第177話 土曜日2 ~楠駅06時03分発~

斎宮さんにドライヤーを貸そうと洗面所に移動した俺。その時だった。


――ガチャ。


「……えっ?」


玄関の鍵が開く音がした。


……いやいや、ダメでしょ。室外から鍵が開くってどんな家なんだよ。ダメじゃん。どうなってるの俺の家!?とかいろいろ思っていたら――。


カチャ。


そっとドアが開く。俺は玄関まで約1メートルあるかないかのところに立っているので……。


「—―へっ?ひゃあ!」


……はじめに言っておこう。俺が悲鳴をあげた。とか言うことではないです。はい。不法侵入しようとした方が悲鳴をあげていました。

いやいや、俺が悲鳴……は、変かもしれないが。驚く方なのでは?とか思いつつ。不法侵入者に声をかけようとしたら。


「ちょ、ちょ、楓くん何事—―!?」


バタバタと部屋の方から斎宮さんがやってきて……。


「—―えっ?」

「……あれ?」

「—―—―修羅場にはしないようにね?2人とも」


うん。通常というかですね。はい。彼女が居ながら他の彼氏持ちの女の子を朝っぱらから部屋にあげている。それを彼女に見られたら……うん。大変なことが起こるかと……思います。多分。多分というのは俺はそんな経験今までにないので。そして見たことも無いから――って、今目の前で起きているか。うん。どうなるんだろう。これ……。


とりあえず……玄関で目が点。というか。今までに見たことない。表情をしている海織と斎宮さんに対して、修羅場みたいな雰囲気は作ってほしくないので……うん。次の言葉が大切ですね。はい……なんて言ったらいいんだろうか――。


「……」

「……」


海織と斎宮さんはお互いに見つめ合って――ではないか。相手と俺を交互に見ている。うん。何でしょうね。この間というか。とっても居心地が悪いので……。


「海織。とりあえず。まだ朝早いから、そのままそっとドアを閉めて室内へ」

「えっ……と。そ、そうだね」

「斎宮さん。ドライヤー洗面所のところ。そこ見えてると思うけど」

「あ、うん……ありがと」


よし、何とか女の子2人は揉めてない。何も起こってない。はい。


それから数分後。ちょっと朝っぱらから近所迷惑なことをしてしまった加茂家は……女の子2人と俺が座っています。何でしょうかね。この場は。これが朝の07時前の部屋とは……。


「で、海織。こっそり不法侵入しようとした理由は」

「えへへ……ちょっと……楓君にドッキリを……」


不法侵入をしようとした方は何故か照れつつ?計画をすぐに話してくれました。


「—―この土砂降りの日に――」

「だって……」


海織が話していると。斎宮さんが?の顔をというのだろうか。多分アニメとかで言うなら。頭の上に大量の?マークが浮かんでいる。みたいな状況かと。まあ不思議そうにしています。


「……うん?あれ?海織ちゃんが楓くんの事ををちゃんと楓くんって呼んでる……えっ――?あれ――――?」


?マークの次は!マークも浮かんでいそうな斎宮さん。頭がパニックになっているようです。はい。俺も……ちょっと混乱とまではいかないが。急に今までの海織が戻ってきたみたいな感じでちょっと戸惑いみたいなものはあるが。うん。気を抜くとね。修羅場が出来てしまうかもしれないので丁寧に……丁寧に……はい。


とか思っていたのだが。次に話し出したのは斎宮さんだった。


「どうして?海織ちゃんと楓くん喧嘩中だよね?いつ仲直りしたの?もしかして、昨日私がメッセージ入れた時にはすでに仲直り後でラブラブしてた?」

「斎宮さん。ちょっとお静かに。話がややこしくなりそうなので」

「いやいや、もうややこしいよ!?」

「で、海織」

「なに?」


うん。完全にいつも通りの海織ですね。じゃなくて。


「ドッキリとか言っていた気がするけど……もしかして、この1週間何かしてたり――しないよね?」

「楓くんにはバレちゃってる?やっぱりダメかー。あまり楓君焦ったりとかなかったからね。それにちょっと昨日とかもう私がボロ出ちゃったからねー」

「えっと……いまいちわかってないんだけど……ちょっと、この家から離れてみよう。みたいな事をしていたりとか?」

「うーん。ちょっとハズレ?」

「うん?うん?ちょっと、海織ちゃん?楓くん?どうなってるの私全くわけわからないんだけど?」

「大丈夫。斎宮さん。俺もほぼわかってない」

「えー。楓くんわかってなかったの?」


わかってなかったの?と言われましてもね。うん。違和感はありましたよ?でもね……何というかとか思いつつ――。


「海織が何か企んでいる……みたいな感じはちょっとしてたけど」

「なんだー。でももうバレちゃったから。言っちゃうとこの1週間。急にそっけない態度をとったら楓君がどんな反応するかなー、って」


何故かとっても笑顔でそんなことを言っている海織。ホントこの子は――とか思っていると。


「—―—―—―—―はい!?!?!?」


はい。ここで反応したのは俺ではありません。斎宮さんです。


そして……ここから。俺は一切口を挟むことはありませんでした。


女の子2人が種明かしというか。うん。斎宮さんが海織に質問。というか。取り調べみたいな形で……話が進んでいきまして――ちょっと海織が驚いているという感じでした。はい。


聞いていると。ここ最近いつも俺とともに生活していた海織。ふと「ちょっと楓君と距離をとってみたらどうなるんだろう?」みたいなことを思ったらしく。先週の土曜日から俺の家には来ないで連絡もなるべく無くした。とか。


そしてちょうどいい時に柊から。柊の入っているサークルの集まり。食事会に誘われたので今までなら断っていたけど「もし今の状態。距離をとっている状態の時に、食事会とかに行ったら。楓君はどんな反応するんだろう?」みたいなことをですね。追加で海織は考えていたらしく。って、この子はホント何をしているのでしょうかね。


でも海織曰く。思った以上に俺が普通過ぎて……なんかすみません。はい。


いつ種明かししようとかの予定がちょっと狂ったらしく。そして――うん。何か聞いていて俺が恥ずかしくなってきたのだが……こんな感じに先ほど海織が言っていた。


「楓君とちゃんと話せなくて……何か寂しくなってきちゃって……まあちょっと私が我慢できなくなって今日の朝。始発電車は……乗り遅れちゃったんだけど。楠駅06時03分?だったかな。その電車に乗って楓君に会いたいだけで来ちゃった。で、本当は寝ている楓君のお布団に忍び込んで楓君が起きたら。どうしたの?ってこの1週間が夢?みたいな感じに一瞬楓君が思ってくれたら面白いなー。って思って」


みたいなことを海織は楽しそうに言っていました。はい。そして、それを聞いた斎宮さんが……。


「私が心配していたのは何だったのよー!?!?」


再度大きなお声を出していましたので――はい。一度斎宮さんを制止しましたとさ。ホント朝からご近所様に謝らないとということになるので、さっと止めました。はい。


にしてもホント海織はなにをしているのでしょうか。全く。あれ?これは俺の教育—―不足?えっ――?

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