第224話 朴葉味噌 ~準備に時間がかかります~
現在の俺と海織は柊の部屋の前に居る。そしてインターホンを押したところである。
「はーい!」
中から聞こえてきたのは柊ではなく斎宮さんの元気な声だった。ここ……柊の家のはずなんだが……まあ海織の予想通りという事みたいです。
――ガチャ。
「やっほー。ごめんに急に」
「いいよいいよ。ねえ、楓君」
「あ、うん。で……どうしたの?」
「ちょっとねー。2人に協力してほしくて」
「うん?協力?」
「あっ、海織ちゃん先に言っておくけどー。楓くん貸し出しのクレーム、文句は柊にね」
「OKOKー」
OKなんだー。と心の中で思っていた俺。って海織さん?柊をいじめないようにね?まあ……俺が止めるということはないが。いや、だって海織がなんやかんやしてくれますと。俺の出動回数が減りますので。はい。楽になりますから。って、卒論はね。自分のやつをするだけで大変なんですよ。ホント。他の人のをヘルプとか――うん。大変なんですよ。
「お邪魔します」
「どうぞどうぞー。散らかっててごめんねー」
「えー、綺麗だよ?」
女の子2人がそんな会話をしながら中へと入っていく。俺もその後をついて中に入っていくと――。
ここの家の住人が何やら持ってこちらを見ていた。
「……柊は何故……ってそれ何?なんか茶色もの持って何で固まってるんだ?」
「あー、誰かと思ったら楓に、宮町さんも。ってなんで居るんだ?さっき別れたよな?ちなみにこれは味噌だ」
「あー、だから沙夜ちゃんからのメッセージに味噌ね」
「なるほど納得」
俺と海織は斎宮さんからの味噌。という2文字のメッセージの謎が解けた。まあ何故味噌を持っているのかという謎は解けてないが――。
「で、楓よ。なんで居るんだ?」
「斎宮さんからお呼び出し?って感じかな?家に着く直前にUターンしてきた」
「沙夜。いつの間に呼んだ?」
と、斎宮さんの方を見つつ。まだ味噌を持ったまま聞く柊。ってなんで味噌を持っているんだよ。そっちの方が気になる。うん。
「あー、さっき再配達を依頼する前にパパっとね。海織ちゃんにメッセージ送っといたー」
「早業かよ。あの一瞬で、ってにしても。それからすぐ。よくと楓と宮町さん戻って来れたな」
「ちょうどいい時間の電車があったから。家見えていたのに家に帰らず来ることになったよ」
「……配達の人も早かったが。2人も来るの早いわー」
柊と話しながら柊の持っている味噌をちょっと見てみると……って柊が持っている味噌は1つではなく――数袋あった。
そしてまわりを見るとダンボールが部屋の真ん中にあってなんかそのまわりには周りにコンロ?葉っぱ?固形燃料?とまあ、何をしているんだ?ってこれなんのセット?とか思いつつ俺は柊の部屋を見ていた。
「ってことで。楓くん楓くん」
「うん?」
すると斎宮さんが隣に移動してきて俺に話しかけてきた。
「これ美味しく食べたいんだー。どうにかなる?」
「えっ?」
いきなりなんという無茶ぶり。
まずこれは何なんでしょうか……はい。味噌ということしかわからないんだが――とりあえずその味噌の袋を見せてもらうと……なんか入っている?うん。なんか味噌以外に物が入っているような……まあそこにコンロ?みたいなのと固形燃料があるから。焼く?ってのはわかるんだが……まあ何かわからないと進まないのでね。
ということでそれから少し説明を受けた俺と海織だった。
「……ってこと」
「朴葉味噌か。はじめて聞いたかも」
「ってことは……楓にまかせられないじゃん」
「なんでもできるとかじゃないので……」
「はいはーい」
俺と柊が話していると俺の横に居た海織が手をあげていた。はい。何でしょうか海織さん。
「こんなんだって、楓君」
海織はそう言いながら自分のスマホの画面を俺に見せてきた……うん。あれか。こうやって食べろ的なものか。味噌に肉?もか……とちょっとお勉強中。地域によっていろいろな食べ物がありますね。って知らないことばかりだ。
「つまり――これ。この味噌の山を減らしたいと」
「そういうこと!」
と、柊が言っていたが――この10人分?くらいはあるであろう味噌を一気に減らすのは……難しい気がする。
「とりあえず……半分くらい使えればいい?」
「OK。じゃ。まかせた楓」
「えー。っかなんか他に材料この家にあるわけ?海織が見せてくれたのを参考にすると……野菜とかあった方がいいみたいだけど」
「ないな」
「、、、。ちなみに米が炊いてあるとかは、、、」
「炊いてない」
「今すぐ炊きましょう」
「じゃ、お米は私が炊くよ」
海織が立ち上がった。
「白塚君お米ある?」
「あっ、えっと――こっち」
海織と柊がお米をやっている間に俺は冷蔵庫を勝手に確認—―うん。何もないじゃん。びっくりするくらい綺麗な冷蔵庫だった。
「柊。なんかないの?」
「あいにくない。今はきれいさっぱり何もない」
「……ここにないとすると……一番近いのは……斎宮さんの家は何かある野菜とか?」
「待ってました!楓くん!」
「—―うん?」
何だろう。斎宮さんは声をかけてほしかったのだろうか。そういえば少しの間だが静かだった気がする。まあとりあえず斎宮さんは俺が聞くとすぐに反応してくれた。
「海織ちゃん。楓くん借りていい?」
「いいよー」
「いやいや、なんで海織の許可制?」
「えっ、楓くんは海織ちゃんの所有物でしょ?」
「人ですらなくなった……」
俺。いつの間にか物?になった様子です。なんてことか……。
「とりあえず。楓くん買い物行こう」
「—―えっ?」
「実はね。うちも何もなくて、今日柊の家でご飯食べようとしてたんだよー。そしたらこうなってね。だから。柊のお金で買い物行こう!」
「はっ?」
うん。海織に米を渡していた柊が反応した。
「ほらほら楓くん荷物運び手伝ってー」
「ちょちょちょ。何故に俺の金?沙夜?」
「当たり前じゃん」
「いやいやいや何故!?」
「海織ちゃん柊ちょっとまかせるねー」
「大丈夫!」
「「えー?」」
何でしょうか。ここの女の子2人は意気投合というか。うん。俺斎宮さんに背中を押されてお買い物に行くみたいです。はい。男子2人は同じ反応をしてそれぞれ女の子に……早く動くように急かされました。
はい。
なんか不思議?なコンビでの活動開始となりました。
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