第175話 金曜日2 ~湯の山温泉駅15時32分発~
バタバタしたお昼休み終了時から何とか講義には滑り込みセーフ。というか。先生も来るのが遅かったので案外余裕で講義室に到着していた俺たち4人。
そしていつも通り。毎週座っているあたりの席にいつもの感じで座った。
斜め前では――うん。何かめっちゃ言いたそうな斎宮さんがチラチラこちらを見ていますが……斎宮さんそんなにチラチラ後ろを見ているとさすがに広い講義室でも先生に注意されますよ?ほら先生が画面やら準備しだしたから講義始まりますよ斎宮さん。とか頭の中で思っていると。
「なあ楓?」
今度は俺に正面。前に座っていた柊がくるりと向きを変えてこちらに……。
「うん?」
「この講義の前回の資料って今あるか?」
「—―柊。もう講義始まる」
うん。斎宮さんには言わなかったが。柊に似たようなセリフを言うことになりました。
「—―くくっ」
ふと、お隣からなんか声が聞こえた気がしたので隣を見てみると……。
――うん。普通にノートを出して準備OK。という感じの……海織が居ますね。あれ?今声が聞こえた気がするが……気のせいかな?って、あれ?聞こえた気がした声って笑い声?うん?なんだろう――どこかで俺の心を読んでいた人が居た気がするのだが……って100%普通ならお隣の方なのだが……うん。普通に準備していますね。俺が見ていることも気が付いてないみたいだし。
なんかいろいろ気になることはあったが。そこで先生がマイクを持って、話し出し講義開始となったこともあり。90分間。静かになりました。
そして90分後—―。
「—―じゃ、今日はここまで。質問はメールで対応します」
そんな先生の声が部屋に響くと。スクリーンに映されていた映像が消える。そして部屋が明るくなる。うん。眠かった……昼ご飯の後にちょっと映像とか見るために部屋が暗くなっていると……なかなか大変です。
とりあえず講義が終わったので、帰るために片付けを開始すると――。
「じゃ、私先に行くね」
「あっ、海織ちゃんタイム!」
「ごめん沙夜ちゃん。ちょっと急いでるんだー。またねー」
「あー、逃げた!楓くん!海織ちゃん逃げた!」
斎宮さん、周りから視線が集まってますよ。って俺の名前を叫ばないで。お願い。
ちなみに海織は片付けを完了していたらしく。席から立ち上がるまでが早かった。そしてもうすでに講義室から出て行くところだった。
――まるで逃げるかのように。って言うのかな。早い行動でした。
……にしても気のせいかな。何か海織は俺より――斎宮さんを避けているような。お昼の時も斎宮さんが話そうとしたら、急に食事会の話をしていた気がするし……って気のせいか。うん。
とか思っていると。
――バン!
……うん。確か俺の前には柊が居たはずなんだけど……その柊は斎宮さんに押されたようで俺の視線には入らなくなっていて……俺の正面には斎宮さん。うん。机をバンするのはびっくりするのでやめていただけますと……とか思っていると。
「楓くん。なんで追いかけないの!?」
「……いや、どちらかと言いますと――」
先ほど浮かんだことを言おうとしたが……うん。何か2人の関係がこじれると……なので。何とか言いとどまり。
「—―大丈夫だよ。海織。今週はいろいろと忙しいんだよ」
「なんで楓くんはこんなに普通なの!?私がおかしいの?ねえ柊!柊!どこ?」
急に話を振られた柊—―って、よくよく見てみるとちゃんとまだ俺の正面には居た。まあ……うん。柊は斎宮さんに乗られていたが――まあつぶされていただけですね。お疲れ様です。
「ここに居るし……っか沙夜……重い」
「なっ!重くないし!」
――バシバシ。
うん。目の前で喧嘩—―は始まらないと思うが……始まらないよね?柊が斎宮さんに攻撃されています。まあ、うん。柊よ。重いは……言っちゃダメかと。はい。
