第176話 土曜日 ~菰野駅05時32分発~

昨日の事を説明……と言っても。そんなに長々と話すような出来事はなかった。柊と斎宮さんと別れた後の俺は――うん。ホント特に何事もなく。普通に家へと帰ってきた。


大学を出て湯の山温泉駅をえっと……そうだ15時32分発の普通電車に乗って伊勢川島駅へ。そして16時前くらいには家に帰ってきていた俺。


「—―静かだな」


確か家に帰ってきてからそんなことを思ったりしたっけか?いや、ここ何か月というのか。最近はずっとだったといいいますか。海織がここに一緒に居るという方がホント多くてですね。そこまで違和感はないのだが。やっぱり部屋が静かというか。うん。でももしかしたら、海織たちに会わなかったら。この静かな感じが家では当たり前だったのかもしれないとか。うん。1人でちょっといろいろ思っていたら。


「……ヤバイ。冷蔵庫の中に物がない」


ということに気が付きまして――怪しい天気だったが。まだ大丈夫だろうという事で。さっと買い物に行った俺でした。

はい。買い物に行って帰って来るまでは何とか天気は曇りのままでした。


そして買い物に行ったため。ちょっとリッチにというのか。久しぶりに刺身を食べた俺でしたと。普段はほとんど食べないからね。実家ならよく出てくるのだが……うん。たまに食べると美味しかったです。はい。って、この情報いらなかったか。


まあそれが昨日大学から帰ってきてからの出来事。その後は、何かダラダラと過ごしていました。そしたらだったかな?夜になって急に雷が鳴りだして――ザー。と滝のような土砂降りの雨になって停電はしないだろうと思ったが。特にすることもなかった俺なので、とっととシャワーを浴びてベッドに寝転び。ちょっとした山になっていた本。ライトノベルの山を減らすということをしていました。うん。この1週間1人だからか。山になっていた本が一気に減りました。


――ピンポン。


そしていつ寝たんだっけか。うーん。あまり記憶にはないのだが……。


ピンポン。


♪♪


あっ、でも部屋の電気はちゃんと消えているので俺は無意識にかもしれないが電気は消したみたいです。


ピンポン。


……にしても。夢の中でインターホンがずっと鳴っている。おかしいな。目の前は真っ暗というか。この夢は何だろうか――っか、今日は休みなのでゆっくり寝かせてほしい……うん?


ピンポン。


「—―あれ?夢じゃない?」


俺はスマホを探す……はい。スマホ発見。スマホの画面を見てみると……って、なんかメッセージも来ている。そういえば夢の中?でなんかメッセージの音を聞いたような……じゃなくて。確認確認。


メッセージを確認すると――。


「開けてー」


それだけだった。送り主は――斎宮さん。


――ピンポン。


「……どういう事でしょうか――ね?」


俺の頭の中にははてなマークがいくつか浮かんでいる。


先ほどから鳴っているインターホン。そしてメッセージ……まさかね。時間はまだ朝。早朝と言っていい気がするんだが……まだ06時前なんですが――。


とか思いつつ。とりあえずベッドからゆっくり降りる。前から言っているが。俺が使っているベッドは2段ベッドみたいな感じですからね。まあ下は物置みたいな感じで寝るスペースはないので、ただ上で寝ているというか。まあいいか。とりあえずここであわてて降りると落下。の危険性があります。はい。


――めっちゃ寝起きだが。鏡とか見ずにとりあえずインターホンを鳴らしている人物を確認しに行く。


「……はい?」

「あー。やっと起きた!楓くん……マジ冷たいです――」

「へっ?」


外から聞こえてきた声は斎宮さんだった。


俺は鍵を開けてドアを開けると……うん。外はまだ土砂降りの雨でした。そして、ドアの前には……ちょっと……いやそこそこ濡れている斎宮さんが立っていました。


「—―何事でしょうか?」

「楓くん。海織ちゃんに私も嫌われたー」

「はい!?」


ご近所さん朝からすみません。はい。すみません。多分—―誰も出てくることはなかったので大丈夫。それに雨の音も結構あったので……はい。とにかく朝からうるさくてすみません。


そんなこんなで早朝から斎宮さんが家にやってきた土曜日です。


はい。現在。


俺の部屋の中には斎宮さんが居る。そして先ほどから何があったのか聞いているのだが……。


「昨日あれから海織ちゃんに連絡したのに1度も出てくれないんだよー。私何しちゃったんだろう?」


斎宮さんの元気メーターがどん底です。誰か。斎宮さんに元気を――。


「えっと……昨日も海織帰りに急いでいたから、今週は何かあってバタバタしているのかと……例えば……親がチェックで家に来ているとか――?」

「今までなら、すぐに返事くれた海織ちゃんが?」

「えっと――うーん」


これは、どうしたらいいんでしょうかね。ちなみに朝っぱらから斎宮さんが俺のところに乗りこんできたのは。ただ、昨日からずっと海織に連絡して返事を待っていたのに返事がなく。気が付いたら朝になっていたと。で、海織のところに行ってみようと思ったらしいが……これで会えなかったら……とかいろいろ思ったら。何故か川島の駅で降りていたと。うん。なんかいろいろ言いたいが……何というのか。どうしてこうなった?


「あの――斎宮さん。ところで、濡れてるけど大丈夫?」

「あー。うん。思った以上に雨強くてね。風もあったし。駅から楓くんのところに歩いてきただけなんだけど。あっ、ごめん。部屋濡らしちゃった?」

「いや。それは問題ないんだけど。まあ、着替えは……使っていいのかわからないけど……海織のなら、山ほどと言いますか。たくさんあるので……」


はい。俺の家には海織ゾーンがまだ健在です。はい。普通に海織の着替えも数日分はあります。


「使っちゃっていいのかな?私嫌われているかもなのに……」

「嫌われていることは無いと思うんだけど……」


とか言いながらも斎宮さんやっぱり冷たかったのか。濡れているのが気持ち悪かったのか。普段俺は触ることが無い。海織ゾーンをその後ゴソゴソしていまして――。


「楓くん。シャワー貸してー」

「えっと――どうぞ」

「ありがとー」


そう言いながら風呂場に消えていった斎宮さん。手には普段海織が着ている服。というか。俺の部屋に置かれている服を手に持っていた。


斎宮さんがシャワーを浴びている間に俺も寝起きのままだったので着替えなどをした。


まだ斎宮さんが風呂場から出てくる雰囲気はなかったので……この変な待機時間というか。この時間をどうしたらいいんだ。とか思いつつ。俺はふと本棚から時刻表を取り出して湯の山線の時間を調べてみる。いや、斎宮さん一体何時の電車に乗ってきたんだろうと。思いましてね――はい。


――調べた結果。菰野駅05時32分の始発電車だったみたいです。早い。これは斎宮さん本当に気にしているんだな。とか思いつつ。海織に連絡……と思ったのだが。さすがにまだ土曜日の07時台。寝ているかもしれないと思い。スマホを手に取るまでの行動はしたが……結局そのまま机の上に戻した俺でした。


そしてそれから少しして斎宮さんが部屋に戻ってきた。


「ありがとー、いやー、すっきりしたー」

「それはよかったです。はい」


シャワーを浴びてきた斎宮さんは少し前まではよく見た服というか。海織がこの部屋でよく来ていた服を着ている。


「楓くんあとドライヤー貸して」

「あっ、うん。ちょっと待ってて向こうに置いてあるから」

「ありがとー」


俺はそう言いドライヤーを洗面所に取りに行くと――。


ガチャ。


俺の家の玄関の鍵の開く音がしたのだった。

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