラシに書かれていた電話番号に早速電話をして……難波先輩から聞いたということを伝えたらとんとん拍子に話が進んだらしく……。


「おばあちゃん?って感じの人が電話に出てくれて話したら。今から来れる?だって?」


そんなことになりました。まあすぐにでも打ち合わせとかいろいろしたんだろうな。とか俺が思っている横で。


「沙夜ちゃんは今から大丈夫?」

「うん。私は問題ないよ?」


女の子同士で話が進んでいます。


「じゃ、準備して行こうか?駅から近いみたいだから」

「了解。あー、手続きみたいなのあるとハンコとかあった方がいいかな?」

「あっそうだね。一応必要そうなの持って行こうか。私持ち歩いているから」

「じゃ、私は家寄らないとだ」


女の子2人がそんなことを話し出した時。


「あれ?そういえばさ楓」

「うん?」

「今日クリスマスだよな」

「そう……だな」

「晩御飯は……ここで食えるのか?」

「……そういえばケーキだけしか聞いてないが……」


うん。そういえばケーキ作りという話は聞いていたが。今日の晩御飯とか……の話は全く聞いていなかった。


「マジかー。俺豪華な晩御飯も期待していたのにー。言わないのは秘密とかで」

「まあ――今の雰囲気から……残念。かな?でも手作りケーキ食べれたんだから」

「そうだけどよー」


簡単に言うと。男2人が余りました。女の子2人はお出かけの準備みたいですからね。

ちなみに餅つきの事に関してはすでに難波先輩に返事をしたとか柊は言っていた。


「っか楓なんか晩飯頼む!帰ってなんか作るのめんどい」


と、柊が言った時だった。


「白塚君?楓君を勝手に持って行かないでね?」

「えっ?」


なんか俺の肩に手が置かれました。ちょっと力が入ってませんかね?海織さん。


「楓君。今から暗くなる時間だよ?ってもう暗いんだよ?まさか女の子2人だけに行かせようとしてるのかな?」

「……お供しろとね」

「もちろんだよ」

「っか、俺……物みたいに扱われてない?」

「えー、そんなことないよ?」


うん、なんかお供することになりました。なら柊もと俺が思った時。


「……まあだな。なら俺も沙夜の子守でもしがてら付いていくか。で。帰りになんか買って……」

「はっ?子守?」


うん、斎宮さんが柊を睨んだ。柊よ。余計なことを言うから――。


「うん?どうした沙夜?」

「柊は来なくていい。私は立派な大人だから」

「……楓。こいつの性格何とかならないか?」

「はははー」


と、出発までにちょっとなんやかんやとありましたが……。


結局のところ俺たち4人はそれから少しして俺の家を出発した。


また伊勢川島駅にやって来た俺。次の電車は17時54分発。


「ちょっと時間あるね」

「でもすぐ来るよ……って、海織。そこの2人どうするの?」

「うーん。でもこれがいつも通りじゃないかな?」


俺と海織の視線の先には――。


「ふんだ!」

「いやいや、沙夜その態度だよ。もっとかわいくできないのか?」

「ふん」

「はー、めんどいやつー」

「はいはい。がきんちょですよー」


まだなんやかんやと言い合いをしているお2人が居た。まあなんやかんやでいつも通りというか。そのうち丸く収まるんだがね。

見ているこっちは……気になるんだよ。


とか思っていたら。伊勢川島駅17時54分発の湯の山温泉行きの電車が駅へと入って来た。さすが――帰宅時間。なかなかの乗車率だった。


そして電車に乗り込んだ俺たち4人。とりあえずは菰野駅へと向かった。一応斎宮さんが必要になりそうなものを家から持ってくる。ということで一度菰野駅で降りることとなっている。


そしてそこそこの乗車率の電車に揺られて数分。


18個03分菰野駅に到着。


「じゃ、ちょっと待っててー。次の電車までには戻って来るからー」


斎宮さんがそう言い小走りで駅から出て行った。そしてそれを追いかけるように一応柊も……まあなんやかんや言っている声が聞こえるが……大丈夫だろう。


で、俺と海織は付いていっても――ということで駅にて待機なのだが――。


「やっぱり――駅は寒いか……よく風が抜ける」

「だね。付いていった方が動くからまだ寒さはマシだったかな?」

「かも。ってあー寒い」

「ってことで楓君にくっつくことを宣言します」


とか言いながら海織が寄って来た。


「こんなところで大胆にくっつこうとしないでください」

「えー。クリスマスだよ?」

「どういう意味?」

「イチャイチャの日?」

「……海織に関してはいつもだね」

「えー」


と、そんな会話をしていた俺たちでした。


まあ結局そのあとすぐに海織は俺の腕にくっついていました。

まあ確かに――ちょっとは暖かかったが……ね。

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