ちょっと目の前でバシバシ。と音が聞こえている間に俺は片付けを済ませた。
それから部屋を後にした3人。
室内に居たときは気が付かなかったが。外は天気が悪くなってきていた。怪しい黒い雲。濃いグレー?の雲が迫ってきていた。これは早く帰らないと雨に降られるかもしれない。俺はそんなことを思いつつ柊と待機中。
待機中の理由は斎宮さんがお手洗いに行っているから。それだけです。
「ホント暴力反対暴力反対」
俺にお隣では柊がそんなことを言っていた。
「ははは……まあ、重いは言っちゃダメだったのかと」
「最近遠慮が無いというか。沙夜の奴よく食うからな。人に指示していろいろ作らしてくるし」
「いや、斎宮さん見た目全く変わってないかと……」
「いやいや、そんなことないって、あれは成長中だな。まあ普通になった?って感じか」
「—―えっと、あんまり言うとまた叩かれるかと」
うん、俺の予言をここで発動する。柊は100%この後斎宮さんにカバンで叩かれる。かと。99%の方がいいかな?いや、でもね……俺から見えている斎宮さんの表情は……うん。
「大丈夫。今は沙夜居ない」
余裕な感じで柊は話しているが……ね。うん。柊の後ろには――笑顔?うーん。なんていうんだろう。危ない笑顔をしている方が――あっ、カバンを握りなおした?いうのか。ちゃんと持って――。
――バッシン!
「—―痛ってー!?」
ですよね。うん。俺の予言は当たった。斎宮さんの持っていたカバンが柊の頭に命中。いい音がしました。
「どうせ太りましたよー。いいもんねー。海織ちゃんに言いつけるからー……って、そうじゃん楓くん!」
「えっと――はい?」
「ホントどうするの?完全に海織ちゃん楓くんを避けてるよね?もう1週間じゃない?どうするの?今日仲直りしないとまた休みだよ?ねえ、私も海織ちゃんに柊の事愚痴れないじゃん――!あれ?なんで私も海織ちゃんと話せてないんだっけ?」
斎宮さんもちょっと気が付いたというのか。うん。自分で気が付いてしまったというのか……うん。どう話したらいいかな。とか考えていると。カバンで叩かれた彼氏さんが……。
「大丈夫大丈夫。宮町さんは宮町さんだから。たとえ沙夜が重くなろうと」
「はっ?」
……うん。斎宮さんめっちゃ怖いですね。はい。これは後数発—―。
「あれ?楓?俺変な事言った?」
「—―言った」
「楓くん?」
「あ……俺は何も言ってない――ですよ?」
うん。斎宮さんの怒りゲージが溜まっていますね。ってなんでこんなことになっているのでしょうか……。
それから――うん。バタバタしつつ。柊が5回ほどカバンで叩かれて、蹴られてと……はい。いろいろ騒がしく湯の山温泉駅まで3人でやってきました。はい。大学から駅までずっと斎宮さんと柊がなんやかんやっているというか――斎宮さんが元気ですね。はい。柊ファイト。とか思っていたら。
「あー!楓。悪い。ちょっと明日の集まりの打ち合わせ忘れてた。楓ー。沙夜を頼んだ。じゃ」
柊が急に何を。方向転換。そして「あっ!柊も逃げた!」とか斎宮さんが言って「えっと……頼まれましても――」と俺がつぶやいている間に柊は――大学方面へ小走りで戻っていきました。皆さんホント忙しそうですね。
――駅に残された俺と斎宮さんはどうしたらいいのでしょうかね。
「逃げた!待てー!」
「……」
…………はい。
駅に1人となりました。斎宮さんも柊を追いかけていきました。あそこはあそこで仲良しですね。うんうん。じゃ――えっと――こっちは……そして誰も居なくなった。ではないが。1人になりました……特に予定もないのでとりあえず電車に乗って帰りましょうか。
ということで俺は1人で湯の山温泉駅15時32分発の近鉄四日市行きの普通電車に乗り込み、空いていた座席に座り発車時間を待つことにした。
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