第215話 ナローゲージ2 ~762mmの鉄道~

海織の思いつきで急遽外出となった本日。思いつきばかりで動いている気がするのだが……うん。まあいいか。


とりあえず無事に準備も出来て、現在は伊勢川島駅へと2人で歩いているところです。


「秋だね」

「急にどうしたの?海織」

「うん?涼しくなってきたから楓君にくっつきやすいなーって」


とか言いながらくっついてこようとしたお方はそっと止める。


「むー」

「……歩きにくいのと。歩いている時に海織が変なテンションになるとケガをするので大人しく前を向いて歩いてください」

「楓君はよく昔の事言ってくるけどー。怪我したのは1回だけだよ?」

「でも海織さ。前を見てないからかよく躓いてるよね?」

「そ、そんなことないよ?」

「……ほらほら前見て歩く」

「楓君が過去でいじめてくる」

「いやいや、いじめてません。気を付けてと言っているだけなんだけど……」

「じゃ、私がこけないように楓君の腕に捕まっていても問題ないよねー!」


と、結局人の腕をさっと掴んできた海織……うん。早業である。


「—―歩きにくくない?」

「問題なし!さあさあ行くよー」


今日も海織さんは楽しそうです。はい。片側の腕だけグイグイと引っ張られている感じです。って、時間的にはちょっと急がないと電車が来るか。うん。少し急ぎましょう。


ということで海織に引っ張られつつ。ちょっと最後は急ぎ足で伊勢川島駅に到着。

ホームに着くのと同時くらいに近鉄四日市行きの普通電車が駅へと入って来た。待ち時間なしとか言うやつですね。


「楓君前の方が空いてるから前に行こう」

「了解」


先頭車両に乗り込んだ俺と海織。車内は数人のお客さんだけだった。誰も座っていなかったロングシートの座席に座り……って海織さん?近くない?


「海織。なんでピッタリくっつく必要があるのかな?今結構空いてるよ?」

「問題ない問題ない」

「……」


――らしいです。いや普段も海織は結構ぴったりと言いますか……近くには居るのだが。今日は何故か密着状態。そういう日なんでしょうかね?


……ちょっと前に座っているおじさんの視線がチラチラ気になりますが……海織は気にしていない様子ですね。うん。


11時16分。伊勢川島を出発した電車は定刻通りに走り……11時25分。近鉄四日市駅に到着。


「着いたー」

「うん。着いたね」

「じゃ、普段行かない方へレッツゴー」


電車から降りて海織が歩き出したのだが――。


「海織、海織」

「うん?」

「改札逆。あすなろう鉄道の乗り場はこっち」

「あっ、ホントだー、てへへー」


はい。ちょっといきなり海織さんが逆方向に歩いて行くということがありましたが。無事に正しい方向に歩き出しました。普段行かないからね。仕方ないか。


改札を抜けて……あっ、鉄道会社が違うので改札を一度出ます。

場所によっては同じホームとかで乗り換えが出来たりしますが。このあたりだと……近鉄富田駅とかかな?三岐鉄道と近鉄名古屋線が同じホームを使っているかな。って余計な事ですね。はい。


そして――トコトコと歩く。しばらく歩く。ちょっと離れてますのでね。しばらく歩き……はい、そして四日市あすなろう鉄道の乗り場に到着しました。前はここで……終わったんだよな。

何故かここで藤井寺先生に捕まって……ってそういえばなんで俺は俺は連れて行かれたのだろうか――うん。普通。ここで会う。挨拶する。さようなら。とかになるような……うん。まあならなかったのだから仕方ないか。

今日は……大丈夫そう。うん。藤井寺先生の姿はなしっと。


っか俺が余計なことを考えているとすでに海織が自動券売機で切符買っていました。行動が早いです。はい。


「レトロっていうのかな?こっちはこっちでいい感じの駅だよね。私この感じ。終点の駅で改札から真っすぐホームと電車が見えるこの感じ好きかなー」

「だね。近鉄の駅から来ると小さい感じはするけど。これはこれでいい感じだよね。個人的には昔走っていた方の車両にも乗りたかったけど。今のあすなろう鉄道になってから新しくなった車両も気になっていたからちょうどいいかな」

「じゃ行こう!」

「って、海織さん。切符を買ってくれたのはありがとうなんだけど……どちらへ?」

「えっ、次の電車が、西日野駅行きだから。今日はそっちに行ってみない?数駅しかないからすぐに行って帰って来れるよね?」

「まあ、すぐだね。赤堀、日永、西日野だからね」


2人で路線図を見つつ話す。


四日市あすなろう鉄道はあすなろう四日市駅からだと。西日野駅行きと内部行きが走っている。距離は内部駅までの方が長い。と思う。正確な距離を調べたことが無いのでね。まあ駅数は内部の方が長いので……多分長いかと。


そして時刻表を見ると次の電車は11時43分発の西日野駅行き。ということで本日は西日野駅に行って帰って来るというお出かけみたいです。


はい。


「あっ、楓君電車入って来るみたいだよ」

「踏切鳴り出したね。行こうか」

「うん」


改札を抜けてホームへと移動。


「わー、本当に線路が狭いね」

「ここはナローゲージだからね」

「ネットで見てる時に書いてあったよ。でも実際に見てみるとホントすぐわかるね。狭いっていうのが」


海織はホームから線路を見ている。ここ四日市あすなろう鉄道はナローゲージの鉄道、ナローゲージとは線路幅が762mmしかない。近鉄を見てからだと……あっ近鉄は1435mmだったかな。とっても線路幅が狭く感じる。って、この話どこかでしたような……うん。なんとなく記憶にあるような……気のせいかな?


「さっき調べていたんだけど、この線路幅の鉄道ってもうほとんど残ってないんだよね。どこだっけ……えっと――書いてあったんだけどなー」

「ここ、四日市あすなろう鉄道と、後はこの前も通ったけど桑名駅から出ている三岐鉄道の北勢線と黒部峡谷鉄道?だったかな。立山黒部アルペンルートのところの」

「あー、そうだそうだトロッコ列車だよね。あと、雪の谷?大谷だったかな?私はあまり覚えてないけど昔そこは行ったみたいなんだよねー。写真があったから」

「そうなんだ。アルペンルートは……ないと思うな」

「そのうち行きたいねー。ってそう考えると近くに2つも珍しい線路幅の鉄道が走ってるんだよね?」

「うん。そうなるね。そして、電車到着だね」


海織と話していると3両編成だが。近鉄の車両と比べるとかなり小さな車両が駅へとゆっくり入って来た。


終点だからか。踏切の音が聞こえてから電車が来るまで少し時間があった。そのためなんやかんやと話していたが今電車が駅に到着した。


「可愛い電車だ。あっ、写真写真」


電車が駅に入ってくると海織はスマホを片手に先頭の方へと進んで行きました。


車両は新しい車両になったらしく綺麗で今風?の感じの車両なのだが。大きさがね。小さいです。なので先頭へと向かって行った海織はもう先頭車両のところに到着し。写真を撮っていました。


俺が海織の居るところに追いつくと海織は満足そうな顔をしていて……。


「じゃ楓君車内行こう!」

「だね。もう発車みたいだから」

「あとで楓君にも写真送っとくねー」


そんな話をしながら俺と海織は車内へと移動したのだった。

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