第252話 クリスマス2 ~湯の山温泉駅15時32分発~
本日最後の講義が先ほど終わった。
講義終了後にスマホを確認してみたが……今のところ斎宮さんからの返事はなく。海織からもあれからは特にメッセージなどは来ていない。
もしかしたら今ケーキ作りの重要な局面?的なのかもしれない。か……掃除が大変かか。俺はそんなことを思いつつ。机の上の片付けをしていた。
講義室を出ると次の講義へと向かう人。駅へ向かう人とまあ半々くらいと。まあクリスマスといえどいつも通りの感じに大学内での時間は過ぎていく。でもまあまだ今日は……あと何時間だ?9時間くらいあるからな。夜が忙しい人も多いだろう。とか思いつつ俺も駅へと向かおうとしたら。
「おおー。ナイスタイミングだ!がははー。加茂!」
……今日はよく声かけられるな。
俺はそんなことを思いつつ難波先輩の姿を探した。
いや、もう声からして難波先輩ってすぐにわかったし。俺の事を加茂。と呼ぶ人は難波先輩くらいしか居ないからな。うん。俺……未だに知り合い少ないし。うん。柊曰くある意味知名度はあるとか聞いた事あるが……まああれはいつもお隣に居るお方が原因だろう。うん。間違いない。
俺が周りを見ると……ちょうど建物から出てきた?感じの難波先輩がこちらに手を振っていた。っか、目立つからすぐに見つかった。
俺はとりあえず呼ばれたので難波先輩の方へと進みだした。
「いいところに居た。いいところに居た」
「お疲れ様です。難波先輩。どうしたんですか?」
「いやな。ちょうど加茂にも連絡しようとしていたんだよ」
「はい?」
「正月暇か?」
「……まあ今のところ特に予定は無いかと……」
うん。多分海織が実家に帰らなければ家に居付いているくらいだろうな。とか思いつつ返事をすると……。
「よし。1人ゲット!これ見といてくれ」
と、難波先輩はショルダーバッグからチラシ?を取り出して俺の方に……。
受け取って確認すると……。
「……餅つき大会ですか」
「そうだそうだ。正月にな。ちょっと頼まれてよ。あの七夕祭をした時に協力してくれた人からよ。ちょっと若い人手が足りないから誰か居ないか?と相談受けてな」
「ってことはこのあたりで?」
「そうだそうだ。チラシに書いてある公民館だな。まあ規模はそんなに大きくないみたいだが。毎年近所の人とかが楽しみにしてるから言われてな。これは手伝わんとな!だからな。がははー。で、正月空いてるやつを探してたんだよ。意外とみんな実家とか帰っててよ。まあ俺も妹に帰ってこないの?とかちょっと文句言われたがな」
「ホント妹さんと仲いいんですね」
「がはは。そうだ、白塚は今居るか?」
「あー、今日はもう帰ってますね。でもこの後会いますよ?」
「完璧なタイミングだな!じゃこれ渡しといてくれ。で、俺に連絡くれとな」
そう言いながら難波先輩は同じ紙をさらにもう1枚俺に渡してきた。
「頼んだぞ」
「あっ、はい」
「よかったよかった。また連絡するからな!急に呼び止めて悪かったな!じゃ、俺は次のところ行くからな」
「あ、はい。お疲れ様です……」
そう言うと難波先輩は今度は先生ら、教授室などがある建物へと入っていた。
「忙しい人だな――」
とか思いつつ。俺は預かったチラシをカバンの中へ。
そして再度駅へと向かって歩き出した。
……と、すぐにだった。
「加茂!!加茂!!」
「うん?」
駅へ行く途中の坂道でまた難波先輩の声が後ろから聞こえてきた。
「よかったー。よかったー。追いついたぞ!」
「……どうしたんですか?」
何かを忘れていたのだろうか。とか思いつつ俺は足を止めて難波先輩の方へと少し戻ると……。
「巫女のバイトの件言わなかったよな?」
「—―はい?」
うん。さすがに「—―はい?」であった。俺……いつから性別変わったのだろうか……ってそもそも巫女のバイトの話なんか今初めて聞きましたよ?
「うん?あー、悪い悪い。なにも加茂に女装のお願いをしに来たわけじゃないぞ?がははー」
「……ですよね。うん」
「なんだ?したかったか?」
「全く」
「まあいい。もしもの場合相談しとくからな。がははー」
「いやいや、マジで勘弁してください」
「それはさておきだ。これだこれ」
そう言いながら難波先輩はまた別の紙を見せてきた。
「巫女のお手伝い募集」
「そうだそうだ、これも餅つきのところの同じ地区の神社なんだがな。今年はちょっといろいろあったらしくてな。いつもの人が手伝いに来れないみたいで。2人くらい年末年始?だったか?その時に手伝ってくれる人を探してるらしいんだよ」
「あの、難波先輩。年末って……もう数日後では?」
「そうなんだよ。神社の人に誰かいないか?って急に言われてな。これを渡さないとな。って思ってたのにさっき忘れたんだよ。がははー」
「いや、だから俺女装は……」
「わかってるわかってる。でだ。宮町、斎宮は――年末年始の予定なんか聞いてるか?」
「えっ、海織と斎宮さん?あー、なるほど」
「そうだそうだ。ふと浮かんでな。もし可能ならホント急だが……ってことで聞いてくれないか?で、もしOKとかならすぐにこのチラシに書いてあるところに連絡してやってほしいんだよ」
「あ、はい。じゃ、2人も今から会いますし」
「ホントか!?全くいいタイミングだ!じゃ、まかせた。よし。加茂、これ持ってけ」
「えっ?」
するとショルダーバックから今度は缶コーヒーが出てきた。
「まあ急に何度も呼び止めたお詫びだ持ってけ。ブラックだがな。今日はクリスマスだしな!甘いものでも食ったら飲んどけ」
「……は、はあ」
「じゃあ頼んだぞ!がははー」
と、今度こそ難波先輩は――消えていった。
うん。なんかいろいろ頼まれたな。
ということで、ちょっといろいろあったからか。
俺が湯の山温泉駅に着いたときには……。
「……だよな」
いつも乗っていた電車はすでに発車していたため。ちょっと駅で待機。うん。寒い。とか思いつつ。少し駅のベンチで待機のち。
俺のは湯の山温泉駅15時32分発の普通電車に乗り込んだ。
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