第154話 男2人移動中 ~近鉄四日市駅10時56分発~

台風が過ぎ去り数日後。


俺はまた電車移動をしていた。ちょっと買い物。とかではない。お出かけ。はい。近場にではなくこれは遠出ですね。今回は柊とともに移動中。


この夏休みは忙しい。うん。今までの夏休みで一番忙しいというか。一番出かけている。予定の多い夏だと思う。


ちなみに今日も快晴。暑いです。ホント外出は危険とか。もっとテレビで言ってほしい。うん。


まあ危険とか言われたところで……特に予定は変わらないと思うが。


……えっと、柊とどこに向かっているかって?


俺と柊が向かっているのは斎宮さんの実家。はい。斎宮さんの実家です。なんでこうなったんだろうね。ホント最近はわからないことが多い。俺行く必要あるのかね?とか初め聞いたときは思っていたりした。って、ホントなんでこうなったのでしょうか……。


あれは突然だった。本日朝。うん。まだ数時間前の事と言えば数時間前の事か。結構早い時間だったと思う。


♪♪~


斎宮さんから俺のスマホに電話があった。これが始まり。


「……もしもし斎宮さん?」

「はーい。斎宮さんですよー!楓くん今大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫。そしておはよう」

「おはよー。じゃ今日うちの実家来れる?」

「はい!?」


目が覚めました。はい。


「海織ちゃんから「楓くん今日は予定なくて家に居るよ」って聞いているんだけど……」

「……うん。なんで海織が俺の予定まで把握しているのだろうか……」

「さすが海織ちゃんだよね。で、楓くん来れるでしょ?」

「……まあ、予定はないんだけど……」

「じゃあさ、柊と時間合わせて。よろしくー、待ってるよ!」

「……へ?」

「こっちの駅に着く時間だけ後で教えて!迎えに行くからね!あっ、徒歩だよ?」

「……はい」

「よろしくねー、楓くん!」


そんな感じの事が朝ありました。はい。


そこから俺は二度寝……ということはしないで。はい。無視するととかそんなことできないのでね。とりあえず会話の中で出てきたお方に電話をしてみると……。


「おー、楓。待ってた待ってた。沙夜から話聞いたか?」

「聞いた。で、なんで俺が呼ばれたのだろうか」

「なんか。沙夜のところのじいちゃんが楓を連れてこい。って、言ってるみたいだぞ?」

「……何故」

「俺じゃ相手にならん。みたいなこと言ってた。って、沙夜が言ってたな」

「でも、柊も行くんだよね?」

「うん。俺はばあちゃんに呼ばれた」

「……なんかわからんが……俺必要?」

「必要必要。でさ、今からだと何時の電車乗ったら行ける?」

「……なんでこんなに急なのか」

「いやー、沙夜からさ。って、前から今日俺が沙夜の実家に行く予定は決まっていたんだよ。あっ、沙夜はもう先に帰っているんだけどな。で、なんか沙夜が実家帰ったら。じいちゃんが、次はいつ楓を連れてきてくれるんだ?みたいなことを言ってたって沙夜から聞いたわけ。なら俺が行く時に楓も連れてくよ。って、返事しておいたんだけどさあ。俺が楓に伝えるの忘れて。沙夜に言ったら。ちょっと怒られてな。仕方ないから私が何とかするとか言って、今に至る。どうだ?わかったか?」

「—―つまり連絡を忘れた柊のミスと。って、すべてが急すぎる」

「まあまあ、とりあえず今09時前だが。どうする?」

「……ちょっとタイム」


ダイヤ検索をしたいが、スマホは柊と通話中で検索ができないし。パソコンは電源が切れているので、俺は本棚に移動する。そして時刻表を取り出して……調べる。


「えっと――柊が菰野駅10時07分に乗れるなら……」

「乗れる乗れる。俺は準備出来てるから」

「……まあ、それなら俺も準備はできるかと。で、四日市でちょっと時間があるが……特急?急行どっちで行くんだ?」

「あー、急いではないから急行でもいいかなー。特急は特急料金かかるからな。あっ、時間あるなら四日市でお土産買うわ」

「……なら、うん。そのあとの急行乗れば……時間はかかるが13時前には斎宮さんの実家の最寄り駅に着けるかと」

「それで大丈夫だろう。じゃ楓ー、頼んだ。あっ、沙夜に到着時間連絡しといてくれると助かる」

「……巻き込まれたか」


そんな感じで柊との電話終了。俺はその後出かける準備をささっとする。


なんでこんなに休みの日に忙しいのだろうか……。


俺はささっと準備を終わらして家を出発。そして伊勢川島駅で待機中に斎宮さんへ連絡をする。


「多分13時くらいに榛原駅着くと思います」


メッセージを入れておくと。すぐに斎宮さんから返事があった。


♪♪


「ありがとー。じゃ、待ってるねー。あっ、柊にはお詫びの品を買って来いって言っておいて」


そんなメッセージが来たが――うん。俺もお詫びの品をお貰っていいかな。と、思っているとまた 斎宮さんからメッセージが来た。


♪♪


「おばあちゃんから~。お昼ご飯準備しておく。だってー」


斎宮さんに返事をしてからスマホをしまう。電車が来るまではまだ後数分あった。


あっ、そうそう。ちなみに海織は海織で現在は実家に帰っている。はい。なのに何故、俺の今日の予定を海織は把握していたのかは……わかりません。はい。


そんなことを思っていると、遠くで踏切の音が聞こえだして、駅近くの踏切も鳴り出し電車が駅に入ってきた。


海織のように俺が待っている正面に柊が居る……ということはなかったので。俺は電車に乗ってから柊を探す――居ない――あっ、居た。先頭車両で手を振っている柊を発見。


「よっ、楓。急に悪いなー」

「ホント急すぎでびっくりなんだが」

「本当は。昨日聞くつもりだったんだけどな」

「……それが今日の朝じゃね」

「俺は無理かもとか思ったんだけど、沙夜が仕方ないなー。とか言いながら電話切って……何があったんだ?」

「いろいろあったんでしょうね。うん。女の子の世界で」

「なるほど、楓の行動は読まれているか」

「ははは……あっ、そう言えば斎宮さんから「お詫びの品を買ってくるように伝えて」だと」

「……買うもの増えたよ。この前買い物行った時にバンバン買ったからなー、結構財布の中身少ないんだが……」

「まあ自分の原因かと」


男2人でそんな話をしている間も電車は近鉄四日市駅に向けて進む。後ろの車両は少し混みだしていたが。先頭車両は近鉄四日市駅に着くまで空いていて平和だった。


近鉄四日市駅には――10時25分に到着。


それから、柊がお土産を探していたので……特急には間に合わず。まあ、乗れたら乗るってレベルだったが。なので、家で時刻表を見ていた際に覚えておいた近鉄四日市駅10時56分発の松阪行きの急行に乗ることになった。1つ前の特急ならもう少し早く着いたかと思うが。お隣さんが買い物をしていたからね。


「で、楓。ここからは?」

「伊勢中川まではこのまま乗って、伊勢中川で乗り換えて榛原へ」

「了解。で、楓へのお詫びの品は、缶コーヒーでいいか?」

「安っ」


はい。そんな感じで近鉄四日市駅を出発した2人でした。にしても呼び出しのお詫びの品が安すぎないかな?これが普通なのだろうか――。

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