第238話 空港デート8 ~メッセージの中~

♪♪


「あっ、楓君ちょっと待ってもらっていい?」

「うん。大丈夫」

「えっと……」


海織はそう言い壁際に寄ってから――カバンからスマホを出していた。


「あっ、沙夜ちゃんだ」


どうやら斎宮さんからメッセージらしい。とか俺が思っていると……。


「楓君楓君」

「うん?」


女の子の同士のやり取りだと思ったので俺は海織の方ではなく。反対側。店じまいをしているお店などを見ていたのだが。海織に呼ばれたので振り返ると――。


――カシャ。


「はい。OKー」

「待って待って、今何か撮ったよね?カシャって言わなかった?」


振り向くと同時にシャッター音が聞こえたんですが……ってそもそも海織がこちらにスマホを向けていたので撮影したのは間違いない。


「大丈夫だよ。楓君撮っただけだから」

「それが問題なのですが」

「沙夜ちゃんに送るだけだから」

「いやいや、なんで俺の写真が必要なんでしょうか」


俺は海織の方へと移動する。ホントこのお方はいろいろなことを始めますから。確かさっきメッセージが斎宮さんから来たとか言っていたが。何故に俺の写真を撮る必要が出来たのだろうか……と、思いつつ海織の隣に行くと――。


「個人情報を楓君が覗きに来たー」


とか言いながらスマホの画面を隠している海織って……顔はニヤニヤですけどね。


「いやいや、勝手に写真撮られたんですが」

「ふふっ、ちょっとね。沙夜ちゃんにクイズだよ。あっ、そうそう。これ沙夜ちゃんから送られた来たんだ」


そう言いながら海織がスマホの画面をこちらに見せてきた。そこには――。


「これ――すごいね。フルーツたくさんのタルト?ケーキ?」

「凄く美味しそうなの食べてるよねー。多分撮影は……白塚君かな?」

「なんか周りに他の人もいそうな感じだね。テーブルのお皿とか見ると」

「あっ。そういえばサークルの人たちと行く?みたいな話してたからね」


♪♪


すると、新着のメッセージが海織のスマホに届いた。海織は見られて困るとかが無いらしく。普通に俺に見せながら新着のメッセージを開いた。


「また楓君とイチャイチャしてー。ってそこどこ?なんかお店の前?って楓君間抜けな顔してるー」

「だって、楓君」

「いや――急に撮られたので……ってなんで俺だけ恥ずかしい思いをしないといけないんでしょうか」


今すぐ削除依頼を……ですが斎宮さんの方にある画像はどうしましょうかね。


「まあまあ」

「……ここは海織も撮るべきかと」


と、まあ特に何も思いつかなかったのでそんなことを言ってみたのだが――。


「いいよ」


うん。この子にこういう作戦は全く効果なしです。海織は普通に自分のスマホを俺に渡して――先ほど買ったお土産の袋を顔のあたりに持って来て……早く撮ってよ。みたいな感じになっていたので俺は写真を撮る。って……写真写りがいいと言いますか……かわいく撮れました。


「おお、楓君上手ー」

「写真撮るのが下手じゃなくてよかったです」

「あっ、楓君も私の写真欲しい?それともさっきの自分の写真送ろうか?」

「自分のは絶対いらないし。むしろ削除依頼なんですけど」

「えー、って私の事は何も言わないということは……欲しいんだね。わかったわかった。送ってあげるから」


とか言いながら海織はスマホの操作をしていた。多分今撮った自分の写真を斎宮さんに送っているのだろうと。と思っていたら――。


♪♪


俺のスマホが鳴った。


「……」

「どうどう?」


と、お隣からはそんな声。確認してみると――。


「……えっと、ありがとう?」

「えー。はてなマーク?」

「いやいや、本当に来るとは」

「私の写真ならいっぱい送ってあげるよ?」


とかお隣で海織が言っているが……うん。現在俺と海織のメッセージのところに海織から写真が届いた。先ほどの写真だ。いや、普通にかわいい写真が普通に送られて来たという場面です。はい。


「あっ、削除しちゃだめだからね?」

「…………しませんよ」

「しないんだー。ニヤニヤー」

「どっちが良いんだか」

「ふふふっ」


まあ、むしろ間違って消さないように新たにファイル作っちゃおうとか思っていたのでちょっと反応が遅くなってしまった。


「そういえばさ。今楓君の返事に変な間があったよねー」

「違う違う」


うん。ちょっと海織に怪しまれてしまったが……その時にまた海織のスマホが鳴った。


♪♪—―♪♪


今度は2回連続でなった。


「あっ、来た来た」


と、海織は自分のスマホに視線を戻し……。


「あたり」


と、つぶやいていた。ちらっと覗いたら……。


「セントレアだー。そのキャラクターこの前見たから知ってるよ」


とメッセージが来ており。その後にスタンプが届いてした。


「あー。楓君が覗いてきた」

「……いや……うん。気になって」

「覗いた覗いたー」


うん。海織よ、その言葉だけ言うのはやめていただけますでしょうか?人は少なくなってきたとはいえ。先ほどから何人か人が前を歩いているんだから。


♪♪


俺がそんなことを思っているとまた海織のスマホが鳴り――。


♪♪


「うん?」


そのあとすぐに俺のスマホもなった。俺はスマホを確認してみると……斎宮さんからだった。


「デート中ごめんねー。海織ちゃん借りたみたいになっちゃって。もうすぐメッセージ終わらせるからー。夜はごゆっくりー!」


と、そんなメッセージだった。うん。なんか引っかかるというか……まあいいか。もう帰るだけだし。とか思いつつ「もう帰りますから」と返事をしておいた。


「よし楓君駅行こうか」

「うん。行こうか」


斎宮さんとのやり取りを終えて俺たちは次こそ名鉄の駅へと向かった。


が。まさかこの数分?10分くらいのやりとりがあったことにより。このあとあんなことになるとは……この時の俺たちはまだ知らなかった。

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